アクチュアリー試験講評(2025年度 損保2)


1.全体感

問題構成は例年同様で、過去問を中心とした問題であったため比較的取り組みやすい出題でした。なお、四年連続で計算問題が出題されており、今後も計算問題への対策は欠かせません。以下各問題に対するコメントです。

2.各問題に対するコメント

問題1

危険準備金のストレステストと負債十分性テストからの出題です。頻出問題であり、完答したいところです。

【教科書】7-55~68

【関連過去問】2022年問題2(1)、平成25年問題3(3)、平成23年問題5(1)、平成21年問題1

(3)、平成20年問題2(1)、生保2 2020年問題1(1)、生保2平成29年問題2(1)、生保2平成27年問題1(1)、生保2平成23年問題1(1)

問題2

リスク量の統合に関する出題ですが、(1)~(3)は暗記知識が不要なサービス問題なので確実に得点したいです。

【教科書】A-40~41

【関連過去問】平成26年問題4(2)

問題3(1)

モデルガバナンスに関する出題です。含まれるべき内容については、参考書や金融庁の2024年9月「経済価値ベースの評価・監督手法の検討に関するフィールドテスト」(別紙7:内部モデルの自己評価基準・基準5)に記載があります。ただし、ここまで暗記できていた受験生は少なかったかもしれません。

【教科書】10-26~28 【参考書】p.127

【関連過去問】損保1 2021年問題1(8)

問題3(2)

経済資本配賦に関する出題です。前問と同様に、損保1で過去に類題の出題がありました。損保1と2で共通する範囲については、両方の過去問を暗記するようにしましょう。

【教科書】A-57~63

【関連過去問】損保1 2019年問題1(3)

問題3(3)

IBNR備金の内容と意義は基本事項のため、確実に得点したい問題です。

【教科書】6-5、6-26~31

【関連過去問】平成5年問題4、平成12年問題4(1)、平成19年問題5(1)(2)

問題4(1)

異常危険準備金に関する時事問題は頻出のため、準備できていた受験生も多かったのではないでしょうか。税制改正については日本損害保険協会や損害保険労働組合連合会が公開している毎年の税制改正要望にわかりやすく説明されています。暗記する際は改正の内容とその背景・目的をセットで覚えるようにしましょう。

【関連過去問】平成元年問題4、平成5年問題3(1)、平成7年問題4、平成15年問題2、平成25年問題4(1)、2021年問題3(2)

問題4(2)

短期運用を行う意義を問われており、短期国債やコマーシャルペーパーそのものに関して問われているわけではないことに注意してください。

【教科書】8-23

問題4(3)

資産の自己査定に関する出題で、教科書のままの出題なので確実に得点したい問題です。もし試験本番でど忘れしてしまったら、損保2の出題範囲は基本的にはすべてソルベンシーにつながっていることを思い出しましょう。ソルベンシーの観点から「なぜ重要なのか?」を意識することで論点を思い出しやすくなります。

【教科書】5-27~28

【関連過去問】平成10年問題1(2)、2022年問題3(4)

問題4(4)

実効税率の会計へのインパクトに関する出題で、過去に今回とは逆の税率引下の出題がありました。保険会社が計上する繰延税金資産・負債は、保険ビジネスの性質に起因したものがあります。(損害)保険会社固有の論点については試験でも頻繁に問われていますので、教科書や参考書を読む際は他の事業会社との違いは何か?も意識しましょう。

【教科書】9-33~37

【関連過去問】平成24年問題5(2)

問題5

未経過保険料の計算に関する出題で、今回の計算は複雑ではなかったため確実に得点したいところです。計算が苦手な受験生は暗記問題である(2)を回答しておき、時間が余ったら最後に戻ってきてもよいかもしれません。

【教科書】7-16~17

【関連過去問】平成12年問題1(2)、平成19年問題4(1)、平成24年問題3

問題6

経済価値ベースの保険負債に関する出題です。頻出テーマなので取り組みやすかったと思います。昨年出題のあったプロポーショナリティ原則やIFRS17の保険料配分アプローチの適用ルールなどを覚えていれば書ける論点も多かったのではないでしょうか。

【教科書】10-86~95

【関連過去問】生保2平成23年問題3(2)、生保2 2022年問題3(2)、平成20年問題6、2024年問題5

問題7

RMSやVeriskモデルのアップデートが最近あったため、時事問題と言えます。過去にも類似の出題があったため、なるべく多くの論点を挙げて得点したい問題でした。ただし、所見問題では暗記した内容を羅列するのではなく、問題文に即した記述が求められます。まずは問題文を品詞分解し、「モデリング会社」「従来把握していなかった」「定量的に評価」「適切な統合リスク管理」といったキーワードを押さえましょう。モデリング会社のモデルを用いる場合と自社開発を行う場合の論点の違いや、なぜ従来把握できていなかったのか(データ不足、近年影響が顕在化したセカンダリーペリル等)を整理し、最終的には統合リスク管理の観点から記述できるとよいでしょう。

【教科書】A-4~8

【関連過去問】平成21年問題6(2)、損保1 2022年問題2(1)、生保2 2023年問題2(2)

問題8

24年前の過去問の焼き直しですので、試験当日は驚かれた受験生も多かったのではないでしょうか。当時は経営指標が正味事業費率、株主資本利益率、ソルベンシー・マージン比率が指定されていましたが、今でも当時の解答がそのまま流用できます。本問のように問題文が長い場合、試験中焦っていると聞かれている内容を漏らしてしまうこともあるのでキーワードはあらかじめタイプするようにしておきましょう。今回の場合は、「健全性の維持」「収益性の向上」「それぞれがどのような観点から求められているのか説明」「両者の関係」「関連する経営指標に言及」「課題」「どのように達成」「損害率は論じなくてよい」とキーワードが多数あります。保険はリスクテイクを行うビジネスであること、ROE=ROR÷ソルベンシー比率と分解できることは教科書や参考書にも記載がありますが、それがどのように実務と関係しているかはイメージが湧きにくい受験生もいるかもしれません。その場合は、各社ホームページのERMに関するページやIR資料を確認してみましょう。専門家以外にも伝わるようにわかりやすく説明や実例が記載されていますので、勉強になります。

【教科書】10-7~9

【参考書】p.86~88

【関連過去問】平成13年問題5、平成28年問題8(1)

3.次回以降に向けて

今回で合格しているのが一番ですが、万が一の場合に向けてコメントです。損保2は出題範囲が広く、実務経験がない受験生にとっては何が重要で何を覚える必要があるか見当がつかなくて困っている受験生もいるかと思います。そのような時は過去問を活用しましょう。過去に出題があった個所を教科書に印をつけていくと、何度も出題されているテーマがあることに気が付きます。頻出個所は重要であることを意味していますので、まずはそこを中心に暗記しましょう。なお、過去問は平成元年から直近まですべて参照するようにしてください。損保1や生保2と重複しているテーマもありますので、その過去問もおさえておきましょう。勉強した分だけ合格が近づきますし、業務でも必ず役立つ日が来ますので、頑張ってください!

(ペンネーム:ペーパーアクチュアリー)

あわせて読みたい ―関連記事―