アクチュアリー採用された方々へ


4月を目前に控えて、新社会人になる方々は、期待と不安で胸がいっぱいの時期ですね。新型コロナウイルス感染症の“蔓延”で、まだまだ出口が不透明な中、社会人デビューにも多くの不確定要素が“蔓延”しているかもしれません。
そこで、今回のコラムでは、保険会社や信託銀行などでアクチュアリー採用された方々に向けて、入社後の心構え、仕事への取組み方、人間関係構築など、筆者の経験と反省を踏まえて、思いつくままに列挙してみましょう。

1.ホームページのチェック

入社後に、たいていの会社では、自分専用のノートパソコンが貸与されるものと思われます。その際、業務で頻繁に使うサイトを“お気に入り”に登録しておけば、情報収集はもちろん、業務時間の短縮にもつながるでしょう。
なお、生命保険会社のアクチュアリー採用であれば、最低限、以下のホームページを“お気に入り”に登録しておけばよいでしょう。
1)金融庁
2)日本アクチュアリー会
3)生命保険協会
4)生命保険文化センター
5)アクペディア

2.業界紙の購読

筆者が新入職員の頃、日経新聞に加えてもう一部、全国紙(例.朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞など)の購読を人事部長から推奨されました。
最近はインターネットなどで手軽に色々な新聞が読める環境なので、とてもありがたいですね。
なお、保険業界に特化した“業界紙”(例.保険毎日新聞、保険情報、新日本保険新聞、インシュアランス保険版など)もあり、会社で購読されていれば回覧できますが、自腹を切って“電子版を購読”する方法もありますので、在宅勤務でも情報収集には、日ごろから務めるように心がけましょう。

3.統計データに興味を持つ

例えば、生命保険会社の場合、様々な“公的データ”(例.患者調査、人口動態調査、社会医療診療行為別統計など)を用いて、業務遂行する場面(例.粗発生率、将来収支分析のシナリオ設定など)が多々あります。
特に、毎年、決まった時期に、“男女の平均寿命”、“年間自殺者数”などのニュースが報道されますので、厚生労働省などのホームページで元データをチェックするようにすれば、来年以降も、“あっ、この時期になったから、こういうデータが入手できるな”といった具合に、データ取得のための年間スケジュールが自然と頭に思い浮かぶようになれば一人前といえるでしょう。

また、生命保険協会などでは、業界全体の統計なども開示されていますので、商品開発部門やリスク管理部門に配属された場合、決算業務の知識がなかなか習得できないケースが多いため、財務諸表から主要な勘定科目(例.保険料等収入、資産運用収益、保険金等支払金、責任準備金繰入、事業費など)について、時系列で数字を並べてみるだけでも、会計・経理面の知識習得に役立つでしょう。

4.アクチュアリー試験勉強も忘れずに

条件を満たせば大学3回生からアクチュアリー試験が受験できるため、入社時点ですでに準会員や正会員!など、入社前からライバルに差をつけるアクチュアリー会員がいらっしゃるのも事実です。
一方、筆者を含めて、多くの方々は会社で仕事に従事しながら試験勉強を同時並行するパターンだと思いますので、いかにして勉強時間を確保して、“ムリ・ムラ・ムダ”なく、効率的に学習できるかが早期合格の秘訣と言えるでしょう。

幸い、アクチュアリー受験研究会やSNS上のネットワークや、有料にはなりますが、様々な専用講座も用意されていますので、社会人になってから勉強を始めても早期合格できるチャンスは大いに広がったように思えます。

5.勤務先に興味を持つ

以前読んだ漫画で、“自分は会社と恋愛がしたい”というセリフを採用面接で発した人物が印象的でした。
少なくとも、保険会社や信託銀行に入れたわけですから、その会社と何らかのご縁があったのでしょう。
毎年、7月末頃にホームページ等で開示される『ディスクロージャー資料(例.○○生命の現状など)』を夏季休暇などに熟読して、(良い意味で)上司や先輩を質問攻めにするのも、お互いの刺激にもなるため有意義だと思います。

特に、後述する、社外の人脈構築の際にも、“あなたの会社ではディスクロージャー資料に、こういうテーマが書かれていた。”という話題をふれば、お互いの距離が一気に近くなるかもしれません。

6.業界共通試験を大切に

金融機関で働く場合、様々な“業界共通試験”があり、例えば、生命保険会社であれば、一般課程試験からスタートして、生命保険講座や生命保険大学課程など、入社後数年間は、ほぼ毎月何らかの試験を受験している環境下にあるかもしれません。
最初のうちは知識が身につかないので、テキストなどを読むスピードが緩やかかもしれませんが、ある程度の知識がつけば、ざっと読んだだけで概要がつかめるようになりますし、もちろん、仕事にも応用できるはずです。

さらに、例えば、生命保険講座の科目のうち、『生命保険計理』というテキストを開けば、アクチュアリー第1次試験(基礎科目)のうち『生保数理』に直結する内容が見られますので、生命保険講座とアクチュアリー試験を同時に学習できるため、非常に効率的な勉強となるでしょう。

7.10年後の自分を強くイメージ

大昔、サラリーマン川柳的なフレーズで、“入社式、退職金が、もう話題”という面白いものが紹介されていました。
転職活動など、雇用の流動化は益々さかんになっているように思えますし、筆者も、転職活動の度に、“現職でこういう経験もしてみたかったなあ”と痛感することが幾多もありました。

社会人デビュー時から、将来の自分をイメージすることは容易なことではありませんが、それでも、インターネットや社内外の諸先輩方のお話を聞けば、自ずと、自分自身の“立ち位置”が浮かんでくるかもしれません。
その際は、是非、VRPパートナーズの大谷様へのコンタクトも忘れずにお願いします!

8.社外のネットワーク作り

筆者は幸い、入社2年目で、生命保険協会主催の『生命保険会計』の講座(注:アクチュアリー以外の総合職を含めた新人向け)に参加させていただく機会に恵まれました。
当時、某中堅生保の保険計理人が講師となり、“実務上の責任準備金(のこぎりの歯のようなグラフ)”や“平均予定利率(=逆ざや状況)”などの“裏話”をこっそりと教えていただけたことが、30年近く経過した今でも鮮明に記憶に残っています。

このような業界向け講座で、新人同士で名刺交換したり、懇親会を開催したり、今日でいうところの“リアルな付き合い”のおかげで社外人脈が構築できたことは、筆者にとって貴重な財産となっています。
もっとも、コロナ禍では“リアルな付き合い”がなかなか難しいかもしれませんが、それでも、SNSなどの上手に活用すれば、自宅に居ながらネットワークの構築も大いに期待できるかもしれませんね。

9.上司との接し方

恐らく、多くの会社では、入社時研修などで様々なビジネスマナーを習得する機会があると思いますが、研修後の配属先でも仕事をする上でのマナーやルールの細部までは、研修期間中に習得することは難しいかもしれません。

筆者の苦い経験ですが、配属間もない頃、上司から送られたメール(自分の歓迎会!)に対して、思わず、『了解しました!』と自信たっぷりに返信してしまいました。
その後、指導員(=3年くらい上の先輩)と共に、1時間程度、上司から“マナー指導”を受けてしまいましたが(泣)
この場合、『承知いたしました』と返信するのが正解だったようで、“アクチュアリーだから数学『だけ』できてもダメだ!”とキビシイお言葉をいただいたのですが、今になってみれば懐かしさと感謝の気持ちでいっぱいです。

いかがでしたか。新型コロナ禍の影響はまだまだ続いているため、対面で仕事をする機会になかなか恵まれないかもしれません。直接、上司の目が行き届かないからこそ、規則正しい生活に心がけて、上司を含めた先輩や同僚からの厚い信頼が得られるよう、気を引き締めた行動が求められる時代になった感じがあります。皆様の幸せな社会人生活を祈念いたします。

(ペンネーム:活用算方)

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