アクチュアリー試験講評(2025年度 年金1編)


2025年度のアクチュアリー試験の試験問題が公開されました。長期間の学習を経て本試験に臨まれた皆さま、本当にお疲れさまでした。
年金1は、確定給付企業年金・確定拠出年金・公的年金・税制といった幅広い分野を横断的に問われる科目であり、知識量だけでなく制度趣旨の理解や実務感覚も求められます。本記事では、2025年度試験を振り返りつつ、次回以降の学習に向けたポイントを整理します。

1.問題数と全体の難易度

出題構成や配点は例年と大きな変化はなく、第Ⅰ部・第Ⅱ部ともにオーソドックスな構成でした。全体としては標準的な難易度であるものの、法令改正や直近の制度見直しを正確に押さえていないと得点が伸びにくい問題が多く、基礎知識の完成度が合否を分ける試験だったといえます。
特に公的年金や確定拠出年金に関する最新改正が複数盛り込まれており、時事対応の重要性を強く意識させる内容でした。

2.第Ⅰ部の講評

第Ⅰ部は穴埋め・正誤・計算問題を中心に、年金制度全般から幅広く出題されました。過去の年金1と同様に、法令・通知・制度改正を正確に押さえているかどうかがストレートに問われる構成です。

問題1(1)~(4):確定給付企業年金および確定拠出年金に関する法令・通知からの出題が中心でした。条文ベースの穴埋めや下線修正問題が多く、基本事項を一つひとつ丁寧に確認できていれば大きく失点する内容ではありません。一方で、特に下線修正問題は、細かい内容までしっかり覚えていないと対応できない問題も含まれていました。その部分で差が出たかもしれません。

問題1(5)・(6):公的年金および税制に関する設問です。年金積立金の運用や直近の制度改正、退職所得計算など、いずれも基本事項ではありますが、数字や要件を正確に覚えていなければ得点できない内容でした。特に公的年金の制度改正については、ニュースレベルで把握しているだけでなく、試験で問われる形に落とし込んで整理できていたかどうかがポイントとなります。

問題2:簡記問題では、確定給付企業年金、確定拠出年金、公的年金、税制といった主要テーマが一通り出題されました。いずれも通知や省令に基づく定番論点であり、過去問を通じて答案の型を身につけていた受験生にとっては比較的書きやすかったのではないでしょうか。一方で、簡単な問題ではないものが多かった印象で、分かっているつもりでも、答案として整理して書き切れなかった受験生も多かったのではないかと思います。

3.第Ⅱ部の講評

第Ⅱ部は、事例設定を踏まえた総合問題および所見問題が中心で、単なる知識量ではなく、制度をどう理解し、どう考えるかが問われる構成でした。例年どおり、実務との距離が近いテーマが多く、準備の差がそのまま答案の差として表れやすいパートだったといえます。

問題3:確定給付企業年金における権利義務移転をテーマとした総合問題です。必要な議決・同意、移換金額の考え方、給付減額該当性、給付利率の違いを踏まえた制度設計上の留意点など、複数の論点が一つの事例に集約されています。条文や通知の知識を個別に覚えているだけでは対応が難しく、制度全体の流れを理解したうえで整理して書けたかどうかが得点を左右したと考えられます。特に給付減額に該当するかどうかの判断や、金利上昇局面を踏まえたアクチュアリーとしての助言は、受験生間で差がつきやすい部分だったのではないでしょうか。

問題4:リスク分担型企業年金の活用および人的資本経営をテーマとした所見問題です。(1)は制度設計上のメリット・デメリットや普及に向けた方策を整理して述べる問題であり、過去にも類似の出題が見られる定番論点といえます。一方で、近年の運用環境や制度利用状況を踏まえた記述ができたかどうかで、答案の説得力に差が出た可能性があります。(2)は人的資本経営という近年重視されている概念と企業年金制度を結び付けて論じる問題で、明確な正解があるわけではありません。制度趣旨を踏まえつつ、自身の考えを論理的に整理して示せたかどうかが評価のポイントになったと考えられます。

4.次回以降に向けた学習アドバイス

2025年度の年金1を通じて改めて感じるのは、法令・通知・Q&A・制度改正資料を網羅的かつ正確に押さえる重要性です。
第Ⅰ部では知識の抜け漏れをいかに防ぐかが勝負であり、条文レベルでの理解が不可欠です。一方、第Ⅱ部では、制度趣旨を踏まえて自分の言葉で説明する訓練が欠かせません。

年金1は範囲が広く大変な科目ですが、裏を返せば、正しく準備すれば安定して得点しやすい科目でもあります。基礎を固めたうえで、法改正や時事論点を丁寧に積み上げていくことが、合格への近道といえるでしょう。

ペンネーム:mizuki

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