アクチュアリーが統計検定3級を受ける意義


「アクチュアリーなら統計はできて当たり前。統計検定3級なんて必要?」

そう思う方も多いと思います。たしかに、アクチュアリー試験に比べれば、難易度には大きな開きがあります。でも、アクチュアリーでも意外と手薄になりやすい領域もチラホラ。さらに受験生にとっては、CBT形式に慣れる、という現実的なメリットもあります。

今回は、統計検定3級から、以下の3点をピックアップしてみました。

1.実務で必要なのは「高度な数理」よりも「誤解を減らす説明」

アクチュアリーの現場では、モデルの精緻さ以上に「結果がどう解釈されるのか」が重要になります。特に大事なのは可視化です。棒グラフは直感的に比較しやすい一方、縦軸がゼロ起点でないだけで差が実体以上に強調されることがあります。時系列データを対数軸で示せば、増加を倍率として捉えれるため、成長率の変化が一目瞭然となることも。帯グラフは構成比の変化に強い一方、総量が増えたのか減ったのかが見えにくくなることもあります。結局のところ、可視化で誤解を減らす鍵は、グラフの種類そのものよりも、「何を比較したいのか」を短い言葉で先に共有することにあります。

2.データを扱う際に必要なのは健全な懐疑心

多くの場合、アクチュアリーが扱うデータは「すでにある」前提で分析します。そのため、どう集められたデータかを深掘りしないまま数理計算すると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。この点に通じる話題が統計検定3級にも登場する全数調査と標本調査です。昔、統計の授業で「どちらが正確だと思いますか?」と問われた記憶があります。答えは、実は一概には言えないというものです。全数調査には標本誤差がありません。でも忘れてはいけないのが、調査に伴うもう一つの誤差です。たとえば未回答や記入ミス、定義のぶれ、調査漏れといった、いわゆる非標本誤差です。全数調査でも、こうしたズレは普通に起きますし、規模が大きいほど管理が難しくなることもあります。大事なのは、「全数か標本か」という二択ではなく、偶然の変動なのか、偏り(バイアス)なのかを切り分ける視点です。

3.たかが外れ値、されど外れ値

アクチュアリーの実務では、外れ値は「例外」ではなく、むしろ頻繁に登場します。高額支払、災害、データ入力ミスの混入など,外れ値には現象とノイズが混在していて、ここを雑に扱うと結論が一気にぶれます。視覚的なチェックで有効なのは、ボックスプロットを使った探索的データ分析(EDA)です。回帰モデルの文脈でも、外れ値は厄介な存在です。最小二乗法のような標準的な回帰では、一部の極端な点が推定結果を強く支配することがあります。結局のところ、外れ値をどう扱うかは、統計のテクニックというより、データの成り立ちに向き合う姿勢に近いものです。この点に共感するアクチュアリーも多いのではないでしょうか。

統計検定3級は、知識を増やすというより、誤解を減らすための「基礎の型」を整える資格だと思います。派手さはないけれど、実務で効いてくるのは案外こういう基礎ではないでしょうか。

(ペンネーム:ceraverse)

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