独立系FAS会社で働く魅力とは?


M&A業界の中でも「独立系FAS会社」で働く場合、どのような魅力があるのだろう。グローウィン・パートナーズ株式会社でクロスボーダー案件のM&Aを手掛ける春田弘輔(はるたこうすけ)さんに伺った。

 

■クロスボーダー案件における独立系FAS会社の強み

――最近のM&Aの傾向と今後の動向について教えてください。

現在、クロスボーダー案件、とくに東南アジア企業の買収に係るアドバイザリー業務をメインで担当しています。クロスボーダー案件に関しては、リーマンショック以降から日本の経済界全体として注力しつつあり、「クロスボーダーM&Aは大変」という抵抗感が薄まっているように感じています。

当社として手がける案件は国内の方が多いですが、クロスボーダーはこれから事業の一つの柱になるだろうと期待しています。

―独立系FAS会社で働こうと考えた経緯、独立系FAS会社ならではの仕事の進め方について教えてください。

大学在学中からM&Aをやりたいという思いは一貫していました。銀行の法人営業を経て、M&Aアドバイザリー企業等で経験を積んだのち、2017年11月に当社に転職。ちょうど当社がクロスボーダー案件領域の拡大を考え、業務フローを社内に根付かせていこうというフェーズにあり、それまでクロスボーダー案件を中心に手掛けてきたことから、自分が活躍できるフィールドがあるのではないかと考えました。また、会う人が皆オープンで雰囲気がよかったのも、決め手の一つとなりましたね。

入社して驚いたのは、任される業務の幅広さです。海外の提携先を発掘、提案するオリジネーションから、案件成就に向けてプロジェクト全体のアドバイスするエグゼキューションまでやらせてもらっており、シニアアソシエイトのポジションでここまでの範囲をできるのは業界的にも珍しいと思います。会社自体が拡大中であることから、今ある人的リソースを活用しようという背景はありますが、階層やサービスラインが細かく分かれていません。「あなたのタイトルではここまでしかできない」といった制約がなく、自分で仕事を見つける自由度があるのは面白いですね。

――自分で仕事を見つける自由度とは、具体的にどんな業務で感じますか?

現在ある国の案件を手がけていますが、これは、もともと社内の誰も接点がなかった、地元の大手金融機関からの紹介でした。個人的な伝手を駆使して海外とのネットワークを作った結果、掴んだ案件でした。

これは、独立系FAS会社だからこその自社のみで業務を完結できるという面白さの一例と言えます。例えば大手監査法人系FAS会社の場合、海外のメンバーファームがあり、案件実行もある程度共同で行う必要があるため、日本側での業務の自由度が制約されることが多いようです。

独立系FAS会社は、メンバーファームというネットワークがないからこそ、自分たちで海外に出ていき現地ファームとやりとりしたり、直接対象企業を開拓したりとアクションを起こせます。M&A戦略の立案支援に始まり、案件のないところから発掘し、現地で交渉を進め、最後の取引まで完了させて、さらにPMIのお手伝いをする可能性もある。独立系FAS会社だからこそ、M&Aを1から10まで学べるフィールドがあると感じています。

■独立系FAS会社で活躍する人材

――グローウィン・パートナーズのフィナンシャル・アドバイザリー部で活躍している方には、どんなバックグラウンドを持つ方が多いのですか?

メンバーのうち半分弱が大手監査法人出身の会計士です。監査からM&Aに業務を広げたいという方、とくに独立系FAS会社だからこそのキャリアの広がりを期待して入り、活躍している方が多いですね。

監査から業務を広げる際、スキルを生かすという点では財務デュー・ディリジェンス(買収監査、以下DD)を任されるのが一般的です。しかし当社は業務を縦割りにしておらず、会計士がDDから入り、そこで経験を積みながらバリュエーション(企業価値評価)のプロジェクトにジョインすることもあります。さらに、ファイナンシャル・アドバイザリー(FA)のプロジェクトに携わる機会もあり、「会計士=DD」という枠にとらわれない経験、スキルの広がりがあります。

また現在、特に活躍が期待される人材としては、銀行や証券等の金融機関出身者です。M&A、LBO、自己勘定投資といった関連業務の経験者に限らず、法人営業等のホールセールの部門でしっかりとご自身の業務に取り組んできた方であれば、M&Aの知識があまり無くともすでに持っているコーポレートファイナンスの知識や経験を基にすぐに追いつくことは可能ですし、武器として活用してもらえると思います。

性格的には、専門的な知識を持つプロのアドバイザーとしての振る舞いができつつ、営業のような柔軟なコミュニケーションスキルを持ったうえでクライアント・サクセスを第一に考えることができる、バランスの良い方が向いていると思いますね。

また一人の守備範囲が広いため、「自分のタイトルではこの領域さえやっていればいい」というスタンスでは通用しません。縦横無尽に任される範囲が広がっていくので、それを面白がれる人でなければ、しんどいと思います。

■独立系FAS会社で得られるキャリア価値、今後のキャリアパス

――独立系FAS会社で得られるキャリア価値とは何ですか?

当社では、一人ひとりが「プロの経営参謀になる」というミッションを掲げています。M&A、会計コンサルティング、ベンチャーキャピタルと、それぞれの部門の切り口で経営課題に対してソリューションを提供します。例えば、経営者の方と話をしていて「最近、人事制度の運用がうまくいっていなくて…」と悩みを吐露されたとします。そのとき私自身も人事に関して一通り話せた上で、その領域の専門家を連れてきて一緒に課題に向き合うことができれば理想的。自分が貢献できる機会がどこにあるのかを常に探り、経営者のあらゆる課題に対して何でも対応できるという人材、会社を目指しているのです。これができるのは、一人に任される業務範囲が広い独立系FAS会社ならではだと思います。

――先々にはどんなキャリアパスが考えられますか?

業界の傾向としては、同業他社への転職、ファンドへの転職、事業会社の経営企画やベンチャー企業のCFOになる…といったパターンが考えられます。

ただ、当社はある種のベンチャー企業であり、縦横無尽に業務範囲が広がるため、事業創出の機会も見込まれ、自分でチャンスを作っても良い。M&Aに限って言えば今後事業を拡大させ、1,000億円規模のM&A案件を常に手がけられることを現在の目標にしています。この過程も考えると、ここで経験できる範囲は非常に広い。「よくあるM&A経験者のキャリア」を積むためだけに外に出るメリットはないと思っています。

――M&Aを目指す方へのメッセージをお願いします。

企業のあらゆる点に目が行き届かないとできないのがM&Aです。求められる知識や経験、対応すべき業務範囲が広く、あらゆる業界、企業を担当しますが、二度と同じ仕事はありません。会社の気質やかかわる時期によって状況はまったく異なるため、常に新たな知識をアップデートしていく必要があるのです。例えば、「年金制度について知らなかったけれど、この案件を通じて勉強したので、もう年金の統合については語れる」というように、自分の課題を一つひとつクリアしていく面白さと難しさがあるでしょう。業界や企業に好奇心を持って接し、知識を積み上げていくことを楽しめるかが、M&Aをやっていく上で大切な要素だと思います。

<プロフィール>
春田弘輔(はるたこうすけ)さん

グローウィン・パートナーズ株式会社 フィナンシャル・アドバイザリー部 シニアアソシエイト。銀行の法人営業を経験したのち、M&Aアドバイザリー企業等を経て、2017年11月より現職。

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