気になるニュース(2023年7月)


6月に引き続き7月に気になったニュースを幾つかピックアップしたいと思います。
なお、内容はすべて単なる個人的な見解であり、特定の人物や団体等を誹謗・中傷する意図は全くないことを、念のため申し添えます。

1.総代会とガバナンス

生命保険会社は、相互会社と株式会社に二分されますが、このうち、相互会社では、保険契約者が株主のような立場で会社の意思決定に参画することが一般的です。ただし、相互会社の無配当保険に加入している契約者には当該権利はありません。
また、株式会社の「株主総会」は6月下旬に集中開催されることが多いようですが、相互会社における「株主総会」に当たる「総代会(社員総会)」は7月上旬に開催されることが多く、総代会を経て夏のボーナスが支給されるというスケジュールが相互会社では一般的だと伺っております。

なお、たまに「社員総代会」という用語を目にする機会(例.日本アクチュアリー会第2次試験(専門科目)教科書など)もありますが、用語としては「総代会」が正しいようですので、特に、受験生の方々は注意される必要があるかもしれません。(とはいっても、教科書に登場する表現をそのまま答案に用いても減点はされないようにも思いますが。。。)
村上ファンド、ライブドア事件など、物言う株主の存在がクローズアップされてきましたが、“「質疑ゼロ」の総代会、配当に透けるガバナンス不全”という見出しは、いい意味でもそうでない意味でも、日本の保険市場の“平和さ”を示しているのかもしれません。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB052Q90V00C23A7000000/

2.決算概要

以前の当コラム「2023年4月4日(火)2022年度決算の見どころ」でも触れましたが、毎年恒例のニッセイ基礎研究所による決算分析レポート(生命保険会社決算の概要)が公開されました。

特に、目次中、

2――大手中堅9社の収支状況
 3|利差益も減少~算定方法の変更によるヘッジコストの負担増加~
 5|ソルベンシー・マージン比率~高水準を維持、ESRの開示も一部の会社から始まる。

4――トピックス
 1|外貨建資産・保険の動向
 2|基礎利益の算出方法の改定の中身について(補足)

辺りは、アクチュアリー試験(生保二次)にも有用と考えられますので、受験生であれば是非一読されることをお勧めいたします。
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75456?site=nli

3.インド市場

長らく国別人口でトップを独走していた中国に代わって、ついに、インドが今年半ばに中国を抜いて世界最多人口になる見通しであることが、国連人口基金(UNFPA)から公表されました。特に、中国の出生率は近年急低下しているようでして、1961年以来、昨年、初めて人口が減少に転じた模様です。
https://www.bbc.com/japanese/65332263#:~:text=UNFPA%E3%81%AE%E6%8E%A8%E8%A8%88%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%81%A8,%E4%BB%A5%E4%B8%8A%E3%82%92%E5%8D%A0%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%8D%E3%81%9F%E3%80%82

このため、今後の経済市場も徐々にインドへシフトする動きが出るかもしれませんが、今月のニュースとして、以下の2つの記事:

・第一生命HD「インドのデジタル保険ブローカーRenewBuy社への出資」

・ニッセイ基礎研究所「インド生保市場における生保・年金のオンライン販売の動向デジタル化を梃子に最先端を目指す動き」

が印象的です。特に両者とも「デジタル化」がキーワードになりそうですので、日本市場も遅れを取らないように注意する必要がありそうですね。

4.Webマーケティング

「保険業界のWebマーケティングの難易度を上げる5つの特徴と解決手段」というキャッチーな見出しに惹かれますね。
特に、2ページ目にある「保険検討のタイミング:生命保険文化センター」によれば、実に、約7割のお客さまが、保険検討のタイミングについて“その考えは全くない”という残念な結果でした。

依然として、大手生保を中心に営業職員チャネルによる人的つながりが、保険募集に不可欠な要素であることが如実に伺いしれる結果ですね。
然は然り乍ら、Z世代を中心に社会のデジタル化は加速度的に進行するでしょうから、同チャネルをベースにした次の戦略を、どの会社も追い求めていることに変わりはないようです。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000122.000027965.html

5.DX時代の突破口

インターネットや通販などのダイレクトチャネルでいつも不思議に感じるのは、ファイナンシャルプランナーなどのプロに相談しながら「最安値の保険に入りたい」という意向を強くお持ちのお客さまが多いことです。
だったらご自身で保険の勉強をされては?と返したくなる保険募集人も多いかもしれませんが、長いおつきあいになる可能性もあり、なかなか強気に出られない募集人も少ないのかもしれませんね。

UI/UX(ユーザー・インターフェイス/ユーザー・エクスペリエンス)は、間違いなくDX時代の突破口になるものと考えられますが、特に、レポートの最後のページにある表で、“信頼できるFPさんに相談したいが、信頼できる人かわからない”というコメントが秀逸でした。
“生命保険は掛け捨てにしなさい!”、“掛け捨て保険の付加保険料は高い!”という相反する書籍を刊行された著名FP、お元気かなあ。。。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000123.000027965.html

6.救急車のテレマティクス実証実験

ドライブレコーダーの普及で交通事故などの映像をニュース番組などで目にする機会も増えつつありますが、さらに、テレマティクス(動態管理システム)を導入して、急ブレーキや急発信など、ドライバー自身の運転マナーなどのデータを補足して自動車保険料などに反映させる動きも加速しています。

特に、救急車の場合、相反する事態(車両の揺れを抑えながら迅速に搬送)に対処する必要がありますので、走行データを可視化し、急ブレーキの発生要因を分析することで、最適な安全運転マネジメントの提案が行われる点は、隊員のみならず患者・家族にとっても非常に安心できる取り組みと言えるでしょう。
まさに、損害保険会社ならではのサービスですので、どんどん普及していくことを切に願っております。
https://www.aioinissaydowa.co.jp/corporate/about/news/pdf/2023/news_2023063001176.pdf

7.AI活用で引受範囲拡大

再保険会社のサービスとしては、当然、様々なリスクを受再することで、元受保険会社のリスク移転・リスクコントロールに貢献することが挙げられます。
一方、特に設立間もない保険会社に対して、治験を活かした査定基準に対するコンサルティング・サービスも、再保険会社のサービスとしては主要といえるかもしれません。

今回、AIモデルである「バーチャルアンダーライティング」を活用した「新引受査定ルール」を導入された元受保険会社が登場した模様ですので、今後ますます、AIの技術は保険業界に浸透することが大いに期待されますね。
https://www.orixlife.co.jp/about/news/2023/pdf/n230720.pdf

8.がん団信は付けるべき?

住宅ローンを借り入れる際、ほとんどセットされるといって過言ではない「団信(団体信用生命保険)」について、銀行員が解説されています。
見出しの「がん団信は付けるべき?」に対する回答として、“月1,300円程度のお金で、がんになったら住宅ローンがチャラになる保障が手に入ると考えられる人なら、がん団信はおすすめできます。”とあります。

なお、付加価値型団信という括りで、「疾病保障特約付き団信」および「ワイド団信」が紹介されていますが、個人保険(特に、第三分野)と団信との垣根がますます曖昧になってきつつありますね。
https://diamond-fudosan.jp/articles/-/1111976

9.不妊治療動向

日本産科婦人科学会が公表する2020年(最新版)ARTデータによれば、日本の不妊治療動向2020-2020年の不妊治療件数は約45万件で、40歳が実施件数・流産数ともにトップ、流産率が生産率を上回る37歳が分岐点だそうです。
異次元の少子化対策を掲げる岸田内閣にとって、不妊治療を含めた総合的な政策が必要不可欠な状況と言えるでしょう。

なお、ARTとは、生殖補助医療技術(Assisted Reproductive Technology)を指し、体内での受精が困難な場合、体外で受精させる技術の呼称だそうです。
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75458?site=nli

10.欠陥発見で1.4億円!

京大の望月教授による「ABC予想」の証明は、未だに様々な議論が残っているようですが、その証明が間違いであることの「証明」に100万ドルの賞金がかけられた模様です。
そもそも、ポケットマネーで100万ドルを拠出できる方がいらっしゃることに驚きを感じますが、100万ドルの賞金と聞いて、リーマン予想などの「ミレニアム問題」が思い出されます。

「ABC予想は京都では定理だが、それ以外では予想だ」

と皮肉を言う数学者もいるそうですが、数学科の教員や学生はもちろん、一般の方々にとってもその行く末が大いに注目されるところです。
https://www.asahi.com/articles/ASR773210R76TOLB00B.html?oai=ASR7731Y5R76TOLB018&ref=yahoo

いかがでしたか。最近話題のBIGMOTOR社ですが、7月24日(月)テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」では、「歩き方が悪い女性社員が解雇された」旨が報道され、LINEで工場長に暴言を送った上司が、本事案発覚後にメッセージを削除したため、逆に、自ら不適切なメッセージであったことを認めた形となりました。

また、関西方面では、娘を入院させて、共済金約570万円をだまし取った詐欺容疑で母親が逮捕されました。会社や親の“モラル”が問われた月になりましたね。

 

(ペンネーム:活用算方)

あわせて読みたい ―関連記事―