業界共通試験(変額保険販売資格試験編)


外貨建保険販売資格試験に続いて、先日、変額保険販売資格試験を受験する機会にも恵まれました。

そこで、今回のコラムも、当該試験を受験される方々に向けて、押さえておくべき“ツボ”をいくつかご紹介いたしましょう。

1.定額保険との差異
(1)猶予期間満了時の取扱い
定額保険では解約返戻金があれば自動振替貸付で保障を継続させることが多いのですが、変額保険では、
ケース1)解約返戻金あり⇒自動延長定期保険
ケース2)解約返戻金なし⇒失効
となります。

(2)復活までの期間
定額保険では失効から3年以内であれば復活が可能であることが多いのですが、変額保険では失効から3か月以内に限り復活が可能です。

(3)契約者配当の扱い
定額保険では3つの配当財源(危険差益、利差益および費差益)がありますが、変額保険では利差益に相当する部分が変動保険金額の増減に反映されるため、2つの配当財源(危険差益および費差益)となります。

(4)契約者貸付有無で保険金額が変動
契約者貸付を行った場合、貸付金と同額の積立金は返済までの間、会社所定の利率で運用されるため、契約者貸付がない場合に比べて、死亡保険金などの金額が変わります。
なお、定額保険では当該貸付有無による死亡保険金などの金額差異はありません。

(5)保険期間、保険料払込期間の変更
日本アクチュアリー会資格試験(生保数理)の教科書(下巻)第9章に登場するとおり、定額保険では会社所定の範囲で保険期間および保険料払込期間の変更が可能ですが、変額保険では当該変更ができません。

(6)保険料払込猶予期間
定額保険では保険料払込方法(回数)に応じて、保険料払込猶予期間が異なりますが、変額保険では保険料払込方法(回数)に関係なく、保険料払込猶予期間は一律に1か月となっています。

2.変額保険と変額個人年金保険との差異
外貨建保険販売資格試験でも登場する変額個人年金保険では、お客さまが会社所定の範囲で運用ファンドを指図(スイッチング)できるのですが、変額保険では当該指図ができないようです。

3.まぎらわしい用語
(1)積立金と積立金額
テキストには、「積立金」とは特別勘定で運用される資産で個々の保険契約にかかわる部分(中略)のことですが、変額保険(有期型)については(中略)満期日における「積立金額」を満期保険金として支払います。
以前、損害保険会社のアクチュアリーとお話しする機会があったのですが、少なくとも、損害保険業界では、「保険金」と「保険金額」は明確に使い分けがなされている模様です。

(2)金融商品販売法/取引法
金融商品販売法および金融商品取引法について、外貨建保険販売資格試験では「金融商品取引法」が本文(=出題範囲)に登場し、「金融商品販売法」は参考(=出題範囲外)のみに登場します。
一方、変額保険販売資格試験では、両者とも本文に登場し、例えば、適合性の原則については、どちらの法律の説明箇所にも登場します。
ですので、試験テクニックとしては、外貨建保険販売資格試験の出題文に「金融商品販売法」という単語が登場すれば「誤り」と判断できるかもしれませんね。

(3)契約締結前/契約締結時交付書面
先ほどとは逆に、外貨建保険販売資格試験では、「契約締結前交付書面」および「契約締結時交付書面」の両方が本文に登場しますが、変額保険販売資格試験では前者のみが本文に登場します。

(4)住所/住居?
犯罪収益移転防止法に関する記述で、相手方が「個人」の場合に確認する内容として、氏名・住居などが列挙されています。
初見の場合、“「住所」では?”と思われるかもしれませんが、何らかの事情で同法に規定されているものと思われます。
試験とは直接関係ないかもしれませんが、余力があれば、住所と住居の違いや、住居が規定された背景などを調べてみるのもよい勉強になるでしょう。

(5)延長保険金額の計算方法
契約者貸付金などがある場合、上述の生保数理の教科書(下巻)第9章では延長保険金額の計算方法が2通り紹介されています。具体的には、延長保険金額から当該貸付残高を控除するかどうかというものです。
一方、変額保険販売資格試験のテキスト28ページ上から7行目の(注)では、貸付金も保険金額から控除すると明記されていますので、“二重取り?”に見えるような取り扱いは、実務上で許容されているものと思われます。

(6)終身保険に「満期」?
延長期間が残存保険料払込期間を超えるとき、延長期間を保険料払込期間満了時にとどめて、満了時まで生存したときは満了日に生存保険金を支払うことがテキスト28ページ上から3~4行目に記載されています。
大昔、筆者が生命保険会社の決算部門に初めて配属されたとき、決算データの中に「商品コード:終身保険」「異動コード:満期」というデータがあり、保険成績(事業統計)上、“終身保険に「満期」が計上”されたため、決算エラーだと思い込んで、先輩アクチュアリー達に失笑された苦い記憶があります。
実は、終身保険を延長保険に変更した場合、このような事象が起こるのですが、若気の至りからつい、“延長保険に変更した段階で終身保険を定期保険に商品コード変更すべきでは?”とやや強めに主張してしまい、今思えば、オトナゲナカッタと反省しております。

いかがでしたか。筆者は新御茶ノ水の会場で9時45分集合時刻の時間割で受験しましたが、当日は9時集合時刻の時間割もあり、会場内がかなり「蜜」の状態でした。(もちろん、新型コロナウイルス感染症対策は行われていましたが。)

受付カウンターで順番待ちしていたとき、9時8分頃に「これで、9時集合の試験受付を終了します。」とのアナウンスがなされました。
電車遅延など、思わぬ事態で遅刻されるケースもあるかもしれませんが、数分程度の余裕をみていただけるのは本当にありがたいですね。

(ペンネーム:活用算方)

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