ワーク・ライフ・バランスを実現し、成果型の給与体系の職場で働きたい


「中長期的な目線で仕事がしたい。そして、給与面でもきちんと評価されたい。こうした思いから、転職活動の際は、ワーク・ライフ・バランスの実現と成果型の給与体系を条件にしていました」と話すのは、佐藤順一郎さん。転職を考えたのは、38歳のときでした。

優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)に入社、2年後にグループ会社のTFPコンサルティンググループ株式会社(現・山田コンサルティンググループ株式会社)に転職、翌年、公認会計士試験に合格。4年間の勤務を経て、大手金融機関へ3年間出向。現在は、東京共同会計事務所に在籍しています。

「職場環境も業務内容も、今の仕事は天職」と語る佐藤さんは、どんな思いで転職活動を始めたのでしょうか。現在の業務内容、やりがいについてもお聞きしました。

――現在までの簡単なご経歴を教えてください。

大学卒業後、短答式試験の再受験免除制度を機に優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)に入社し、金商法監査及び会社法監査業務に従事しました。

2008年には、グループ会社であるTFPコンサルティンググループ株式会社(現・山田コンサルティンググループ株式会社)に転職し、翌年、公認会計士試験に合格。上場・非上場会社に対するM&Aアドバイザリー、企業価値評価、財務・税務デューデリジェンスなどに携わりました。2012年からは3年間、大手金融機関に出向。主に、非上場会社オーナーの相続・事業承継対策、組織再編に関するコンサルティングを行っていました。

そして2016年、現在の東京共同会計事務所に入社。2年が経ったところです。

――前職からの転職を考えたのはいつですか?

金融機関への出向があと半年で終わると決まったころに、転職について少しずつ考え始めました。その意思が固まったのは、出向から戻って数カ月経ったころです。

金融機関での業務は、ほとんどが未経験のものでした。しかし3年間いろいろなお客様に接し、また他の会計事務所からきた方々と切磋琢磨するなかで、自分のスキルが磨かれ、成長できたことを実感できました。また、ここで身に着けた知識と経験があれば、他社に行ってもやっていけるという自信もつきました。

会計・コンサルティング業界を離れ、金融機関という外の世界を見たことで、視野が広がったこともあります。契約まで数年を要することもある事業承継へと業務が変わり、「もっと中長期的な目線で仕事がしたい」と考えるようになっていました。

プライベートで、2人目の子どもが産まれるタイミングだったのも理由の一つ。妻は監査業務に従事し、多忙な日々が続いていたので、家事と育児をすべて任せるわけにはいきませんでした。何より、子どもとの時間を最優先に考えたいと思っていました。

――転職活動中は、どんなことを考えていましたか?

条件にしていたのは、2つ。1つ目は、ワーク・ライフ・バランスを実現する働き方ができること。前職では、身の丈以上のこと求められることもあり、もうあまり無理な働き方はしたくなかった。ときに家庭を優先できることも条件でした。

次に、給与体系が成果型で透明であること。前職でも給与面は悪くありませんでしたが、当時の給与額の決め方に疑問を感じることもあり、給与面でもしっかり評価されたいと考えていました。十分な給与をいただくことで、子どもに金銭的かつ精神的に余裕のある人生を送らせてあげたいと強く思っていました。

――では、現在の東京共同会計事務所に入った決め手は?

先に挙げた条件が満たされており、なおかつ代表である内山の人柄、考え方に惹かれたことです。

特に給与体系には驚きました。個人の売上に応じた給与額の計算方法が明文化されており、自分の成果が正確に給与に反映されます。

代表の内山は温厚で優しい人です。近くのカフェで、年に1~2回、直接話す機会を設けてもらえると聞いたときは、なんて従業員思いの人なんだと驚きました。残業時間や深夜勤務の日数も人事がカウントして管理者に報告する流れとなっていて、管理者がミーティング等で毎月確認し、過重労働があると業務を改善してくれます。

人事、総務、経理、システム、法務・リスクマネジメント、秘書などの間接部門がかなり充実していて、分業体制が整っているのも合理的でいいなと感じました。例えば、マネージャー以上になると、数人に一人秘書がつくため、私たちはより専門的な業務に集中することができます。内山が外部との協業に好意的で、チャレンジ精神を認めてくれる人なのも、魅力を感じた点でした。

――現在は、どんなお仕事をされているのですか?

金融機関出向時代と同様、非上場会社オーナーの相続・事業承継対策、組織再編に関するコンサルティング、および富裕層への相続対策業務を行っています。

――どんなときに自分が能力を発揮できていると感じますか?

今の業務は、すべて自分に向いていると思っています。特に、中小企業のオーナーの相談に乗ることは得意分野です。

オーナーとお付き合いをする際は、どうすれば相手に喜んでもらえるかを一番に考えています。そのためには、まず話題の糸口を探すこと、次に何をすれば役に立てるかを考えること。相手企業、そしてオーナーに興味を持ち、初めて伺う先のHPや社長のブログにも極力目を通し、応接室に飾ってある絵や置物、自社ビルのデザインにも目を配ります。

人の話を聞くことが得意です。オーナーと話していると自然と会話が弾み、オーナーの悩みを聞き出せるところに自分の能力を発揮できていると思います。

――反対にクリアするのが難しいと感じるのは?

相続や事業継承は、契約・実行まで数年かることも少なくありません。つまり、長きにわたって中小企業のオーナーとのお付き合いが続きます。

中小企業のオーナーは、それぞれにとても個性が強く、他人に流されない方が多い。そのため、お付き合いするうえでは、会計・税務の専門知識だけでなく、感情の機微を読み取る能力や幅広い知識が求められます。その企業の事業についてある程度の知識をつけているほか、ワインや絵画、クラシック、ゴルフなど趣味の話についていくことも必要。その点が大変な部分です。

――印象的な仕事のエピソードを教えてください。

2年越しで事業承継のご提案をさせていただいていた、ある企業の会長の話です。今後、事業の拡大にともなって株価も急激に上がるため、早期に社長へ自社株式を移動することを提案させていただいていましたが、なかなか話が進みませんでした。会長がお体を壊されたことから、急遽話が進み始め、初めて社長を交えてお話をさせていただくことになりました。

しかし翌日、社長からお電話が。「昨日ご提案いただいた件ですが、手続きはすべて顧問の先生にお願いすることにしました」と言われました。「これまで会長と2年間かけて事業承継のお話をしてきました。確かに株式の移動にかかわる手続きは他の方でもできるかもしれませんが、会長に株式を譲ることをご決断いただいたことや移動のタイミングの検討等に付加価値のあることなので、考え直してください」とお願いしました。
すると、その夕方に会長から、「この件はすべて佐藤さんに任せるから」と、訂正と継続して業務を依頼いただける旨のご連絡がありました。

オーナーって、こういう人たちが多いんです。熱くて人を大切にされていて、貸し借りに敏感で、価値のあるものには正当な対価を支払われる。私がビジネスのために会いに来ていることもちゃんとわかっているので、金銭を優先させて不義理をすることはしないんです。

――仕事のやりがいについて、前職と比較して教えていただけますか?

前職では大企業の役員の方などが主なお客さまでしたが、今のお客さまは企業のオーナー。業務はM&Aなどから相続・事業承継対策へと変化しました。お客さまとの距離が近くなり、業務がお客様の人生に根付いている分、喜んでいただけていることをより肌で感じることができます。それがやりがいですね。人って、人に喜んでもらうと幸福感を得る生き物だと思います。

――転職を検討している会計士へアドバイスをお願いします。

転職の際、私が譲れなかったのは、ワーク・ライフ・バランスの実現と成果主義の給与体系。それがはっきりしていたからこそ、今の職場に巡り合えたと思っています。

いざ転職を考えると、あれもこれもやりたいと思ってしまったり、条件をいくつも並べたくなったりするかもしれません。ただ、すべてを満たすことは難しい。あとで後悔しないためには、自分にとってプライオリティが高いものは何かを整理することも大切なのではないでしょうか。

<プロフィール>
佐藤順一郎さん
東京共同会計事務所 マネージャー、公認会計士・税理士。慶應義塾大学経済学部卒業後、2006年12月に優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)に入社。2008年、TFPコンサルティンググループ株式会社(現・山田コンサルティンググループ株式会社)に入社。翌年、公認会計士試験に合格。2012年より3年間大手金融機関に出向。2016年より現職。

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