私事で大変恐縮ですが、この度、アクチュアリーの大先輩である大学教授からのご推薦で、非常勤講師として、某大学の保険数学講座を担当させていただけることとな
りました。
そこで、今回のコラムでは、当該講師として活動するに当たって気づいたことを幾つかご紹介いたしましょう。
1.オンライン講座のメリット
何と言っても、自宅から一歩も動くことなく授業ができる点が最大のメリットですね。実際、オンラインで講義をスタートしたところ、天候に関係なく、また、電車遅延とも無関係な講師の世界が目の前に広がっていて、まさに、21世紀の講義のあり方といっても過言ではありませんね。
ご案内の通り、コロナ禍でオンライン授業が大きく進展された模様ですが、たとえ、平時であってもお互いの時間を有効活用する観点からもオンライン講義が今後ますます拡大することを大いに期待したいところです。
2.学生さんにアクチュアリーを教える意義
大学講義なので対象者は学生の方々のみですが。幸い筆者は、社会人向けのアクチュアリー試験対策勉強会講師も以前から務めさせて頂いています。
特に、学生の方々に向けては、エントリーシートの書き方や面接での想定問答など、筆者の学生時代の経験を活用しながら様々な角度からアドバイスさせていただけることに無上の喜びを痛感しております。
いずれにせよ、このような“草の根活動”を地道に継続することで、アクチュアリー人材の裾野を広げることが、アクチュアリー制度の維持・向上にとって極めて重要な対策であることは論を待たないように思われます。
3.本業との両立
副業において最も難しい問題は、いかにして“講義時間を確保するか?”という点です。幸い、大学側の計らいで、第5限(18時40分スタート)の講義にしていただくことができましたので、出社日でも間に合うことが大変助かります。
もっとも、テレワークにすれば、尚の事、時間の融通が効きますので、今後もテレワークを継続していただきたいと強く願うばかりです。
4.TAとの役割分担
秘書的存在であるTA(Teaching Assistant)の存在も、スムーズな講義運営にとって欠かせないものです。
特に、現在は大学院生にご担当いただけており、大学の雰囲気や他の講義の活動内容など、まるで自分自身がキャンパスにいるかの様に、必要な情報が手に取るように分かるのがとてもありがたいです。
残念ながら、社会人として秘書が付くことはこれまでなかったのですが、メールの代理送受信や課題レポートの取りまとめなど、独りでやるとかなりの作業になるところが著しく軽減される点も本当に助かります。
5.課題レポートのコツ
単位を出す以上、単なる出席回数だけではダメで、試験またはレポート提出をもって単位認定するスタンスも、当該大学における矜持と言えるかもしれません。
とは言うものの、学生の方々にいきなり難易度の高い出題を行うわけにいかず、基本的・初歩的な出題を心がける必要もあります。
幸い、課題レポート作成において、改めて生保数理の「基礎」とは何かを再認識することもできました。やはり、『計算基数の発明』は先人達の偉大なる発見・知恵の結晶であり、今後も大いに引き継ぐべき事項であると思われます。
欲を言えば、“フォワードレートを加味した計算基数”の開発が待たれるところではありますが、なかなか一筋縄ではいかぬところが、保険数学の“奥の深さ”を表しているのかもしれませんね。
6.就職活動へのアドバイス
筆者のこれまでの経歴上、転職時のアドバイスは自分自身の経験を踏まえたアドバイスはしやすいのですが、30年以上前の新卒での就活を思い出しながら、講義および受講生との質疑応答にも大変趣があるように感じております。
ネットニュースでは、未だに金融機関の人気が高いようですが、その裏では、“就業不能保障保険の粗発生率に自社従業員データを用いる”ことを弁えないお気楽な学生さんたちがいることも、念頭に置いて活動する必要がありそうですね。
7.私用メールアドレスの活用
今回の講師活動にあたっては、大学側の配慮で、講師用のメールアドレスも準備され、また、単なる連絡手段のみならずスケジュール管理などの専用IDとしての役割も果たすことに大いなる感銘を受けました。
また、講師用の専用ホームページもあり、講義資料のアップロードや講義に関するFAQなど、講師として大変動きやすい環境を整えていただけた点も有難い限りです。
いかがでしたか。お陰様で、社内勉強会を含めて、30年弱の講師活動を経験させいただけましたが、さらに今回、ご縁があって大学で教鞭を取る機会に恵まれました。教育実習で母校に赴任した際、“将来は教員として母校に赴任できるといいなあ”と漠然と考えていた90年代後半の夢が、今まさに叶った気がしています!
(ペンネーム:活用算方)
2025年06月10日 (火)
非常勤講師になって分かったこと
