地道に続けてきた英語の勉強が、キャリアを大きく動かした


―アクチュアリーを目指したきっかけを教えてください。

就職活動中に先輩社員訪問をするなかで、アクチュアリーという職種を初めて知りました。その当時、数学科を卒業した先輩の多くは生命保険会社に進んでおり、彼らの話を聞くうちに、生保への興味が強くなっていきました。保障期間の長い“生命保険”は、商品設計の際の死亡率分析など、理論的な計算が求められます。数学好きな私にとっては、非常に面白くやりがいのある仕事なのではないかと期待が膨らみましたね。

―大学卒業後、生命保険会社での仕事内容について教えてください。

卒業後、1977年に生命保険会社に入社し、主計部に配属されました。まさに商品プライシングをする部署で、死亡率や入院統計の調査など保険料の基礎となるデータの分析を行っていました。7年目に商品開発部門に異動し、新商品の商品デザインや市場ニーズ分析まで幅広く担当。料率計算以外に商品設計に携われたことは貴重な経験でしたね。
9年目には、新しい保険商品「変額保険」を初めて日本に導入するプロジェクトで、数理事項を検討する担当になるなど、保険業界の変革を前線で感じながら商品設計に従事。業界最初となる商品のリリースに立ちあえたときは、大きな達成感がありました。

―アクチュアリーの勉強はどのように進めていったのでしょうか。

試験勉強は入社してから始めました。今は大学生の頃から勉強していらっしゃる方もいますが、私が学生だった時代はのんびりしていて、採用試験の際に「勉強しておいた方がいいですか?」と聞いたら、面接官は「入社してからでいい」と即答。その言葉を信じて勉強しませんでした(笑)。
新入社員時代は、勤務時間内に日本アクチュアリー会が主催する講座を受講することができたので、勉強時間はしっかりとることができました。他の生保会社の仲間も受講しており、皆で切磋琢磨しながら勉強できたのは、モチベーション維持につながりましたね。仕事も定時16:40に終わっていたので、帰宅後に毎日2時間は勉強。そんな生活をコツコツと続け、1年目で3科目、2年目で2科目、3年目で1科目に合格し正会員に(※当時は、全6科目)。論述試験では、考えを整理する力が求められるので、多くの文献を読み漁り、自分で考えて書く練習を繰り返しました。
当時、「これからは英語が必要だ!」と社内の早朝語学クラスに参加し、アクチュアリーの勉強と英会話を並行して行っていました。我ながら、よく勉強していたと思います。

―その後、転職されて現職に至るまでのキャリアを教えてください。

まさに1年目から英語を勉強していたことが、その後のキャリアを大きく動かすことになりました。
長く勤めた生命保険会社を辞め、外資系の再保険会社に50歳過ぎに転職したのですが、そのきっかけは、国際アクチュアリー会の委員になったことでした。
委員を選出する立場だった方が偶然にも私の元上司だったのですが、「河野は若いころから英語ができた」ことも理由の一つに推薦して頂き、選出されることになったのです。「ソルベンシー規制をリスク感応型に変えていく」という提案を練る委員会に在籍し、海外で活躍するアクチュアリーや大学教授など専門家と英語で議論したり、会議に出席し意見を述べるなど、非常に刺激的な経験をさせていただきました。何より、リスク管理の先進的な考えに触れたことで、この領域により深くかかわりたいと思うようになりました。
50代で再保険会社に転職したのは、リスク管理に深く携われると思ったからです。生命再保険のリスク評価や、変額年金の再保険の引き受けを担当したのち、2007年に今の会社に転職。変額年金の販売を目的の一つに設立される保険会社だったので、同じ領域で準備会社から携われることを期待して入りました。実際に、マーケットの変動に合わせてリスクが変化する変額年金を、いかに信頼性の高い、商品寿命の長いものにしていくかを考え抜くのが面白いですね。

―これから、アクチュアリーを目指す方へ、メッセージをお願いします。

これからの時代、語学力の習得は必須。経験上からも、英語はぜひ勉強してください。
日本の生命保険業界は、これまで国内で日本人向けに商品を販売することを中心としてきました。でも、日本の少子高齢化、人口減少に伴い、今後それだけでは成長は見込めません。海外へ積極的に進出せざるを得ないグローバル化の時代になっているのです。
また、情報伝達に国の壁はなく、あらゆる研究結果や調査データはインターネット上で誰でもサーチできます。英語ができることで、入ってくる情報の豊富さに大きな差が生まれるでしょう。私もいまだに毎日ラジオ英会話を聞き、英語力を磨き続けています。世界のスタンダードに目を向けることが大切だと思います。

**プロフィール

河野年洋さん
ソニーライフ・エイゴン生命保険株式会社 保険計理人。
大学数学科を卒業後、生命保険会社に入社。再保険会社を経て、現職。
共著に『保険ERM戦略 リスク分散への挑戦』2015年5月(保険毎日新聞社)がある。

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