千葉の魅力を世界に発信したい。公認会計士として活躍しながら、千葉を拠点とした地域活性化プロジェクトを推進


生まれ育った千葉をもっと元気な街にしたい――。千葉への熱い思いから、起業家支援、就職支援、教育支援などさまざまなプロジェクトを立ち上げてきた市原さん。両立を続ける原動力、多くの人を巻き込む秘訣について、話を聞いた。

―これまでのキャリアと現在の活動について教えてください。

30歳で公認会計士になり、監査法人や税理士法人、会計コンサルティングファームでの会計監査、上場支援業務、起業家の資産運用アドバイスなどを担当してきました。公認会計士として遅いスタートなのは、20代のころはイベント人材派遣会社に経営陣の一人として参画し、まったく違う業界にいたから。「社長」に憧れて若気の至りで起業してみたものの、経営に関する知識のなさを実感し、25歳で中小企業診断士の資格を取得しました。さらに、会計をもっと勉強したいと公認会計士の資格に挑戦することに。勉強と仕事を両立させていました。

一方で、仕事と並行しながら、私がライフワークとしていることがあります。「千葉を世界一の都市にするため、産・学・官・民・メディア・金融・商店街・スポーツの8者コンソーシアムをつくる」ことです。生まれ育った千葉を活性化させたいという思いは、千葉市の市議会議員だった叔父や、千葉市で飲食店を経営する父の姿を見て育ったことに影響されているかもしれません。
監査法人1年目の30歳のとき、千葉で友達を増やして街を盛り上げたいという思いから「異業種交流パーティー☆イーチバ!」を発足。20代で培ったイベントのディレクション経験を生かし、パーティーの広報から集客、演出を担当し、さまざまな業界の人脈が一気に広がっていきました。そこから、県内のさまざまなプロジェクトの企画立案、運営にかかわるようになりました。


―これまで、どのようなプロジェクトに関わってきましたか?

2009年には、リーマンショック後に大学生の就職率が大幅に下がったことに危機感を抱き、「大学生就活応援プロジェクト」を立ち上げました。「イーチバ」を通じて知り合いになっていた千葉市の経済部長さんが、千葉市主催のプロジェクトとして動かしてくれて、私がファシリテーターとしてセミナーを開催しました。企業の研修講師をしている方や、リクルートグループの方、帝国データバンクの方など、それぞれの強みを持った方を集めてくるのも私の役割。今は間接的な関与となりましたが、当時立ち上げた事業が継続的に成長し、自己PRや企業研究セミナーの開催を通じて多くの大学生の就職に貢献出来ていることは私の誇りです。
ほかにも、県内で1000人の社長を創出しようというプロジェクト「1000leafパートナーシップ」に参加し、運営委員の一人をさせていただきました。なぜ1000人かというと、全国に19ある政令指定都市のうち、千葉市の起業家の人数がもっとも少なかったから。2番目に少ない横浜市に追いつくには1000人足りなかったため、「横浜市にだけは負けたくない」と千葉市が奮起(笑)。「千葉」の名前をとって「1000(千)leaf(葉)」と命名し、私はIPOに関するゼミ長として、セミナーを開催しました。
千葉市と市内大学が主催している「子ども起業塾」にも、アドバイザーとして毎年参加しています。この起業塾は、中学生が事業を立案し、サービスや商品の売買を学園祭などで実践したのち、決算書を提出するという本格的なものでした。私は公認会計士として決算書を監査させていただき、子どもたちの発想力やエネルギーにいつも刺激をもらっていました。


―監査法人として働きながら千葉の盛り上げプロジェクトを進める、両立の工夫と、継続するために心がけていることは?

起業支援のためのセミナーや講演活動は、就業後、平日の夕方から夜にかけて行い、異業種交流パーティーは土日に開催しています。常に何らかのボランティア活動が入っていて多忙ではありますが、「千葉を世界一の都市にする」という明確なビジョンに向けて、自分にできることをやっているだけ。大変さより、楽しさの方が大きいです。
会計士としてお客様と話をするときも、千葉のプロジェクトをさまざまな人と関わるときも、意識しているのは「相手の話をよく聞く」姿勢です。これは、「千葉ドリームプランプレゼンテーション」というビジネスプレゼンコンテストに“支援者”として携わった経験が大きく影響しています。このプレゼンのコンセプトは「大人が大きな夢を語ろう」というもので、プレゼンテーターは、数字を使わずに“思い”でビジネスプランを訴えます。それに対し、プレゼンを聞く支援者は、否定せずに思いに寄り添っていきます。普通のコンテストのように「そのビジネスの損益分岐点はどこですか?」などと詰めたりはしない。事業の実現化ではなく、夢を語りそれを周りが肯定することが目的なんです。
この経験から、会計士として経営者の相談を聞く際も「まずは耳を傾けて肯定する」ことが自然とできるようになりました。相手を否定せず受け止めることで、相手も心を開いてくれ、仕事の幅は広がっていきます。いろいろな業界、さまざまな立場の方にお会いしますので、この対人関係力はとても生きていると感じます。

―今後実現したいことは何ですか?

近いところでは東京五輪で、千葉の魅力を発信していくことですね。千葉のボランティアチームが立ち上がっており、何をどんな形でやるのかを議論中です。
千葉という都市に限定した、適度な規模だからこそ、「産・学・官・民・メディア・金融・商店街・スポーツ」を代表するメンバーが集まり、議論ができる。そして、人の出会いから新たなプロジェクトが生まれていきます。「銀行と商店街でタッグを組んで何かできないか」「大学と企業が連携してこんなプロジェクトができないか」などと話が進んでいくとき、わくわくしてエネルギーがわいてきます。千葉がもっと元気になるように、これからも活動を続けていきます。

**プロフィール**
市原伸一さん

Big4系監査法人勤務。中小企業診断士。公認会計士。イベントの人材紹介会社の立ち上げ、イベントディレクションの経験を経て、30歳で公認会計士試験に合格。監査法人、税理士法人、会計コンサルティングファームなどを経て現職。「千葉を世界一の都市にする」というミッションに向けて、さまざまなボランティア活動を並行させている。

あわせて読みたい ―関連記事―