数学セミナー(日本評論社:2025年12月号)


いよいよ2026年が近づいて来ましたが、特に、日本のアクチュアリーにとって(少なくとも)2つの大きなイベントがある年として、この2026年はアクチュアリー史に残る記念すべき1年になるでしょう。
幸い、日本評論社の月刊誌『数学セミナー(2025年12月号)』で、これらイベントに関連した御寄稿が出されましたので、概要を中心にご紹介いたしましょう。 

1.『数学セミナー』とは

日本評論社ホームページ(https://www.nippyo.co.jp/shop/magazine/4497.html)によれば、1962年(昭和37年)4月号が『数学セミナー』の創刊号であり、実に60余年以上の歴史ある月刊誌です。
なお、昭和37年という年は、アクチュアリーにとっても節目の年でして、例えば、公益社団法人日本アクチュアリー会が行う資格試験制度も昭和37年に大改正が行われた名残で、過去問のサイト(https://www.actuaries.jp/lib/collection/)にも同年以降の問題等が公開されています。

また、生命保険会社としても、国税庁長官から『生命保険会社の所得計算等に関する取扱いについて(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/620816/01.htm)』が出された年であり、今日の法人税制(例.標準責任準備金の損金算入など)の根幹を成しています。

2.アクチュアリー関係記事

『数学セミナー』の過去の御寄稿を検索したところ、以下の記事がヒットしました。

2023年4月号(https://www.nippyo.co.jp/shop/magazine/8994.html
“数学を使う仕事/アクチュアリー……佐野誠一郎”

2015年5月号(https://www.nippyo.co.jp/shop/magazine/6824.html
“[座談会] アクチュアリーのこれまでとこれから─日笠克巳+今井勇城+黒田涼子+黒田耕嗣(司会)”

2010年1月号(https://www.nippyo.co.jp/shop/magazine/5203.html
“アクチュアリー座談会(1)いまアクチュアリーに求められていること/栗山晃+
黒田英樹+松山直樹+山内恒人”

幸い、古書店などで入手できるバックナンバーもありますので、ご興味がある方は是非、お手元に置かれるとよいでしょう。

3.藤田先生の御寄稿

ここから、いよいよ『数学セミナー(日本評論社:2025年12月号)』の具体的な内容をご紹介いたします。
まず、中央大学の藤田先生の御寄稿である“問題は楽しい”ですが、ご自身のお若い頃から数学を真摯に向き合ってこられた先生の直向きなお姿が垣間見られる大変興味深い内容です。

特に、高木貞治氏の『解析概論』を中学時代から“やりまっくており(記者注:原文ママ)”、その後、「大学への数学(学力コンテスト)」および「数学セミナー(エレガントな解答を求む)などで、当該内容を駆使して問題を解かれたお姿は、先生ならではと言えるでしょう。

なお、先生の御寄稿中、問題4(ゼータ関数を含む無限級数の和を求める)の解答例に登場する、“アーベル変換(項ずらし)”のテクニックは、生保数理の教科書(上巻)「第6章計算基礎の変更」に登場する『定理』にも通じるところがありますので、解析概論がアクチュアリー試験にも応用できるという点で、数学科出身者の一人として、無上の喜びを感じるところです。

4.井出氏の御寄稿

日本アクチュアリー会ICA2026広報部会メンバーの、井出瑠美香氏(明治安田生命)の御寄稿“アクチュアリーのこれからICA2026の開催に向けて”は、すべてのアクチュアリーの方々にご一読していただきたい内容です。
ICAはもちろんのこと、経済価値ベースのソルベンシー規制など、ホットな話題にも触れられていますので、特に、これからアクチュアリーを目指そうとされている若手の社会人や学生の方々にも充実した内容になっています。

特に、個人的に嬉しかったのは、前回のICA東京大会(1976年)で掲示された「第20回国際アクチュアリー会議」のロゴおよび看板が、50年前とは思えないくらい新鮮な感じです。
当時は、皇室からも(当時の)皇太子ご夫妻にご臨席を賜り、故・大平正芳元総理もご陪席され、盛大なイベントであった様子が伺いしれるところです。

50年経過という節目の年に、2回目のICA東京大会「第33回国際アクチュアリー会議」に参加する機会を頂戴できることは、まさに、アクチュアリー冥利に尽きると言えるでしょう!

いかがでしたか。上述の藤田先生の御寄稿に登場する数学者のうち、淡中忠郎先生のお名前を大変懐かしく拝見しました。高木貞治先生と同様、類体論に関する御研究でも有名な方ですが、特に、当方と同郷(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B7%A1%E4%B8%AD%E5%BF%A0%E9%83%8E)であることも親近感を持つきっかけになりました。

なお、類体論についてご興味のある方は、河田敬義先生の御寄稿“高木先生と類体論”(https://www.mathsoc.jp/assets/pdf/overview/history/takagi300/sugaku1203136.pdf)を一読されることを強くオススメします。(←筆者は大学生時代、百回以上読みました!)

(ペンネーム:活用算方)