経済価値ベースのソルベンシー規制が2026年3月期(2025年度)決算で導入されましたが、監査法人やコンサルティング会社などから様々な情報・サービスが提供され、まさに”ESR特需”とでも言うべきビジネス案件が話題沸騰の状況です。
また、業界紙(例.週刊ダイヤモンド「新規制ESRの衝撃(2026年5月)」など)でも特集が企画され、シンクタンク等からも専門家向けの書籍が刊行されています。
そこで、今回のコラムでは、以前の当コラム「2024年1月19日(金) 改訂箇所(ソルベンシー規制の国際動向)」に続きまして、2026年3月に刊行された、ニッセイ基礎研究所の中村亮一氏による『ソルベンシー規制の国際動向〔第3版〕(保険毎日新聞社)』(以下、「第3版」)について、改訂箇所をご紹介いたしましょう。
1.刊行年月日
『ソルベンシー規制の国際動向(保険毎日新聞社)』シリーズは「第3版」を含めて、以下の刊行年月日です
初 版:2020年10月25日
改訂版:2023年12月25日
第3版:2026年3月22日
第3版は2年4か月ぶりの改訂ですが、2026年3月末の“経済価値ベースのソルベンシー規制”導入に合わせて改訂されたものと思われます。
なお、第3版の“第3版刊行にあたって”で触れられている通り、IAIS(保険監督者国際機構)によるICS(保険資本基準)が2025年から導入された等、前回改訂から諸外国においても様々な動きがあったものと思われます。
可能であれば、初版および改訂版も同時並行で読まれることで、当該“動き”がより鮮明になるように思います。
2.総ページ数
初版(355ページ)、改訂版(425ページ)に対して、第3版(492ページ)です。
第3版の章数は改訂版と同じ7つですが、上述の“第3版刊行にあたって”にあるとおり、例えば、第6章(その他の保険主要国・地域におけるソルベンシー規制)で、スイスとバミューダが追加されるなど、前回に続いて大幅に加筆されています。
特に、“バミューダが追加”という部分で、最近話題の“資産集約型再保険(AIR)”が思い出されますが、同保険も(巻末の事項索引で)追加されていますので、時宜を得た作品と言えるでしょう!(上から目線でスミマセン)
3.価格
価格(税抜き)は、初版(3,800円)、改訂版(4,500円)に対して、第3版(5,000円)です。本書改訂版が67ページ増えていますので、1ページ当たり10円程度とも考えられます。
ちなみに、以前の当コラムでもご紹介しましたが、“平成21年度第6回例会・論文発表研究集会”で、山内恒人氏の『生命保険数学の基礎(東京大学出版会)』で『1ページ10円を下回る!』とのコメントがありましたので、学術書的にも1ページ10円が相場かもしれませんね。
4.著者紹介
改訂版から新設された「著者紹介」が更新されています。
具体的には、「2024年」が追加され、記載場所も巻末に移動しています。
また、改訂版と同様に、出版社のホームページ(https://homai.co.jp/%E3%82%BD%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%BC%E8%A6%8F%E5%88%B6%E3%81%AE%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%8B%95%E5%90%91%E7%AC%AC3%E7%89%88/)でも閲覧できます。
なお、中村先生は1982年に大学を卒業されていますので、ちょうど筆者の10歳上に当たります。10年後の自らの生き方を想像しながら、果たして中村先生のような精力的な活動ができるのか(そもそも生きているのか?)という点が個人的に気掛かりです。
5.凡例
改訂版で新設された“本書の執筆にあたって”が更新(改訂版の追記)されました。
また、“略称・略記(例.AAA:米国アクチュアリー学会等)”も、初版(116個)、改訂版(133個)に対して、第3版(143個)とさらに増えており、上述のAIR(資産集約型再保険)等が追加されています。
6.“参考”
本書の内容を理解しやすくするために様々な図表が織り込まれていますが、さらに理解を深めるために“参考”と呼ばれる資料も適宜挿入されています。
この“参考”も、初版(21個)、改訂版(24個)に対して、第3版(31個)とさらに増えており、上述のAIR(資産集約型再保険)等が追加されています。
7.章立て
上述のとおり改訂版と同様に、第3版も第1~7章で構成されています。
上述の出版社ホームページ
https://homai.co.jp/%E3%82%BD%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%BC%E8%A6%8F%E5%88%B6%E3%81%AE%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%8B%95%E5%90%91%E7%AC%AC3%E7%89%88/でも各章のタイトルが閲覧できます。
以下、各章の改訂箇所を簡単にご紹介いたします。
8.第1章 ソルベンシー規制の概要と動向
“6-4 新たなリスク(エマージングリスク)への対応”で“参考(サステナビリティ情報の開示をめぐる動向)”などが追加され。“参考”が充実しました。
9.第2章 国際的なソルベンシー規制
“4 ICS(保険資本基準)”で、“図表4 ICS実施評価方法-ハイレベルな原則(HLPs)”などが追加されました。
10.第3章 EUにおけるソルベンシー規制
“5 ソルベンシーⅡの第1の柱(定量的要件)”の“参考(リスクマージンの具体的な算出方法)”で、2025年改正指令等適用後などが追加されています。
上述の“第3版刊行にあたって”でも、“EUでは(中略)2025年の大幅な指令改正が発効”とありますので、当該改正内容を分かりやすく紹介しているものと思われます。
11.第4章 米国におけるソルベンシー規制
“2(3)②「暦年法定責任準備金評価利率」の算出”で、年金保険の加重係数が(図表2で)より詳しく取り上げられています。
“加重係数”とは、保証期間(記者注:予定利率の保証期間?)別に設定される係数で、生命保険および年金保険における当該評価利率を求める計算式に組み込まれています。
なお、保証期間が長くなるほど、当該係数が小さくなる点も特徴です。
12.第5章 日本におけるソルベンシー規制
“3(3)経済価値ベースのソルベンシー規制の検討と2025年度末からの導入”が新設され、直近の情報に更新されています。
なお、改訂版においても、“4(2)「経済価値ベースのソルベンシー規制」の検討”という部分があり、いわゆる「有識者会議」や「当該規制の導入スケジュール(当時の案)」などが紹介されていました。
13.第6章 その他の保険主要国・地域におけるソルベンシー規制
上述の「2.総ページ数」で触れた通り、スイスとバミューダが追加されました。
特に、バミューダの追加部分では、“参考”として、AIRとPE保険会社をめぐる監督と規制が追加されていますので、2025年7月に金融庁から公開された『保険モニタリングレポート』を包含される、非常にタイムリーな内容に仕上がっています。
14.第7章 新たなソルベンシー規制をめぐる今後の動向
“1-2”で“図表4 ソルベンシーⅡとIFRS第17号の差異等”が追加されました。
特に、IFRSを導入されている保険会社(例.大手損害保険会社等)では、実務にも役立つ情報が追加された形です。
また、“6 最後に”は、中村先生のご主張が含まれた総まとめ的内容ですが、前回の“半ページ”から“1ページ+1/3ページ”と大幅に加筆されていますので、アクチュアリー2次試験対策(特に、第Ⅱ部(論述問題))に使えるかもしれません。
いかがでしたか。以前の当コラムでもご紹介しましたが、中村先生は数学科ご出身で数学に対する造詣が深く、例えば、“複素数について(例.https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=81988?site=nli など)”のような純粋な数学コラムも同研究所ホームページ内で発表されております。いくつになっても“学ぶこころ”を常に忘れずにしたいものですね。
(ペンネーム:活用算方)
2026年07月21日 (火)
改訂箇所(ソルベンシー規制の国際動向〔第3版〕)