出生率とは


時節柄、こどもの夏休みの宿題(数学)を手伝うハメになり(笑)、古い記憶を辿りながら久しぶりに充実した時間を過ごせましたが、書棚の奥深くに眠っていた、『高校数学解法事典(旺文社)』が大いに役立ちました。
宿題も無事に終わり、退屈しのぎにページをペラペラとめくっていると、数学A(確率)の問題で『出生率』というタイトルを発見しました。

しかし、アクチュアリー試験(生保数理)で登場する『出生率』とは、定義が異なりましたので、両者の違いをこどもに説明しようと考えたものの、宿題が終わったことで“全く聞く耳を持たず(笑)”でした。
そこで、今回のコラムでは『出生率』について、アクチュアリー試験の過去問や厚生労働省による定義など、周辺情報を含めてご紹介いたしましょう。

1.問題の“問題”

下図がその“問題”ですが、そもそも“統計的確率”という用語にひっかかりました。
ひょっとすると、学習指導要領の改訂などにより、そのような用語が最近の教科書に登場するのかもしれませんが、“『ヒ(=非)』統計的確率”というような用語もあるかもしれませんので、その点は敢えて、“つっこまない”ようにします。
どうやら、“出生者の男女比率”を“出生率”と呼称しているように見えますが、この定義であれば、むしろ、“出生『ヒ(=比)』率”と呼称した方がよさそうに思えますね。

2.アクチュアリー試験(生保数理)の過去問

平成27年度の生保数理の問題1(2)で、“出生率(総人口に対する出生数の比)”という表現が登場します。
後述の通り、日本アクチュアリー会指定の「教科書」では、“出生率”が定義されていないため、問題文において定義が明記されたものと推測されます。

3.二見隆氏の生命保険数学

上記の「教科書」ですが、“出生率”という用語は登場しません。
なお、教科書(上巻)72ページ付近で、いわゆる“レキシスの図”が登場しますので、もし、“出生率”という用語が登場する場合、この辺りが相応しいようにも思えます。

ちなみに、アクチュアリー試験の資格試験要領によれば、生保数理などの第1次試験(基礎科目)の出題範囲は“教科書”に限定することが明記されていますが、問題文で明確な定義を与えているため、上述の“出生率”の出題は同要領には反しないというお考えを、試験委員の方々がお持ちであるように思います。

4.守田常直氏の保険数学

守田常直氏の保険数学は、上記の「教科書」の1つ前のもので、昭和時代のアクチュアリー試験(生命保険数学)の教科書として長らく活用されてきました。
当該書籍は上記の「教科書」と同じく、上巻および下巻から構成されていますが、“出生曲線”や“出生線”といった用語は登場するものの、やはり、“出生率”という用語は登場しません。

なお、別のコラムで、守田常直氏の保険数学についての書評を作成する予定ですので、併せてご確認頂ければ幸いです。

5.厚生労働省ホームページ

厚生労働省の『「出生に関する統計」について』の「6 用語の解説」によれば、出生率とは、“人口千人に対する出生数の割合”であり、具体的には、“年間出生数”を“10月1日現在日本人人口”で除したものを千倍したもののようです。
上述の、アクチュアリー試験の過去問の定義に近いものと言えますね。

6.出生と出産の違い

最後に、“出生”とよく似た用語として、“出産”がありますが、これらの違いについて補足しておきます。
大昔、日本アクチュアリー会主催のミーティングで、参加者から両者の違いがコメントされたのを記憶しているのですが、その方が、“出生は赤ちゃん、出産は母親を指す”と簡潔に表現され、なるほどと感心しました。

ただし、報道などで“合計特殊出生率”という用語も登場しますが、厚生労働省ホームページによれば、“15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの”という定義のようです。
個人的には、“合計特殊出産率”の方が、より正確な気もします。

いかがでしたか。『高校数学解法事典(旺文社)』の執筆者である森田康夫先生は数学者で、整数論の大家です。例えば、『整数論(東京大学出版会)』や『代数概論(裳華房)』などの優れた名著を出されており、筆者も大学時代に大変お世話になりました。秋の夜長に、ゆっくり読み直したいと考えている今日この頃です。

 

(ペンネーム:活用算方)

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