業種を越えて築いてきた人間関係が、仕事の幅広さにつながっている


公認会計士事務所を立ち上げ代表を務めるほか、会計コンサルティング会社、株式会社E-FAS代表、企業の社外取締役・社外監査役を多くつとめるなど、幅広い顔を持つ江黒さん。独立に至った経緯や複数のキャリアを並行できている秘訣について話を聞きました。

-現在の仕事内容を教えてください。

2014年7月に独立し、江黒公認会計士事務所の代表として、企業のIPO支援やM&Aのアドバイザリーを中心にさまざまな業務を担当しています。2015年には、公認会計士仲間4人の共同経営企業として株式会社E-FASを設立。上場企業などからご相談を受ける際、個人事務所よりも「株式会社」の方が(契約上)依頼しやすいというニーズがあることや個人事務所の枠を超えた大きな仕事の受託に向け、その受け皿として立ち上げを決めました。共同経営の4人それぞれが個人事務所の代表を務めており、税務を得意とするメンバーや、私のようにIPO、M&A案件を強みとするメンバーなどそれぞれの得意領域があります。お互いに補完し合いながら案件を受けプロジェクトを推進するなど、事務所と会社の2つの組織をうまく使い分けています。
さらに、上場企業の社外監査役を1社、IPO準備中の企業の社外監査役を4社、社外取締役を1社、やらせていただいています。独立前に所属していた監査法人のお客様からのご依頼や、お客様のつながりからご依頼をいただくことが多いですね。


-監査法人からの独立を決めた理由は何でしたか?

そもそも、学生時代に公認会計士を目指した理由が、「将来独立して、自分の名前で仕事ができる職業だから」というものでした。監査法人時代もいつか独立して自分の事務所を持ちたいと思っていました。独立へ動き出せたのは、IPOやM&Aなど自分が得意とする分野での実績に自信が持てるようになったことと、お客様や周りの同僚、友人などから「独立するべきだ」と背中を押してもらえたことが大きいですね。ちょうど子どもができたこともあり「自分の名前で仕事をして、将来、子どもに胸を張って自分の仕事について語れるようになりたい」という気持ちが強くなっていました。
ただ、独立に向けてしっかり準備していたかといえば、そんなことは全然なく、「やってみてうまくいかなければ、また監査法人に戻ればいい」程度の気楽な気持ちで動き始めました。

-独立後、個人事務所と株式会社の同時運営、企業の社外役員を多くつとめるなど、順調に仕事ができている理由はなんだと思いますか?

人に恵まれているからに尽きます。監査法人時代から、さまざまなコミュニティに顔を出し、人のつながりを大切にするようにしてきました。自分自身でもM&Aに関心ある人やIPOに関心ある人たちで集まるコミュニティを10年ほど続けておりますし、やはり10年ほど続いている同世代の経営者の交流会もあります。コミュニティを大事にしているのは、ただ、そこにいる人たちの話が非常に面白く、刺激をもらえるから。「人脈を作ろう」「仕事に役立つだろう」という目的的な意図はありませんでした。あの人にあの人を紹介したら楽しそうだな、このメンバーで集まったら楽しそうだな、などいう気楽な気持ちで声をかけて集まっております。だからこそ、10年以上の関係が築けているのだと思います。
自分で作るコミュニティ以外にも、会に呼ばれれば、フットワーク軽くいろんな場所に顔を出してきました。人への好奇心が強くて、違う職種の人の話を聞きたい、新しい人に出会いたい、と動いているうちに、人のネットワークが積み重なっていって、今の自分があります。
お客様には「江黒さんには相談しやすい、話やすい」とよく言っていただきますが、若いころからいろんな職種のいろんなタイプの人と出会い、コミュニケーション力を鍛えられてきたことに理由があるかもしれません。

-さまざまな役割を持ちながら仕事をしている今、どんなときに面白さを感じますか?

自分の名前で仕事ができていることへの満足感が大きいです。「江黒崇史」という人間を評価して仕事をいただけるので、一つひとつのご依頼に誠心誠意お応えしたいという気持ちも強くなりましたし、仕事ができていることへの感謝も日々感じます。
以前は、独立して自分の力で生きている方とお会いすると、つねに羨ましさと、自分がそれをできていない引け目を感じていましたが、今はようやく自分の足で立てている気がします。「やりたいことをやっている」という清々しさが、心地いいですね。

**プロフィール**
江黒崇史さん

1999年早稲田大学商学部卒業。2001年に公認会計士二次試験合格。2001年10月から2004年まで大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。
またM&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。
2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。2015年に株式会社E-FAS設立。会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。

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