転職時の注意点


10月に入り、アクチュアリー試験本番まで約2か月になりました。受験生の皆さまにおかれましては、試験勉強のラストスパートに突入された頃かと存じます。
また、今年のアクチュアリー試験を成功させ、準会員や正会員を狙う方々は、来年2月の合格発表を待たずに、今のうちから、就・転職活動の準備を始める方もいらっしゃる頃かもしれません。

そこで、今回のコラムでは、筆者の知識と経験を交えながら、転職時の注意点について、古い記憶をたどりながら思いつくままにご紹介いたしましょう。
なお、当コラムは、あくまでも転職活動における注意点を列挙したものに過ぎず、決して転職を勧める意図はないことを、念のため申し添えます。

1.転職理由を明確に

転職する理由には様々なものがあり、「正解」と呼べるものが唯一あるわけではないように思えます。しかし、転職先の人事担当者からみれば、“応募者の合理的な行動”を推し量る観点から、“なぜ、転職したいのか?”という素朴な疑問は、“なぜ、当社に入社したいのか?”と並ぶ、2大質問事項と呼んでも過言ではないでしょう。
自分自身の気持ちを整理する観点からも、他人に正々堂々といえる明確な『転職理由』を事前に塾考しておくことが、転職活動の第一歩といえるでしょう。

特に、同業種間での転職活動(例.ライバル会社への転職など)を考えている場合には、“転職せずとも、現在の勤務先で希望の仕事はできるのでは?”という“突っ込み”に備えた、慎重な回答も必要になるでしょう。

2.ヘッドハンターの選定

アクチュアリーの転職と言えば、何といっても、『VRPパートナーズ』が保険・年金業界でダントツに有名ですが、ヘッドハンターを“複数選定”しながら、紹介案件内容やヘッドハンター自身との相性なども吟味しながら転職活動を行うことも重要です。
また、外資系企業への転職を目指す場合、必ずしも、外国人ヘッドハンターが最適である保証はどこにもありませんので、必ず、ご自身の目で確かめてから、付き合うヘッドハンターを選定されるとよいでしょう。

なお、ヘッドハンターには、保険会社ご出身の方々もいらっしゃいますので、特に、転職希望先の会社を予め決めている場合は、同会社ご出身のヘッドハンターを探してみるのも(時間はかかりますが)よいかもしれませんね。
逆に、会社ではなく職種や部署などを基準にして求人案件を探す場合は、同じ会社の案件ばかりを勧めてくるヘッドハンターとは、距離を置いた方がよいかもしれません。

3.レジュメなど

「履歴書」、「職務経歴書」および「英文レジュメ」の3点セットは、転職活動の必需アイテムであり、特に、外資系企業への転職を希望される場合には、「英文レジュメ」が不可欠のようです。
仮に、転職活動を考えていない場合でも、ご自身のこれまでのキャリアを振り返り、社内での昇格や昇給時の人事面談などに備える観点からも、定期的に(最低でも年1回)これらの書類を作成し、ブラッシュアップしておけば、いざという時に、機動的に転職活動ができるでしょう。

なお、上記の3点セットを初めて作成されるという方は、インターネット上で書き方のサンプルを探したり、ヘッドハンターに相談してみるのもよいでしょう。

4.住宅ローン

筆者の苦い経験ですが、最初の転職活動の際、勤務先の社内ローンを活用して住宅を購入しておりましたので、転職活動と新たなローン借入先を探すという同時並行での活動を余儀なくされてました。
幸い、転職先の協力を得て、転職前の勤務年数も含めた形で住宅ローン借換え条件を金融機関と交渉していただけましたので、無事に同ローンの借換えが完了できました。

このように、社内ローンが転職時の思わぬ足かせにつながることもありますので、将来を見据えた上で、社内ローンを利用されることを(仮に転職する意思がなくても)強くお勧めいたします。

5.確定拠出年金

これも、住宅ローンに似ていますが、退職金・退職年金制度の多様化で、転職時にも不利益とならないよう、自分自身で退職金を社外で積み立てることも可能になっています。
いわゆる、“ポータビィリティー”と呼ばれる、“持ち運びが可能な年金”と呼称されることもあります。

現勤務先には失礼かもしれませんが、住宅ローンや退職金制度などに束縛されて、思うように転職活動ができないことは、ある意味、本末転倒とも考えられますので、可能な限り、“足かせ”を事前に除去しておくことも、処世術としては重要ですね。

6.有給休暇消化

転職先が無事に決まって、現勤務先に退職の意思を伝えることができれば、現勤務先でたまっている「有給休暇」を消化するスケジュールが残ります。
もちろん、旅行や家族サービスなど、折角の長期休暇を過ごしてもよいのですが、個人的には、英語の勉強など、自己研鑽の機会に充当するのも悪くないように思います。

特に、国内企業から外資系企業へ転職する場合は、何よりも、英語で仕事を行うことに1日も早く慣れる必要がありますので、英会話学校の短期留学制度や集中授業などに挑戦してみるのもよいでしょう。
あるいは、普段の社会人生活では、なかなか実現できないような旅行(例.青春18きっぷで日本一周の旅など)を行い、自己の視野などを広げることも、その後の社会人生活に役立つかもしれませんね。

7.引継ぎ資料

自分の先輩や後輩が転職するケースを想定すればイメージし易いと思いますが、転職者が抱えている業務案件をしっかりと引き継ぐことは、最低限のマナーですね。
特に、社外との連絡先に引き継ぎ漏れがあると、現業の遅延につながることはもちろん、社外取引先からの信用失墜(例.引継ぎも満足にできない会社など)にもつながりかねません。まさに、“立つ鳥跡を濁さず”ですね。

8.名刺は持ち去り不可

Mr. Childrenの名曲『everybody goes~秩序の無い現代にドロップキック~』の歌詞にある通り、“知識と教養と名刺”は、社会人の武器ですね。
これらのうち、“知識と教養”は、仕事を通じて“自然に”頭に残りますが、“名刺”は現業で得た貴重な個人情報・財産ですので、そのまま転職先に持参すると職務違反などに問われる可能性があります。是非、注意しておきましょう。
https://iikyujin.net/success_manual/detail/51321/

9.挨拶メール(退社/入社)

退社時のマナーとして、在職時にお世話になった方々へメールを送ることが多いと思いますが、退職後の連絡先(例.私用の電話番号、メールアドレスなど)をメールに添えておけば、転職後も連絡を取り合うことができるので大変便利です。
特に、転職先が、現業と親和性がある場合(例.保険会社からコンサルティング会社への転職など)には、現業とのネットワークを維持することで、転職先での仕事にも役立つケースが多いでしょう。
また、近しい知人などには、転職後の着任メールを送信することも、ネットワークを維持する観点からは有効な手段と言えるでしょう。

10.SNSなどに惑わされない

アクチュアリーに限らず、様々な職種や業態に関する転職情報がSNS上に氾濫しています。特に、ヘッドハンターを中心に、転職に関する動画が、自社宣伝を兼ねてYouTubeなどにアップされているケースも多いようです。
ただし、情報が多すぎて、かえって混乱を来す場合もありますし、また、敢えて、どの動画とは申し上げませんが、中には、“う~ん”と思わず唸ってしまうような“誤った情報”や“認識の甘い”動画なども、残念ながら多数存在することも事実です。

SNSに限らず、転職に関する情報を目にした際、少しでも疑問に感じる部分が出た場合には、必ず自分の目で確かめた上で、信頼できる先輩やヘッドハンターに相談する習慣をつけるように心がけて欲しいです。

いかがでしたか。今回ご紹介した注意点は、転職経験のある方にとって当たり前のことばかりかもしれません。“いつ、どこでも、転職できるスキルや人脈を常に構築しながら、好案件が舞い込んできた際、機動的に動ける状況を作っておくこと”が大切ですね。
今回のコラムが皆さまの転職活動の参考になれば幸いです。

 

(ペンネーム:活用算方)

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