アクチュアリー試験講評(2025年度 生保2編)


2025年度のアクチュアリー試験問題が日本アクチュアリー会ホームページで公開されています。受験された方々は、本当にお疲れさまでした。
合格発表まであと2ヶ月程度ありますので、受験された方も、これから受験される方も気を緩めず、今のうちから試験準備を始めたいところですね。
早速、生保2について講評いたしますので、受験生の一助となれば幸いです。

1.問題数等

問題数および配点は昨年とほぼ同じでしたので、戸惑った受験生は少なかったかもしれません。
また、“文字数”については、昨年同様、“文字数の制限”が指定されています。これは、昨年と同様ですが、「生保2」では文字数が「上限」であるのに対し、「生保1」では「程度(目安)」と「上限」が混在していますので、両科目を同時受験される場合は、注意が必要ですね。

2.各問題のポイント

問題1(1)
講評:有価証券評価損の計上に関する、「金融商品に関する会計基準」および「金融商品会計に関する実務指針」等の内容を説明した問題です。減損処理に関する記述もありますので、決算部門や収益管理部門に所属する受験生にとっては、比較的取り組みやすい問題であると思われます。

問題1(2)
講評:リスク戦略の構成要素に関するIAAの「保険会社のERMの数理的側面」に基づき説明した文章についての穴埋め問題です。教科書『第4章 リスク管理』19~21ページからの出題です。
   特に、リスクアペタイトという概念は、保険会社以外の一般事業会社においても重要な考え方ですので、リスク管理のプロフェッショナルを目指すアクチュアリーとしては、是非、身に着けたい素養の一つと言えるでしょう。

問題1(3)
講評:予定事業費枠に関する計算問題です。特に、利源枠について、第1保険年度および第2保険年度を計算させる問題がありますので、NR(ネガティブ・リザーブ)修正を考慮する必要があるものと思われます。
   また、教科書『第5章 事業費の管理・分析』にも記載されていますが、1つの「枠」が計算された場合、定義によらず、当該「枠」から計算できるケースもありますので、効率良く計算できるスキルも必要かもしれません。

問題1(4)
講評:実務基準における1号収支分析の結果、責任準備金不足相当額が発生した場合に当該不足相当額の一部または全部を積み立てなくてもよい経営政策の変更に関する出題です。特に、日々の業務で保険計理人の補佐業務を遂行されている受験生にとっては、比較的取り組みやすい問題であると思われます。

問題1(5)
講評:保険料積立金を積み立てる契約のうち標準責任準備金の対象外となる契約を4つ列挙する問題です。金融庁告示第24号の内容を簡潔に記載すれば良いのですが、特に、第4号に規定される「利率変動型保険」を簡潔に記載(150字以内)するためには、常日頃からの練習が不可欠と思われます。

問題1(6)
講評:経済価値ベースのソルベンシー規制における「三つの柱」について、第一の柱~第三の柱のそれぞれの内容を簡潔に説明する問題です。いよいよ当該規制の導入が近づいてきましたが、金融庁ホームページでも専用サイトが設置され、今年7月には施行規則や告示等が最終化されましたので、まさに時事問題と言えるでしょう。
   なお、各「柱」に対する“見出し”が、監査法人の間でも異なるように記憶しておりますので、社内資料等で使用する場合には、金融庁が使用する表現を用いるようにされるとよいでしょう。

問題2(1)
講評:生命保険会計の意義および特徴について簡潔に説明する問題です。本問は極めてオーソドックスな問題であり、これまで何度も出題されている問題の1つです。
ただし、文字数上限がありますので、簡潔に解答できることも要求されますので、くれぐれも“丸暗記”に頼りすぎない姿勢が重要かもしれません。

問題2(2)
講評:契約者配当財源の決定要因について、4つの観点に沿って説明する問題です。
この問題も、保険計理人補佐業務を遂行されている受験生にとっては、比較的取り組みやすい問題であると思われます。
ただし、会社によっては、たとえ有配当契約を販売していても、特別配当に関する規定がない商品しか販売していないケースでは、4つ目の観点「通常配当と特別配当」の部分(例.ラムダ配当、ミュー配当等)は解答しにくかったかもしれません。

問題3(1)
講評:“新たにインターネットチャネルを設け、無配当の平準払円建積立保険を発売した。”という部分だけを読むと、生保1の問題のように見えますが、“新商品の予定利率は、他社との競合を考慮し競争的な水準に設定”という辺りで、生保2の問題であることが意識されます。
同時に、区分経理の導入や3つの観点を含めた解答等、監督指針上の規定を含めた幅広い視点に基づき解答する必要があります。

問題3(2)
講評:統合的リスク管理の一環として行うストレステストの意義・目的について簡潔に説明し、ストレステストの実施における留意事項を3つの観点から解答する問題です。経済価値ベースのソルベンシー規制においても、リスク量測定においては、何らかのストレスシナリオに基づきますので、本問は時事問題の1つと言えるでしょう。

3.次回以降に向けて

いかがでしたか。昨年のコラムにも記しましたが、第Ⅰ部対策としては、やはり、教科書を中心として監督指針や実務基準等、さらに余裕があれば法令や告示等の理解が極めて重要です。また、第Ⅱ部対策としては、繰り返しで恐縮ですが、やはり、常日頃から課題意識を持ちながら、自分自身の意見や考え方を“自分の言葉で分かりやすく相手に伝える練習”をしておくことも大切です。当たり前のことを当たり前に実行できることは、決して当たり前ではありませんね。



(ペンネーム:活用算方)

あわせて読みたい ―関連記事―