プロモーションリーダー兼骨格スタイルアドバイザー。全ブランドを横断的にPRする社内プロフェッショナルとして活躍


東京・武蔵野に呉服屋として誕生してから創業86年を迎える、きもの・ドレス・アパレル・ジュエリー・ファーレザーを扱う総合ファッションメーカー・三松。全ブランドのプロモーションを担当する豊岡さんは、いち社員でありながら、「骨格スタイルアドバイザー」としても活躍し、独自のポジションを築いています。どのようにキャリアを重ねてきたのか、話を聞きました。

―これまでのキャリアについて教えてください。

2003年の入社後、フォーマルドレスブランド『AIMER』の販売を担当し、約12年間、お客様のさまざまなニーズに向き合ってきました。ウェディングドレスやカラードレスなど、冠婚葬祭でのフォーマルウェア全般を扱うブランドだったので、お客様層も幅広く、ドレスを選ぶ基準も十人十色。お客様には、「(ドレスを着て)どんな自分でありたいか」「何を叶えたいか」を必ずヒアリングし、商品を選ぶ基準を理解した上で提案するように心がけていました。お客様一人ひとりの体型に合わせたお直しも多く手掛け、どこをどう直すとお客様がもっとも美しく、心地よく着られるのか、経験則を重ねていきました。
店長、エリア店長として、メンバー育成にも長く携わりました。売り上げが思うように伸びず悩んでいた時期には、スタッフ教育の一環として運用していた「プロセスシート」の仕組みを大きく転換。目標設定を数字に置くのではなく「自分の夢を実現できたら評価を上げる」と変えたのです。出てきたのは「ダイエットする」「恋人を作る」など、仕事とは関係ないものばかり(笑)。でも、“なりたい自分”になるために何が必要なのかを細かく共有し、月々の行動目標を立ててスタッフ同士でも応援し合ったところ、売り上げがぐんぐん伸びていったのです。実績につながったとともに、スタッフの「仕事を好きになる」サポートができた、貴重な経験でした。

―現在の仕事内容を教えてください。

お店を離れてから、婦人服ブランド『TIENS ecoute』のブランド長を経て、現在は全ブランドのプロモーションを手がけています。
ブランド長時代も、前例のない試みを多く企画させていただきました。週1回行われる店長会議では、外部講師を呼んで「ヘアメイク講座」「商品写真の撮り方講座」などを開催。当時、ブランド認知度を上げたい一心で、異業種交流会にも頻繁に顔を出していたので、社外にいろんな人脈ができていたのです。「この方のノウハウを店長たちに教えてあげたい!」と思ったら、すぐに社内に講座の提案をしていましたね。
キャリアのターニングポイントは、「骨格スタイルアドバイザー」との出会いにあります。ブランド長時代に「骨格診断」の存在を知り、お客様と接する上で必要なのはこの知識だとぴんときました。「あなたはこういう骨格だから、この服が似合います」と、似合う理由を論理的に説明できれば説得力が増し、お客様との信頼関係も築きやすくなるはず。そこで、社内に啓蒙するために自分が資格を取ろうと、当時の営業マネージャーと2級を取得。その後、スタッフ研修で広めたり、「骨格スタイル診断」というイベントブースを設けて、店舗が入るテナントビルでお客様を集めたりと実験的に活動を広げていきました。イベントでは、1日で60人近くのお客様がブースを訪れ、大反響。ここで手ごたえを感じたことが、今の仕事につながっています。
現在は、着物、ドレス、ジュエリー、洋服すべてのブランドのプロモーションを担当しています。具体的には、全国で行われるイベントや催事に足を運び、「骨格スタイルアドバイザー」としてお客様に似合う商品をご提案。着物やジュエリーは一切触れたことのないジャンルでしたが、「骨格スタイルアドバイザー」だからこそブランドを横断して専門的な知識を学ぶことができる。お客様と接するたびに発見があって非常に勉強になっています。

―社内にいながら、独立したプロフェショナルのような動き方をしていますね。独立という道ではなく「社内でやりたいことを実践する」ために、意識していることは何ですか?

一般的には独立して事業をやろうという選択肢もあったと思いますが、外部講師を呼んで講座を企画したり、骨格スタイルアドバイザーとしてイベントを実施したりと動いてきた経験を経て、「社内のリソースを使ってできないことはない」と思うようになりました。
社内でやっているからこそ、骨格診断をしたあとに「具体的に、当ブランドのどの服/ジュエリーが似合うのか」までを提案できます。骨格診断のノウハウを社内にどう還元し、売り上げに貢献できるかという視点は常に大切にしています。
今は、仕事としてアドバイザーができているのは社内に私しかいません。お客様にとって似合うものを理論的に教えてもらう機会は貴重で、いいサービスだと思っていますが、一人の発信力には限界があります。だからこそ、これからは、診断して似合うものを提案できるスタッフを一人でも多く増やしていきたい。一人の発信力には限界があるので、社内にノウハウをどう広めていくかがこれからの課題です。

―やりたいことを発信し行動する、豊岡さんの原動力は何ですか?

それ、よく聞かれるんです。「会社が好きなんだね」とか「商品愛が強いね」と感心されるのですが、あまり実感がありません(笑)。ただ、お客様に似合うものを提案して、お客様が笑顔になり、それが一人ずつ増えていったら、社会全体が明るくなるかもしれない。そう本気で思っているところがあります。お店で働いているメンバーが仕事を好きになれば、また笑顔が増えていくでしょう? アドバイザーの仕事がそのためのサポートになるのであれば、全国どこへでも足を運びます。これまで見てきたメンバーたちの成長や、似合うものに出合えたお客様が浮かべるうれしそうな表情が、私にエネルギーをくれています。
この数年で、ファッションはどんどんパーソナルなものになっています。いまや、「流行っているものを買う」時代は過ぎ去り、「自分に似合うものを買う」のがスタンダード。さらに、目的的に服を買う傾向が強く、「来週ホームパーティに呼ばれたから」など、明確な理由がなければ服を買わない人が増えています。だからこそ、人からどう見られているかが重要であり、自分に似合う服に出合いたいと思っている人が多いはず。「骨格スタイルアドバイザー」として、そのマッチングをたくさん生み出していきたいと思っています。

**プロフィール**
豊岡舞子さん

株式会社三松 ブランド支援室 プロモーションリーダー。骨格スタイルアドバイザー1級、メンタルケア心理士の資格を所有。2003年入社。フォーマルドレス『AIMER』にて店長、エリア店長を経験。婦人服『TIENS ecoute』ブランド長を経て、現職。

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