アクチュアリー試験講評(2022年度 生保数理編)


2022年度のアクチュアリー試験問題が日本アクチュアリー会ホームページで公開されています。受験された方々は、本当にお疲れさまでした。
今年は特に、CBTによる初めての試験でしたので、操作方法などに戸惑った受験生も少なくなかったかもしれません。
いずれにせよ、合格発表まであと2ヶ月程度ありますので、受験された方も、これから受験される方も気を緩めず、今のうちから試験準備を始めたいところですね。
早速、生保数理について講評いたしますので、受験生の一助となれば幸いです。

1.問題数
2021年度とほぼ同じ問題数(ただし、問題3(20点)が問題3および問題4に10点ずつ分離)で配点も同じでしたので、受験生にとって、特段大きな混乱はなかったと思われます。
昨年同様、2時間で8問、つまり15分1問のペースで解ければ、2時間で40点近く獲得できますので、残り1時間で20点弱という理想的な時間配分になるでしょう。

2.各問題のポイント
問題1(1)
解法:昨年同様、連続払確定年金の現価を含む積分を求める問題です。問題文で利力(δ)が与えられていますので、与えられた条件および教科書(上巻)19ページ(1.7.2)を用いて、現価率(v)を求めた上で積分を計算すればよいでしょう。

問題1(2)
解法:完全平均余命が年齢(x)を用いて表されていますので、教科書(上巻)68ページ問題(16)の結果から死力(μ)を最終年齢(ω)で表し、与えられた条件および教科書(上巻)57ページ(2.4.12)を用いればωが求められます。

問題1(3)
解法:2重脱退表のうち、原因 B によって脱退する者の脱退時の平均年齢を表す式を求める問題です。特に、“原因 B によって脱退する者”という条件が付いていますので、例えば、平成26年度問題1(2)などが類題になるでしょう。

問題1(4)
解法:“経過5年目までの死亡に対しては一時払純保険料と同額”を、また、“経過6年目以降の死亡に対しては1”を死亡した年度末に支払う生存保険ですので、満期保険金額が1であることも踏まえて責任準備金の再帰式を用いれば、「階差数列」を用いて同再帰式を解けば、一時払純保険料が求められます。

問題1(5)
解法:予定利率と同じ利率で利殖した金額を死亡時に支払う保険ですが、定番の“既払込保険料”ではなく、“責任準備金の一定割合”が利殖対象となりますので、過去問でもあまり見かけない問題だと思われます。いずれにせよ、“死亡給付が責任準備金(の一部)返し”のため、前問同様、責任準備金の再帰式を用いればよいでしょう。

問題1(6)
解法:連生保険における“先死亡”および“最終生存者死亡”に絡めた問題です。教科書(下巻)100ページ問題(5)を暗記していれば解きやすかったかもしれません。

問題2(1)
解法:古典的な論点である、“養老保険の年払純保険料=累減定期保険の年払純保険料+定期積金の年払掛金”の応用問題です。過去問としては、例えば、平成15年度問題4などが参考になるでしょう。

問題2(2)
解法:教科書(上巻)『第6章 計算基礎の変更』からの出題ですが、第4章までの知識で解ける問題が多いため、諦めずにチャレンジして欲しい問題です。過去問としては、例えば、2018年度問題2(3)などが参考になるでしょう。

問題2(3)
解法:定期保険の年払営業保険料中、予定事業費に高額割引が導入されている問題です。このため、パターン①で求めた営業保険料と等しくなるように、パターン②の高額割引を吟味する必要があります。

問題2(4)
解法:与えられた条件から、「初年度定期式責任準備金」であることが分かりますので、当該責任準備金特有の公式を思い出す必要があります。なお、予定死亡率が年齢ごとで全て等しいという条件については、例えば、2012年度問題2(3)などが参考になるでしょう。

問題2(5)
解法:貸付金がない場合とある場合とでの延長保険に関する問題です。特に、貸付金がある場合、延長保険金額からも当該貸付金を差し引く点が二重取りではないことに注意する必要があります。

問題2(6)
解法:本問の場合、“余事象”を考える点がポイントですが、教科書(下巻)102ページ問題(10)を暗記しておけば早く回答できるでしょう。

問題2(7)
解法:介護保険(就業不能保障保険)に関するオーソドックスな問題です。過去問としては、例えば、平成27年度問題2(6)などが参考になるでしょう。

問題2(8)
解法:入院保険に関するオーソドックスな問題です。特に、不担保期間を導入する見返りとして、入院給付日額を増やす点は、過去問でも見かけない設定だと思います。

問題3
解法:死亡時に既払込営業保険料を支払う問題ですが、当該保険料に(予定利率と同じ)利息をつける場合と、つけない場合の両方を答える問題です。なお、教科書では、既払込純保険料を支払う問題が教科書(上巻)158~159ページに、また、既払込営業保険料を支払う問題が教科書(下巻)8~9ページにそれぞれ記載されています。

問題4
解法:これまで、就業不能保障保険における「保険料払込免除特約」に関する出題がしばしば行われていますが、本問のように、“保険料払込免除特約に対しても追加的に保険料払込免除特約を付ける”という設定は初めてのように思われます。いずれにせよ、焦らずに問題文の誘導に素直に従って淡々と解答すればよいでしょう。

3.次回以降に向けて
いかがでしたか。今回の生保数理は、比較的オーソドックスな問題が多かったように思いますが、昨年に比べると難易度がやや上がったように思いました。昨年のコラムにも記しましたが、過去問はもちろん、教科書の問題も一通りチェックしておくことが早期合格の秘訣の1つと言えるでしょう。

 

(ペンネーム:活用算方)

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