1.全体感
第1部は例年同様、過去問を中心とした出題で、時事問題も予想できた内容だったため比較的取り組みやすく、40点は確保したいセットでした。第2部は二年続いた簡単な計算または数値の読み取りを行う出題がなくなり、例年通りの形式に戻りました。どの問題も書きやすい内容でしたが、問題数はやや多かったため時間配分に注意が必要でした。試験中は第2部に進む前に、どの問題に何分費やすべきか簡単に目安を設けておくと心の余裕ができますのでおすすめです。以下各問題に対するコメントです。
2.各問題に対するコメント
問題1(1)
10年前にも同様の出題形式で業務区分の暗記が問われました。今回問われたものは教科書に直接的な記載がないものが多く、答えに窮した受験生も多かったことと思います。試験対策上は教科書・過去問の暗記の方が優先度は高いですが、可能な限り参照法令などもご自身で確認し、教科書+αの暗記も行いましょう。
【教科書】1-16~17
【関連過去問】平成27年度問題1(1)
問題1(2)
料率規制は過去に出題があったため、手早く完答したい問題です。
【教科書】2-13~14
【関連過去問】2018年問題1(2)
問題1(3)
教科書3-50に逓減する体系の存在は書かれていますが、その理由までは書かれてなく、実務経験がないと完答は難しい問題です。問題文が曖昧なため、両方答える必要があるかは判然としませんが、純保険料部分と付加保険料部分のそれぞれについて根拠があります。社費の固定的経費については過去に出題があったため、確実に回答したいところです。純保険料部分については「Increased Limit Factor(ILF)」という用語を検索してみてください。ELCのレイヤリング(教科書4-12)と同じ理屈で、ハイレイヤーとローレイヤーでは事故の発生頻度が異なる分、ロスの発生が抑えられます。
【関連過去問】平成19年問題3(2)、平成24年問題1(4)
問題1(4)
損害率法と純保険料法は頻出問題のため、定型論点として押さえておきたい内容です。
【関連過去問】平成9年問題1(1)、平成15年問題1(4)、平成19年問題1(1)、平成24年問題2(2)
問題1(5)
①~③は教科書記載の未出ヵ所で、内容も平易のため準備されていた受験生は多かったことと思います。④~⑤は過去に出題があったので、確実に得点したい問題です 。
【教科書】4-1~2、20~21
【関連過去問】平成12年問題1(3)、平成26年問題1(2)
問題1(6)
過去問+α(残存リスク)の出題で、ほぼ過去問と教科書のままなので、完答したいところです。
【教科書】10-1~2、12~13
【関連過去問】平成21年問題1(5)
問題1(7)
工学的事故発生モデルの意義とハザード評価の穴埋めは頻出問題のため、確実に得点したい基本問題です。
【関連過去問】平成17年問題1(7)、平成20年問題2(5)、平成24年問題1(5)、平成28年問題2(2)②、2018年問題1(10)
問題1(8)
各種損害率の特徴は損保2でも頻出問題のため、手早く完答したいところです。
【関連過去問】平成6年問題1(1)、平成22問題1(2)、損保2平成11年問題1(3)、損保2平成21年問題1(1)、損保2平成26年問題3(4)
問題1(9)
直近出題があり、その際はすべて書き起こす形式でした。今回は穴埋め形式のため、難易度は低いです。穴埋め形式と書き起こす形式のどちらにも対応できるように、監督指針の文言は損保1の場合は一言一句の暗記がおすすめです。
【関連過去問】2023年問題1(5)
問題1(10)
時事問題で、参考純率については改定があるたびに出題されていますので準備できていた受験生が多かったのではないでしょうか。ディファレンシャル方式については商品部門の方であれば出題が予想できたでしょうが、その他の部門の方は難しかったかもしれません。しかし本件は大手損害保険会社の保険料調整行為に対する解決策の一つとして、各社のIR資料や損保協会のプレスリリース「共同保険の新たな組成方式「ディファレンシャル方式」について」でもよく見かけた用語だったので、しっかりと試験対策を行われていた受験生であれば部門関係なく出題予想ができたと思います。
問題2(1)
個人向け火災保険における損害率の悪化というテーマは、過去出題がありましたので取り組みやすい問題でした。一般論ではなく問題設定に即した回答が求められているため、問題文を品詞分解し出題者の意図を漏らさず答えることが必要です。キーワードを元に、論点を連想していきましょう。例1:個人向け火災保険ということは参考純率の対象商品であるため、すぐに料率を変えるのは難しいかもしれない。例2:火災保険ということは自然災害の影響を受ける。年度末(=3月末)から上期末(=9月末)の間で何が起きたか?台風シーズンを挟んでいる。例3:損害率にはいくつか種類がある。インカードの場合を考えると普通支払備金の積み立て方法に変更があったなど考えられないか?
【関連過去問】2018年問題3(1)
問題2(2)
過去に出題があったため、手早く完答したい問題です。
【関連過去問】2021年問題1(8)、損保2 2018年問題3(5)
問題3(1)
過去問に類題がありますが、本問は保険商品審査事例集を意識した出題と思われます。保険商品審査事例集はここ近年出題が見られるので、損保関連の内容は確実に目を通し暗記しておいてください。回答するにあたっては、キーワードを意識した回答を心がけましょう。なお、回答を行う際は課題だけでは不十分で、対策も考えることも大事です。課題→対策→対策でカバーしきれない課題または新たな課題の発生→その対策、と幅広に考えられると深みが出ます。例1:個人向け=企業向けとの違いは何か?企業だと全員社用スマホを与えられているかもしれない。個人の場合はスマホを保有していない人もいると思われ、その扱いをどうするべきか?スマホによる収集へ完全移行するまでに準備期間を設けるか?例2:直近半年間という期間は短すぎないか?夏場だけ、冬場だけなど季節が限られていると気象状況の影響を受けて偏ったデータになっているのではないか?季節性の影響を受けない情報であることを確認できるか?できない場合はどうするか?例3:一部の販売チャネルということは全部のチャネルに拡大した場合どのようなことが起きるのか?協力者を募ったということだが協力者のモチベーションは何だったのか?協力者に何かインセンティブを与えていた場合、協力者の行動特性に影響を与えてしまっていたのではないか?本格導入した後にこれが判明したら簡単に修正できるような仕組みにできないか?
【関連過去問】平成26年問題3(1)、平成20年問題3(3)
【保険商品審査事例集】令和6年2月、令和4年7月
問題3(2)
問題文が長いので、出題者の意図しているキーワードを漏れなく拾っていく必要があります。ポイント付与については保険商品審査事例集に記載があるので、少なくともその内容は回答したいところです。なお、ポイント付与は特別利益の提供にも留意が必要です。ポイント以外の観点については、前提を読むと、告知事項が減ることがわかります。このような場合は逆選択のリスクが生じるので対策を考える必要があるとわかります。募集チャネル的に募集費が少なそうなので、その分付加保険料を割引くことも考えられそうです。
【保険商品審査事例集】令和2年2月
3.次回以降に向けて
今回で合格しているのが一番ですが、万が一の場合に向けてコメントです。今回の出題内容を見てもわかるように、過去問・教科書・時事問題の暗記をすれば合格できます。まずは過去問を完全に解けるようにし、その後は教科書の未出ヵ所を作問者になった気持ちで予想問題を作成し暗記します。時事問題については、金融庁と損害保険料率算出機構のホームページは随時チェックするようにしましょう。その他の情報源としては、各社のIR資料の他、新聞も参考になります。保険毎日新聞だけでなく、例えば日本経済新聞で取り上げられているような保険関連トピックスは業界関係者以外に対してもインパクトがあることを意味するので、暗記の優先度は高くなります。試験勉強は実務の視野や質の向上にもつながりますので、ぜひ前向きに取り組んでください。
(ペンネーム:ペーパーアクチュアリー)