仕事だけでなく自分の時間も大事にしつつ、メリハリある働き方をしたい


「きっかけは、子どもが産まれたことと、体調を崩してしまったことでした。監査の仕事は好きでしたが、働き方を見つめなおすべきではと考えました」。恩田真一郎さんが転職を考えたのは、33歳のときでした。

公認会計士試験に合格した後、新日本有限責任監査法人に入社。約7年、主に監査業務に従事した後、ジャパン・ビジネス・アシュアランス株式会社に転職しました。現在は、IFRSコンバージョンを中心に、さまざまな会計業務を担当しています。

「お客様の悩みに向き合えて、自分の業務が直接的な解決策になるのがうれしい」と話す恩田さん。転職活動中はどんな不安や悩みを抱えていたのでしょうか。現在の業務内容、やりがいについてもお聞きしました。

――現在までの簡単なご経歴を教えてください。

公認会計士を目指しはじめたのは、大学卒業後です。2008年に会計士試験に合格。同じ年に新日本有限責任監査法人に入社して、主に一般事業会社、不動産ファンド、J-REITなどの監査の仕事に従事していました。2015年にジャパン・ビジネス・アシュアランス株式会社に転職しました。

――大手監査法人からの転職を考えたのはいつですか?

そもそも、働き方を変えるべきなのではと考えるようになったのは、2013年のことでした。きっかけは2つ。まず子どもが産まれ、仕事以外の時間もより大切にしたいと思うようになったこと。2つめは、体調を崩し、仕事にも私生活にも支障が出ていたことです。33歳という無理の利かない年齢になり、このままがむしゃらに働き続けるには限りがあるとも思い始めていました。

一方で、監査の世界でもう少しがんばりたいという気持ちもありました。特に2013年は上場会社の主査を任され、新しいポジションで仕事に取り組むチャンスもありました。

そして2014年、1年間の監査スケジュールを終えたころでしょうか。それまでは目の前の仕事に取り組むので精いっぱいでしたが、シニアスタッフ4年目で、マネージャー昇格試験を受けるかどうかのタイミングが現実的に見えてきて。結果、監査法人の外の世界で頑張ってみたいと、2014年末に本格的に転職活動を始めました。

――転職活動中は、どんなことを考えていましたか? 不安や悩みはありましたか?

初めての転職でしたし、不安は尽きませんでした。家族がいて転職に失敗するわけにはいかないと考えると、余計に慎重になりました。悩みは大きく3つありました。

1点目は、転職市場における自分に対する客観的な評価がわからなかったこと。転職先には事業会社やコンサルティングファームも視野に入れていましたが、監査法人での経験がどれだけ通用するのか見えなかった。

また、漠然と「監査法人ではできない仕事がしたい」と考えていたものの、監査法人以外の場所を知らないので、自分にどんな適性があるのかも客観的に判断できない状況でした。

2点目は、公認会計士業界の転職トレンドや、どんな転職先があり、そこでどんな仕事ができるのか、まったくわかっていなかったこと。求人情報はもちろん、インターネットや本でも調べたのですが、なかなか実像はつかみづらいものがありました。

3点目は、転職について悩みを打ち明けられる人が周囲にいなかったことです。これが一番の悩みでしたね。口外されたくないことなので同僚には相談できないし、そもそも監査法人の中にいる人から客観的な評価を下してもらうのは難しい。他の組織に知り合いもおらず、誰の助言も仰げない状況でした。

――では、現在のジャパン・ビジネス・アライアンス株式会社に入った決め手は?

私が転職の際に挙げていた条件は、2つありました。1つは、仕事を大事にしつつプライベートも確保して、メリハリある働き方ができること。2つ目は、クライアントの立場に立って仕事ができること。弊社はその条件に合っていて、面談の担当者と話しながら実際にどう働くかがイメージできました。

転職の際は、自分の弱みも隠さず話すことにしていました。性格的に、粘り強さ、丁寧さ、緻密さ、正確さがあるのではと考えていましたが、裏を返すとスピード感が足りないし、細かすぎるところもある。いろんなエピソードを盛って自分を大きく見せることもできたのかもしれませんが、自分のペースで働きたいと考える以上は、弱点も理解してもらったほうがいいと思っていました。過度な期待をされるのは、思い描く転職とは違うな、と。

――現在は、どんなお仕事をされているのですか?

基本的に、監査以外の会計業務は何でもやっています。決算期ごとのIFRSコンバージョンをはじめ、内部監査支援、バリュエーション、インフラファンドの投資管理規定の作成支援、財務デューデリジェンス、ベンチャー企業の資金調達支援、IFRSの新基準対応支援など、入社以降さまざまな業務に携わってきました。

――どんなときに自分が能力を発揮できていると感じますか?

例えば、監査法人時代の経験を生かし、クライアントと監査法人のあいだに立ったアドバイスができるときでしょうか。IFRSコンバージョンであれば、監査法人による監査を見据え、監査法人が気にする箇所に対して企業がどのようにケアするとスムーズかといった話ができます。

これは、監査法人時代に歯がゆさを感じていた点でもあります。監査法人の一員としてクライアントに対峙する以上、第三者的な立場を保持しなければなりません。主査として対応していた際、上司に話を通すまでもない相談を受けることが、たびたびありました。でも立場上、「この資料は参考になりますが、採用するかどうかは御社で決めてください」と、逃げ道を用意しつつアドバイスすることしかできなかった。もっとクライアント側に立って、その意見を聞きつつ、監査法人にも配慮したアドバイスをする立場なら、という気持ちを持っていました。

ちなみに、弊社は会計監査をしないことを宣言しています。そのため、系列会社に監査法人もないため、独立した立場で業務を進められます。アドバイザリー業務、コンサルティング業務を行っていても、監査法人系列の会社だと監査とバッティングするアドバイスはできない。その意味で、今の職場は本当にやりたいことのできる場所だなと感じます。

――反対にクリアするのが難しいと感じるのは?

日々の業務には、納期的にスピード感が求められる案件もありますし、新しい分野、会社として経験があまりない新規の案件もあります。業務をどこまで追求するか落としどころを探したり、経験がなければ知識をつけるところから成果を挙げなくてはならなかったり、それぞれに異なる難しさがありますね。

――仕事のやりがいについて、前職と比較して教えていただけますか?

公認会計士の仕事は、専門知識を使って誰かの役に立てるのがいいところだと思っています。前職でも、会計の正しい在り方を指導するという仕事自体は意義深いと感じていましたし、特にクライアントと友好に関係を保ちつつ業務を進められたときはやりがいがありました。

今は、よりクライアントの立場に立って仕事ができているという意味で、以前よりも大きなやりがいを感じています。クライアントの悩みに真正面から向かい合い、自分の業務によって解決しているという実感があります。

また、通常業務のほかに営業もしているのですが、お悩みをお聞きして弊社の業務を提案した結果、問題解決に結びついたときは、この仕事をしていてよかったなと感じますね。自分が作業をしていなくても、営業という形でお客様に貢献できたという手ごたえがあります。

――大手など他にはない現職ならではの魅力は?

先述の通りですが、監査にとらわれず業務に携われる点と、自分の時間も大切にしたメリハリある働き方ができる点ですね。会計士という職業でありながら、こういう働き方ができる環境はなかなかないと思います。周囲に子育て世代が多いですし、上司や同僚に理解があり、働きやすいなと感じています

――転職を検討している会計士へアドバイスをお願いします。

特に初めて転職を考えている人は、不安が多いはず。まずは、自分がどんな働き方をしたいのか、どんな業務に向いていて、どんな業務に向いていないのか、じっくり考えてみてください。そのうえで、監査法人に残るもよし、監査法人の外に出るのもよし。もし転職したいと判断したのならば、前向きに進むのがいいと思います。

責任感の強い人ほど、「自分が抜けたら迷惑がかかるのでは」と悩みますよね。実際に、すごく引き留められていたり、有給も消化せず退職日までずっと働いていたりする人も見てきました。それはそれで大事ではあるのですが、思い切って転職することでも監査法人に貢献できることはあると思うんですよ。

たとえば、別の道で活躍することは会計士業界全体で見れば、公認会計士の働き方の幅、可能性を広げるかもしれない。私のように監査というものに事業会社側からかかわることが、監査法人がより良い監査をする一助になるかもしれません。だから、自分が働きたいと思える場所で資格を生かしたほうがいいと思うんです。公認会計士は、監査法人で監査をするだけの資格ではないはずですから。

<プロフィール>
恩田真一郎さん
ジャパン・ビジネス・アシュアランス株式会社 シニアマネージャー・公認会計士。2004年に東北大学卒業後、2008年会計士試験に合格。同年、新日本有限責任監査法人に入社。2015年7月より現職。

あわせて読みたい ―関連記事―