アクチュアリー試験講評(2025年度 生保数理編)


2025年度のアクチュアリー試験問題が日本アクチュアリー会ホームページで公開されています。受験された方々は、本当にお疲れさまでした。
合格発表まであと2ヶ月程度ありますので、受験された方も、これから受験される方も気を緩めず、今のうちから試験準備を始めたいところですね。
早速、生保数理について講評いたしますので、受験生の一助となれば幸いです。

1.問題数

2024年度と同じ問題数および配点でしたので、大きな混乱はなかったものと思われますが、昨年度に比べると計算量が増えた感じもしますので、短時間で効率よく計算できるスキルも要求されたかもしれません。
昨年同様、2時間で8問、つまり15分1問のペースで解ければ、2時間で40点近く獲得できますので、残り1時間で20点弱という理想的な時間配分になるでしょう。

2.各問題のポイント

問題1(1)
解法:永久年金に関する問題です。与えられた条件から、割引率「d」が計算されますので、そこから、予定利率「i」および現価率「v」が導かれます。
特に、教科書(上巻)21ページ(1.8.6)を暗記された方は取り組み易かったかもしれませんね。

問題1(2)
解法:定数「a」を含む死力に関する問題です。
   30歳および32歳の生存者数が与えられていますので、教科書(上巻)55ページ(2.4.3)を用いて、積分定数および定数「a」を求めればよいでしょう。
類題は、平成15年度問題1(3)などです。

問題1(3)
解法:平準純保険料式責任準備金の値を求める問題ですが、将来法の公式に登場する「年払純保険料」および「生命年金現価」が与えられていないため、将来法の公式を用いる場合、何らかの方法でこれらの値を求める必要があります。
   一方、与えられた条件から、「x」および「n」の上に「1」が付いているため、過去法の公式も併用するとよいかもしれません。

問題1(4)
解法:教科書(上巻)114ページに、“「生命年金現価では、死亡率が1/1000低下することと利率が0.1%低下することは、その影響がほぼ同じである」ことが推測される。”とありますが、「生命年金現価」を「年払純保険料」に置き換えたものです。類題は、平成21年度問題1(4)などです。

問題1(5)
解法:養老保険の貯蓄保険料を求める問題です。貯蓄保険料を求める方法には、「方法1:定義通り計算」、「方法2:純保険料から危険保険料を控除」の2通りがあります。本問の場合、予定利率および生命年金現価の値が与えられていますので、方法1を用いると良いでしょう。
類題は、2020年度問題1(4)などです。

問題1(6)
解法:養老保険における延長保険に関する問題です。問題文でも“下線”で強調されていますが、教科書には当該保険における死亡保険金の定義が2通り(=貸付金の控除有無)ありますので、問題文の指示にしたがって淡々と計算すればよいでしょう。
類題は、2021年度問題2(6)などです。

問題2(1)
解法:死力が与えられたとき、完全平均余命を求める問題です。
完全平均余命を表す公式として、教科書(上巻)60~61ページ(2.5.3)および(2.5.5)がありますが、本問の場合、死力のみが与えられていますので、死力から生存確率を計算して、後者の公式を用いればよいでしょう。
類題は、2019年度問題1(2)などです。

問題2(2)
解法:死亡・就業不能脱退残存モデルで、「就業者=会社員」、「就業不能者=自己都合退職者」に置き換えたモデルです。
   なお、「会社員の死亡率」と「x歳の者の死亡率」は異なる概念ですが、問題分では後者に「(全員)」と記載されていますので、大きな混乱はないように思われます。
類題は、2019年度問題2(1)などです。

問題2(3)
解法:“正しいものをすべて選ぶ”問題ですので、1つでも間違うと加点されない恐れがあり、解答時間も要するため、受験生が億劫がる問題パターンです。
   一方で、常に正しいかをチェックすればよいので、例えば、保険期間「n」に計算しやすい具体的な数値(例.n=1など)を代入して、等式の成立状況を確認するという“裏技”もあります。
類題は、平成26年度問題1(3)などです。

問題2(4)
解法:終身保険の一時払純保険料の予定利率による微分を表す式を選ぶ問題です。
   なお、平成7年度(保険数学2)問題2では、養老保険の一時払純保険料の予定利率による微分を表す問題が出題されましたので、当該問題の結果を暗記されている方にとっては、ある種の「サービス問題」と言えるでしょう。

問題2(5)
解法:2つの一時払終身保険の営業保険料が等しい場合の定数「α」を求める問題です。なお、予定事業費が新契約費のみで、かつ、当該新契約費が(保険金額ではなく)保険料比例ですので、少し戸惑った方がいらっしゃったかもしれません。
類題は、2019年度問題2(5)などです。

問題2(6)
解法:生命表に関する条件が「同一」のみであるため、任意の「生命表」で正解が不変となります。このため、例えば、全員が加入直後に死亡するような「生命表」を考えた場合、“生存者が4人のとき各人に年金額1.5を支払う期始払年金”、つまり、選択肢のうち、生命年金現価の「係数」の合計が6(=4×1.5)となるものが“正解候補”となり、正解を絞り込める点が特長です。
類題は、平成27年度問題2(5)などです。

問題2(7)
解法:就業不能保障保険の年払純保険料を求める問題ですが、死亡給付が就業者と就業不能者で異なる点に注意が必要です。
   なお、問題文では、様々な計算基数(例.右上にiが1つ、2つ、(i)など)が与えられていますので、記号の定義をしっかりと覚えておく必要があります。

問題2(8)
解法:入院給付に関する問題で、教科書(下巻)『第14章 災害および疾病に関する保険』の公式を用いれば良いでしょう。類題は、2021年度問題2(8)などです。

問題3
解法:連続払の連生年金および平準純保険料式責任準備金について、経過tにおける微分を表す問題です。なお、連続払生命年金現価を年齢で微分した結果を覚えていれば早く解答できます。
類題は、平成28年度問題3(2)などです。

問題4
解法:一時払営業保険料を保証する終身年金の一時払営業保険料を求める問題です。
   いわゆる“ループ計算”を行う必要がありますので、問題文の誘導にそって淡々と解答すればよいでしょう。
   なお、教科書(下巻)12ページ問題(6)の類題ですが、長年、当該問題を「予想問題」として掲げてきた某生保数理講師が、“やっと出題された!”と欣喜雀躍している姿がとても印象的です。

3.次回以降に向けて

いかがでしたか。今回の生保数理は、昨年に比べて難易度が上がったように感じますが、ここ数年、生保数理の合格率は比較的高い状態が続きましたので、“平年並みの難易度”に戻ったようにも思われます。

ただし、教科書の練習問題(例.問題4など)および過去問の類題も散見されましたので、難易度にかかわらず、過去問はもちろんのこと教科書の問題も一通りチェックしておくことが、やはり早期合格の秘訣と言えるでしょう。


(ペンネーム:活用算方)

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