2025年度のアクチュアリー試験問題が日本アクチュアリー会ホームページで公開されています。受験された方々は、本当にお疲れさまでした。
合格発表まであと2ヶ月程度ありますので、受験された方も、これから受験される方も気を緩めず、今のうちから試験準備を始めたいところですね。
早速、生保1について講評いたしますので、受験生の一助となれば幸いです。
1.問題数等
問題数および配点は昨年とほぼ同じ(←問題2で1問増加)でしたので、戸惑った受験生は少なかったかもしれません。
特に、問題1(1)では、“生命保険の一般的な商品開発プロセス”に関する穴埋め問題が出題されましたので、2018年度の教科書『第4章 生命保険の商品開発』改訂以後、資格試験要領に記載されている生保1の内容「生保商品の実務」に沿った出題がなされたとも言えるでしょう。
また、問題2(3)では、海外現地法人におけるアクチュアリー同士の対話からの出題もあり、昨今のTOEICにおけるテキスト問題(例.SNSによるやり取り等)に類似した形式があった点も特徴です。
なお、“文字数”については、昨年同様、“文字数の程度”が指定されていること加えて、“文字数の上限”が指定されている問題が増えたようにも思います。
2.各問題のポイント
問題1(1)
講評:上述の通り、2018年度に改訂された教科書『第4章 生命保険の商品開発』からの出題です。【語群】からの選択式で穴埋め記述式ではないため、取り組みやすかったように思います。
問題1(2)
講評:生保標準生命表2018(死亡保険用)の作成における基礎データの穴埋め問題です。過去問としても、当該作成に関する出題がありますが、第三分野標準生命表2018と合わせて繰り返しの出題に備える必要がありそうですね。
問題1(3)
講評:監督指針(商品開発に係る内部管理態勢)からの穴埋め問題です。上述の問題1(1)と同様に、日常業務で商品開発に従事されている受験生にとっては、馴染みのある出題内容でしょう。
問題1(4)
講評:教科書『第5章 変額年金保険』の出だし部分を中心とする穴埋め問題であり、問題1(1)と同様に【語群】からの選択式ですので、比較的取り組みやすかったように思います。
問題1(5)
講評:教科書『第8章 再保険』24ページ以降からの非比例式再保険に関する出題でした。上述の問題1(1)と同様に【語群】からの選択式ですので、比較的取り組みやすかったように思います。
特に、(イ)は、ストップロス・カバー再保険に関する計算問題でしたので、事前準備が不十分な受験生も少なくなかったかもしれませんが、問題文の【前提条件】に具体的な計算方法が示されていますので、問題文を慎重に読めば、自ずと解法が見いだせるかもしれません。
問題2(1)
講評:アセット・シェアに関する問題でした。
(ア)は、アセット・シェア計算の代表的な活用目的を4つ挙げる問題で、アセット・シェアにおける基本的な内容でしたので、比較的取り組みやすかったように思います。
一方、(イ)は、アセット・シェアの計算問題ですが、問題文に使用すべき計算式が明示されていますので、当該算式に沿って淡々と計算すればよいでしょう。
問題2(2)
講評:個人保険の料率設定で年齢・性別等によらず一律の予定発生率設定に関する問題です。筆者の知る限り、傷害特約(ケガ保障)および先進医療特約が当該保険の一例であると記憶しています。なお、隣接業界(例.こくみん共済等)も同様の掛金設定ですが、アクチュアリー試験の答案に記載することは、相応しくないかもしれませんね。
問題2(3)
講評:α-β-γ体系の限界(予定利率引下げにもかかわらず営業保険料も引下げ)に関する問題です。過去問でも、例えば、2020年度問題2(1)②でも類題が出題されましたので、比較的取り組みやすかったように思います。
問題2(4)
講評:団体(信用生命)保険に関するグレッグの原則に関する出題です。当該原則を列挙する出題はこれまでにありましたが、団体信用生命保険の販売時の募集パンフレットを示して、当該原則に該当する部分を選ぶ出題は初めてと思われます。
なお、配点は5点ですが、恐らく、当該原則をすべて挙げただけでは加点されない可能性もありますので、どのような採点基準なのか非常に興味があります。
問題2(5)
講評:少額死亡給付付きの医療保険に関する事後モニタリングに関する出題です。
本問を含めて、今回の出題では、『事後モニタリング』という単語が4か所も登場しますので、試験委員として、商品開発プロセスにおける「PDCAサイクル」の重要性が念頭にあるものと思われます。
問題3(1)
講評:長らく販売停止にされていた終身年金ですが、金利上昇トレンド等を踏まえた商品設計案として、トンチン性のある商品開発に関する出題です。
ただし、金利については、“数年前に比べ乱高下が激しく、今後の見通しについては不透明”という記述もありますので、リスク管理の側面を含めた、予定死亡率および予定利率がメインの解答となるでしょう。
また、例年と同様に【観点】が明記されていますので、当該観点に沿って解答することが期待されるところですね。
問題3(2)
講評:他社に先駆けて、引受基準緩和型の医療保険を販売している会社を題材にして、標準体向けの医療保険との併売が前提となっています。
特に、問題文にも明記されていますが、他社による類似商品参入で価格競争が不可避的な状況において、一方で発生指数が悪化するという悩ましい環境が前提になっていますので、このまま実務に直結する内容と言えるでしょう。
問題3(1)の【観点】と同様に【論点】が明記されていますので、当該論点に沿った解答が期待されるところですね。
3.次回以降に向けて
いかがでしたか。昨年のコラムにも記しましたが、第Ⅰ部対策としては、やはり、教科書を中心として監督指針や法令(商品認可関係)等の理解が極めて重要です。また、第Ⅱ部対策としては、常日頃から課題意識を持ちながら、自分自身の意見や考え方を“自分の言葉で分かりやすく相手に伝える練習”をしておくことも大切です。当たり前のことを当たり前に実行できることは、決して当たり前ではありませんね。
(ペンネーム:活用算方)