吉本興業の件を二次試験に使ってみると


連日賑わいをみせていた吉本興業に関するニュースですが、ようやく収束する気配をみせてきました。ただ、公正取引委員会からのジャニーズ事務所に対する『注意』など、芸能界とテレビ局の在り方など、昭和時代には当たり前とされてきた『慣行』が非常に揺れているように思えます。

一方、芸能事務所の主張を鑑みれば、お抱え弁護士による反論等が見受けられるものの、素人感覚からしても、『これはどうなの?』と思われるような論理展開がなされているのも事実です。

そこで、今回のコラムでは、アクチュアリー第2次試験対策の観点から、今回の『ゴタゴタ』を、特に、所見問題に活用する方法を幾つか紹介して参りましょう。

1.双方の意見を聞く
アクチュアリー試験の第2次試験を受験される方であれば、既にご覧になったかと存じますが、『アクチュアリージャーナル第66号(2008年)』に『第2次試験に向けた勉強を進める上での留意事項(平成20年7月30日)』という記事が掲載されております。
その中で『2 問題解決能力の向上に必要な取組み』というセクションがありますが、

“単に専門的知識を身に付けるだけでなく、(中略)②各論点について、アクチュアリーとしての専門的な考察を加えつつ、事実やメリット・デメリット、他への影響、留意点等の整理・探掘りを行う。”
 
というアドバイスがなされております。
 このように、メリデメをしっかりと記述するというのは、ある意味で当たり前なことでして、実際、メリットしかなければ直ちに実行すればよく、逆に、デメリットしかなければ検討の俎上にも上らないという結論になります。
 吉本興業の会見も、できれば、宮迫氏と岡本社長が同じ場所で会見すれば、何の問題もなかったようにも思えますが、敢えて、同時にしなかった『理由』が存在するのかもしれません。

2.第三者委員会
吉本興業に限らず、企業において何らかの不祥事が生じた場合、弁護士などから構成される『第三者委員会』が設立されることが多いようです。

中立公平な『第三者』の立場で、物事を冷静沈着に淡々と処理する能力が求められることになりますが、これは、アクチュアリーにとっても同じことが言えます。

第三者の目線。言い換えれば、様々な利害関係人の目線で、対立する意見に対してより良い着地点を求めるような姿勢は、アクチュアリー試験だけでなく、普段の業務にも役立ちます。

少し古い話になりますが、エクイタブル生命の破綻に関する『ペンローズ報告』という報告書がありますが、実に800ページを超える力作ですので、読解力を養う観点からも是非、一読されると良いでしょう。(植村氏の博士論文のテーマにも関係するようです。『平成金融危機における生命保険会社の破綻要因の研究』)

3.論点をずらさない
そもそもの論点は何かということを、しっかりと肝に命じて、答案を構成する必要があります。
吉本興業の件で言えば、元々の反社会的勢力との繋がりの有無、特に、ギャラを受け取っていたかどうかがが論点であったにも関わらず、いつの間にか、『芸人 vs 会社』という構図になってしまい、肝心の部分が闇の中になってしまったように思えます。
もっとも、そうなることを双方が望んでいれば、話は別ですが。

4.諾成契約 ← 消費者保護の観点から
消費者保護の観点から普通保険約款を始めとする『基礎書類』は認可対象ですが、何千万件という巨大な保険契約一つ一つに細かく対応するような約款を逐一準備していては、円滑な契約者手続きに支障をきたしてしまいます。
そこで、主務官庁が一般消費者を代表して、約款を審査する仕組みを設けているのです。
このように、契約の当事者が作成した約款(ルール)を、契約の相手方が、包括的に受け入れることによって成立する契約形態を、諾成契約と言うようですが、吉本興業と芸人との間の契約も、この諾成契約となります。
ただし、吉本興業の場合、書面ではなく口約束に近いものだったらしく、それを『諾成契約』と呼ぶこと自体がどうなの?という気はしますが。

いかがでしたか。

(ペンネーム:活用算方)

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