気になるニュース(2022年5月)


4月に引き続き5月に気になったニュースを幾つかピックアップしたいと思います。
なお、内容はすべて単なる個人的な見解であり、特定の人物や団体等を誹謗・中傷する意図は全くないことを、念のため申し添えます。

1.ウクライナ侵攻による損保支払い

日本の損害保険ビジネスは、台風などの自然災害が少なかったこともあり、好調な決算を示しているとの報道が最近ありましたが、世界規模でみた場合、最大4.5兆円という巨額の支払いが、ロシアによるウクライナ侵攻で発生する見通しのようです。
航空保険などの補償が膨らんでいるようですが、2001年9月11日の米国WTCビル事故と同様に、補償範囲をめぐる係争(米国WTCビルの場合、2つのビルに対して2件の事故か1件の事故かが争点)も生じている模様です。

なお、生命保険の場合、日本では「戦争その他の変乱」が通常、免責事項に該当しますので、ウクライナ侵攻のようなケースで生命保険金が支払われるかは微妙かもしれませんが、第二次世界大戦では、国が50%を再保険で引き受けたこともあり、同大戦による生命保険金の削減はなかったと聞いたことがあります。
新型コロナウイルス感染症による保険金・給付金支払いと同様に、先の見通せない、混とんとした時代が当面、続くかもしれませんね。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0249Y0S2A400C2000000/

2.コロナ関連の保険支払い

新型コロナウイルス感染症による保険金の支払いが3.7倍になった生命保険会社が出た模様です。
同社では、支払担当部署の事務処理が追いつかず、支払日数が長くなった時期も一瞬あった模様です。現在は、事務要員を3割増やして対応されているそうです。

なお、2010年に施行された保険法では、5営業日を超える保険金などの支払いに対しては「遅延利息」を支払うことが規定されておりますので、事務処理遅延でますます事務が複雑化する可能性があります。
“コロナ・ブーム”のため、「コロナ保険」が(コロナ以上に)流行したようにもみえますが、売り止めや値上げする会社も出ているため、2021年度決算発表では、どのような質疑応答がなされるのか大いに注目されますね。
https://www.asahi.com/articles/ASQ5F4TZ9Q4XULFA00P.html

3.証明書類のさらなる簡素化

金融庁から、『新型コロナウイルス感染症の宿泊療養者・自宅療養者のために発行する証明書類のさらなる簡素化について』と題する文書が発出されました。
具体的には、保険会社に対し、新型コロナウイルス感染症の宿泊療養者・自宅療養者が入院給付金等を請求する際、簡易な証明書様式に基づいて支払いを行う等、その事務手続きを簡略化するよう生命保険協会などに要請が行われた模様です。
なお、【総理御発言】として、

“民間の経済活動についても、紙や押印を前提とした業務慣行を改め、オンラインで完結することが原則となるよう、民事ルールも含め、国の制度面で見直すべき点がないか、全面的な点検を行ってください。”

という点は、新型コロナウイルス感染症以外を含めて、今後の、保険会社の支払事務に対する規範となるかもしれませんね。
https://www.fsa.go.jp/news/r3/hoken/20220427-2/20220427-2.html

4.パブリックコメント

「保険業法施行規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの結果等が公開されました。
本件は、「新型コロナウイルス感染症等の影響による社会経済情勢の変化に対応して金融の機能の強化及び安定の確保を図るための銀行法等の一部を改正する法律」の一部の施行に伴い、お客さまが行うクーリング・オフの申出について、電磁的記録により行うことが可能となることから、関係内閣府令等の規定の整備を行うもののようです。

なお、個人的には、パブリックコメント中、“4「書面」には「電磁的記録」が含まれないという理解で良いか。ご質問の趣旨が必ずしも明らかではありませんが、一般的にはご理解のとおりです。”という部分が気になりました。
というのも、書面同意が必要な場面で、メールなどにより電磁的記録では不十分であると解される余地があるように思えたためです。杞憂に終わることを期待します。
https://www.fsa.go.jp/news/r3/shouken/20220428/20220428.html

5.出社したいオフィス

新型コロナウイルス感染症の影響で、筆者も1年以上、在宅勤務が続いておりますが、ミーティングもオンラインとなり、社員同士のコミュニケーション不足が課題の1つになっています。
本社ビルのリニューアルにあわせて、あえて『出社したいオフィス』を再設計した会社も登場しているようで、「集中するときは1人用ブース、メンバーと打ち合わせるときはソファと使い分けることで生産性が上がった」との評価が得られた模様です。

最近、地下鉄などで空きスペースの有効活用の一環として、個室タイプの一人用オフィス環境が整備されつつありますが、電車の待ち時間などを有効活用するだけでなく、誰にも邪魔されない集中した環境下に身を置くことで、仕事の効率がさらに上昇する効果も期待できますね。
一方、グループで作業する必要がある場合には、ソファーなどで談笑しながらリラックスした雰囲気の方が、新たな発想が出てきやすい面もあるのでしょう。

いずれにせよ、各人に適した多様な働き方が拡大することを大いに期待したいですね。
https://www.sankei.com/article/20220516-E3ELBUKVXRLU3DHHPOUYJYHZMQ/

6.60歳以上で転勤

高齢者の知見は、例えば、“おばあちゃんの知恵袋”というフレーズで代表されるように、若者たちや後継者たちに受け継ぐべき重要な要素の1つだと思います。
日本昔話の「姥捨て山」でも、母親を捨てられなかった息子が母親を家に匿い、隣村から要求されるさまざまな問題を解決する知恵を母親から授かることで村を救い、お年寄りの知見の大切さに村の統治者が気付き、「姥捨て山」の仕組みが廃止されました。
60歳以上の総合職を対象に、全国転勤して各地で指導的な役割を担う新たな人事コースが導入された模様ですが、通常、定年年齢が近づくと、退職後の居住地を勤務先に申告しながら、余生を過ごすパターンが多かったように思えます。

一方、信用金庫などに代表されるように、若いうちから地域密着型のビジネスモデルを展開している業種もあり、コロナ禍であるからこそ、人と人とのつながりや絆を大事にする動きは、むしろ、SNSなどの台頭で益々強くなっているかもしれません。
少子高齢化による労働力人口の減少を補う手段として、高齢者雇用が1つの解決策になることを期待したいですね。
https://news.yahoo.co.jp/articles/41346759291fa9a425afc88611f6e17e15d2227e

7.胃がんの識別

がん(悪性新生物)対策は国民的課題の1つですが、何といっても、早期発見・早期治療が不可欠であることは異論なきものと思われます。
特に、早期発見という点では、血液や尿など、簡単に採取できる検体を利用した方策が考案されていて、今回の開発もその流れに沿った大いに期待できる技術です。

特定の波長の光を当てると発光する物質を利用して胃がんを光らせ、明確に識別する手法で、脳腫瘍やぼうこうがんで実用済だが、胃がんでは初とのことです。
発光ダイオード(LED)光が、医療の分野でも活躍していることは、まさに、科学技術が人の命を救う貴重な事例ですね。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60917590Z10C22A5CE0000/

8.絶版本が閲覧可能に

国立国会図書館が所蔵する絶版本約153万点が、2022年5月19日からネット経由で閲覧可能となった模様です。
具体的には、1968年までに収集した図書約55万点、古典資料約2万点、明治以降に発行された雑誌のうち約82万点などが含まれるとのことです。
サービス利用料は無料で、利用登録はネットでも済ませられるようですので、是非、利用したいですね。
個人的には、アクチュアリーや保険に関する古書を自由に閲覧できるといいなと思っています。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2205/19/news112.html
いかがでしたか。2022年5月は沖縄返還から50年の節目ですが、50年前の1972年は、アクチュアリーにとっても意義深く、具体的には、無配当保険の建議書が出された年です。今でこそ無配当保険が主流になりつつありますが、今一度、当時の議論を振り返る時期に差し掛かっているのかもしれません。また、最近、芸能界での不幸なニュースが多いように感じますが、日本人初のノーベル文学賞受賞者である、故・川端康成氏が1972年4月16日の夜に自ら死を選択されたことも思い出されるところです。

(ペンネーム:活用算方)

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