2022年アクチュアリー試験の直前対策(生保数理編)


今年もアクチュアリー試験が近付いてきましたが、受験生の皆さまにおかれましては、いよいよラストスパートに突入されているかと存じます。
また、今年からCBTによる試験がスタートしますので、体験版にて、操作方法なども、しっかりと押さえておきたいところです。
そこで、今回のコラムでは、昨年および一昨年のコラムと同様、アクチュアリー試験の第1次試験(生保数理)について、重要性が高いと思われる論点を幾つかご紹介いたします。

1.三大重要公式

以下の3つの公式は、毎年といっていいほど出題されていますので、是非、暗記しておきましょう。
教科書(上巻)57ページ(2.4.12)

教科書(上巻)127ページ(4.9.4)


教科書(上巻)178ページ(5.3.7)


特に、最後の公式は、保険料払込方法が全期払、つまり、m=nの場合にのみ成り立つ点にも注意しましょう。

2.分割払保険料の考え方

例えば、保険料払込方法が月払の場合、営業保険料を表す記号『』の定義を誤解されている受験生が多いことに驚かされます。
これは、営業保険料や年金年額などの保険価格については、年間の支払額を1とするという独特のルールに基づくためです。
実際、教科書(上巻)166ページ上から4行目に記載の通り、当該記号は、“年額”を表しますので、毎月の営業保険料は、「」となります。

3.藤田先生の公式

数学オリンピックで有名な、中央大学の藤田岳彦先生の資料『アクチュアリー数学試験合格のためにやるべきこと、やってはいけないこと』は、アクチュアリー試験の受験生必読資料といっても過言ではありませんが、内容的に、「数学」に使える公式などが多く登場します。
一方、生保数理にも応用できる公式もありまして、具体的には、26ページに登場する「部分積分は負け」の公式

は、多重脱退表の問題(例.2021年度問題2(1)など)で威力を発揮します。

4.養老保険の年払純保険料分解

初出は、昭和38年度保険数学Ⅱ(午前の部)問題1で、教科書(上巻)134ページ問題(13)に引き継がれています。
また、本件の類題として、教科書(上巻)に登場する以下の練習問題は、すべて、養老保険の年払純保険料分解に関連するものですので、まとめて学習されると良いでしょう。
(1)教科書(上巻)161ページ問題(3)
(2)教科書(上巻)161ページ問題(4)
(3)教科書(上巻)162ページ問題(5)

なお、過去問としては、平成7年度(保険数学1)問題3、平成15年度(生保数理)問題4などで出題されていますので、そろそろ出題されても良い頃と思われます。

5.確率論的表示

教科書(上巻)140ページ、182ページ付近に掲載されている概念ですが、確率統計で考えると、単に“期待値”を求めているに過ぎません。
なお、過去問としては、平成17年度(生保数理)問題1(1)が有名ですが、もし、確率論的表示の概念を知らなくても、十分解けますのでご安心ください。
例えば、コラムが別解です。

6.定常状態(社会)

死亡者の平均年齢については、教科書に公式が明記されていますが、生存者の平均年齢についての公式は教科書に明記されていない点に注意が必要です。
実際、以下の公式が成立しますが、これらのうち、上側の公式は教科書に登場しません。
定常状態(社会)の生存者の平均年齢:


定常状態(社会)の死亡者の平均年齢:

(↑教科書(上巻)76ページ(2.6.14))
なお、過去問としては、例えば、平成29年度(生保数理)問題1(2)で上側の公式が使われています。

7.既払込保険料返還(利息なし)

利息を付けずに、死亡時に既払込保険料を返還する問題では、必ず、が登場します。なお、過去問では、k=1とするパターンが圧倒的に多いですが、余力があれば、k>1の場合でも公式が導けるようになると完璧ですね。
また、教科書(上巻)158ページ、教科書(下巻)8ページが、それぞれ、年払純保険料および年払営業保険料を利息付きで返還する場合の説明です。

8.既払込保険料返還(利息あり)

教科書(上巻)159ページ、教科書(下巻)9ページが、それぞれ、年払純保険料および年払営業保険料を利息なしで返還する場合の説明です。
特に、返還時の付利利率が予定利率と同じ場合、同ページにある公式がさらに簡素化されますので、スピーディな解答が期待できます。
また、問題文で、などが登場すれば、ほぼ間違いなく、この手の問題ですので、併せて覚えておけばよいでしょう。

9.既払込保険料返還(免除保険料含む)

教科書(下巻)117ページ問題(5)が該当します。
なお、10.の「免除保険料含まず」のケースと問題文が酷似していますが、最近の出題では、例えば、2020年度問題3(2)のように、免除された保険料を含めて返還するかどうかが明記されていますのでご安心ください。

10.既払込保険料返還(免除保険料含まず)

教科書(下巻)117ページ問題(6)が該当します。
なお、9.と同様に、この問題文では免除保険料を含まないことが不明確ですが、上述の通り、最近の出題では、この点が明記されていますのでご安心ください。

いかがでしたか。昨年のコラムでも触れましたが、アクチュアリー試験は直前になればなるほど、緊張感からか、なかなか集中できない日々が続く可能性もあります。今回ご紹介した内容をしっかりと押さえ、良い結果につながることを祈念しております。

(ペンネーム:活用算方)

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