アクチュアリー試験の直前対策(生保数理編)


いよいよ、アクチュアリー試験が近付いてきましたが、受験生の皆さまにおかれましては、ラストスパートの時期に突入されていることと思います。

今年は、何といっても、新型コロナウイルスの影響が大きく、資格試験要領が2度出され、試験スケジュールの変更など、例年にない特殊な対応を迫れた感がありますが、同ウイルスの影響は、試験運営のみならず、出題傾向にも影響を与える可能性があります。

そこで、今回のコラムでは、アクチュアリー試験のうち、第1次試験(生保数理)について重要性が高いと思われる論点を幾つかご紹介したいと思います。

1.養老保険の純保険料分解
改めて説明するまでもなく、『超』古典的論点ですね。古くは、昭和38年保険数学Ⅱ問題1(午前の部)で出題されたのが最初だと思われます。また、平成以降の出題としては、平成7年保険数学Ⅰ問題3、平成15年生保数理問題4、および平成27年生保数理問題4(1)、などが挙げられます。

生保数理を初めて勉強される方には、教科書『第1章 利息の計算』は、いわゆる、銀行業務(死亡率を使用しない金融商品)であり、例えば、税抜き100円の品物を消費税10%で買う場合、税込みで110円になることが分かれば、同章は読まず第2章に進んでください、とアドバイスしているのですが、教科書を一通り読まれた方には、教科書(上巻)32ページから登場する『元金償還保険(定期積金)』が必要になりますので、古典的かつ応用論点として学習されるとよいでしょう。

なお、教科書の練習問題で関係するものとしては、教科書(上巻)134ページ(13)、教科書(上巻)161ページ(3)(4)、教科書(上巻)162ページ(5)が挙げられますので、教科書の総仕上げとして、各章に“横串を刺す”ような学習スタイルが理想的です。

特に、教科書(上巻)162ページ(5)の結果、つまり、生命年金現価の逆数と確定年金の逆数の差分になることを覚えていれば、平成27年生保数理問題4(1)の(b)は10秒で解けるでしょう。

2.定常状態の積分計算
平成20年生保数理問題1(2)の公式解答
http://www.actuaries.jp/lib/collection/books/H20/H20B.pdf
で、-∫lx = Tx という部分が登場するのですが、後輩から、『Txはx歳以上の総人口を表す、つまり、∫lx = Txなので、∫の前にあるマイナス符号は不要では?』という質問をいただきました。

当該公式は、教科書(上巻)71ページ(2.6.2)を指すものと思われますが、積分区間の上限が『ω-x』でxの前にある符号がマイナスとなっているため、『積分記号下の微分』のテクニックを用いて、公式解答は正しい旨を回答しました。

あるいは、x歳以上の総人口がTxなので、積分区間の(上限ではなく)下限が『x』となることから、積分して微分するという操作では積分区間の下限はマイナスとなって登場する、と説明した方が分かりやすかったかもしれません。

3.チルメル式責任準備金の出題
教科書(下巻)15ページに、“t=0の場合、本来は責任準備金=0だが、同ページの(8.1.5)でt=0とすると形式的に責任準備金=-α”という趣旨の記述がありますが、どうも、受験生を余計に混乱させているように思えます。

実際、平成9年生保数理問題1(5)や平成15年生保数理問題1(7)では、特に、問題文で指示はありませんが、“t=0の場合、責任準備金=0”として解答されています。“責任準備金=-α”は、あくまでも形式的なものであって、問題文に特段の指示がなければ、“t=0の場合、責任準備金=0”として解答すれば良いでしょう。

一方、それよりも個人的に非常に気になるのは、平成9年生保数理問題1(5)の公式解答で年度末の責任準備金を(死亡給付と同じく)チルメル式責任準備金で積み立てている点です。問題文には、どこにもそのような指示はないのですが。。。

善意に解釈すれば、“本問の場合、年度末の責任準備金の積立方式によらない”かつ“生存者の責任準備金の積立方式を死亡給付と同じにすれば計算が早い”というテクニックを試験委員自ら伝授している、ということかもしれません。

4.時事ネタ?
新型コロナウイルス感染症は、今年の大きな時事ネタですが、あえて、生保数理の出題に当てはめると、“予定死亡率の変更”といった感じでしょうか。

計算基礎率の変更という観点からは、教科書『第6章 計算基礎の変更』からの出題が予想されますが、一方で、教科書『第9章 解約その他諸変更に伴う計算』の範疇として、例えば、(予定死亡率の変更を伴う)契約変更(例.転換など)からの出題も予想されます。

いずれにせよ、“予定死亡率の変更”をキーワードにして、過去問を検索してみるのも受験対策としておススメです。

いかがでしたか。生保数理を含めて、第1次試験(基礎科目)での出題は教科書に限定される旨が資格試験要領に明記されていますが、受験対策としては、教科書だけでは不十分であり、やはり、過去問をしっかり学習する必要があると思います。今回のコラムが受験生の一助となれば幸いです。

(ペンネーム:活用算方)

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