告示48号の改正


今年5月のコラム「2021年5月6日(木) 気になるニュース(2021年4月)」の「10.標準責任準備金制度の対象契約の範囲見直し」において、“パブコメ結果が公表された際、改めてコラムで紹介できれば”と記しましたが、6月30日に金融庁から「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(以下、「パブコメ結果」という。)」が公表されました。
https://www.fsa.go.jp/news/r2/hoken/20210630/20210630.html

そこで、今回のコラムでは、パブコメ結果で気になる点や、告示48号の改正内容を理解する上で参考になる公開情報などをご紹介したいと思います。

1.誤字もそのまま掲載?

パブコメ結果(https://www.fsa.go.jp/news/r2/hoken/20210630/01.pdf)の3ページにある「No.8」の「コメントの概要」で、“(前略)しかしながら、保険料法施行規則71条1項に定めるところにより保険契約を再保険に付した場合(以下略)”という記述があり、『保険業法』が誤って『保険料法』と表示されています。

前後の文脈から、『保険料法』は『保険業法』を表すことは一目瞭然ですが、金融庁提出資料における誤字・脱字は、あってはならないものです。
たとえ、誤字などがあっても、実際の文面をそのまま掲載する方針だろうと推測されますが、事務局・ご担当者の苦労が伺えます。

2.主務官庁への言葉遣い

今回のパブコメではありませんが、標準生命表2018に関する「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」(https://www.fsa.go.jp/news/29/hoken/20170817/01.pdf)の1ページにある「No.1」の「コメントの概要」で、“(前略)しかし、これを支えるべし専門職団体たる日本アクチュアリーやモデル管理の監督を担う貴庁がこの体たらくでは(以下略)”という記述があり、『日本アクチュアリー会』が誤って『日本アクチュアリー』と表示されています。

もっとも、誤字・脱字以前の問題として、主務官庁への言葉遣いを正すところからスタートする必要がありそうですが。。。

3.マイナス金利政策への苦言?

パブコメ結果の2ページにある「No.5」の「コメントの概要」で、“(前略)邦貨建の安全率係数を見直すようだが、安全率係数が2.00%以上の場合の項目を使用したことがないと記憶しており、このタイミングで修正を加える必要はないと思う(以下略)”という記述があります。

日銀のマイナス金利政策の最大の“被害者”といっても過言ではない「生命保険会社」からの“怨嗟の声”が聞こえてきます。。。

4.費用対効果

パブコメ結果の1ページにある「No.1」の「コメントの概要」で、“(前略)再現するためにはブルームバーグからデータを購入せざるを得ない、というのはいかがなものか。(以下略)”という記述があり、また、その回答として、“(前略)一般論で申し上げれば、免許事業である保険業において、保険契約者等保護の観点から規制が創設され、その遵守費用が生じることがありますが、それを上回る効果(便益)が得られる場合においてのみ規制が正当化されます。(以下略)”という記述があります。

当該データの購入費用を含めて、業界全体として新たな制度を導入する際のやむを得ないコストは、本来誰が負担すべきか?については、様々な議論があるものと思われますが、恐らく、制度導入によって恩恵を受けるものが当該コストを負担するという、“受益者負担の原則”の下で、初めて“費用対効果”の議論が成立するのでしょう。

5.改正内容を素早く理解する方法

今回の改正に限らず、告示などの改正時には、通常、改正理由・背景などについても触れられることが多いようです。

例えば、今回の改正では、ホームページ(https://www.fsa.go.jp/news/r2/hoken/20210423/20210423.html)の「1.改正の概要」および「2.主な改正内容」において、改正理由・背景などが記述されていますので、改正内容を素早く理解する方法としては、まず、改正理由・背景などを頭に十分に入れた上で具体的な改正案をチェックするとよいでしょう。

なお、外貨建保険と聞くと常に「特別勘定」を思い浮かべる人にとっては、今回の改正を理解するために相当の時間がかかるかもしれません。

逆に、銀行窓販などで、(外貨建保険であるが)外貨建として予定利率の最低保証がある保険契約(例.https://www.smbc.co.jp/kojin/nenkin/pdf/lineup_d05_2.pdfの4ページ:“定額部分のみで、運用期間満了時には一時払保険料(基本保険金額)以上の年金原資額を外貨建で最低保証”など)をご存じの方は、今回の改正は容易に理解できるものと思われます。

6.再保険活用で有利不利?

パブコメ結果の3~4ページにある「No.8」の「コメントの概要」で、“(前略)一部の保険会社は標準責任準備金制度の適用の影響を実質的に免れ、むしろ競争環境の公正さを欠く結果となるように思われます。(以下略)”という記述があります。

具体的にどのような“競争環境の公正さを欠く結果”が導かれ得るのかが不明ですが、例えば、同じような出再条件であっても、グループ内外で出再結果が異なったり、或いは、グループ外であっても再保険会社の居住地域での会計制度などの違いで有利不利が生じるということがあるのかもしれません。

アクチュアリー試験(生保1)の教科書『第8章 再保険』で、この辺りの事情を詳しく解説いただけるとありがたいのですが。。。

いかがでしたか。当該パブコメ結果を含めて、告示48号の改正内容は、アクチュアリー試験の時事ネタの1つになるものと思われます。特に、第2次試験(専門科目)で決算・会計科目(例.保険2など)を学習される方々にとっては必須知識と言えますので、是非、熟読されることをお勧めします。

(ペンネーム:活用算方)

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