気になるニュース(2021年7月)


引き続き7月に気になったニュースを幾つかピックアップしたいと思います。
なお、内容はすべて単なる個人的な見解であり、特定の人物や団体等を誹謗・中傷する意図は全くないことを、念のため申し添えます。

1.原価とは?

自動車の原価に関するニュースですが、新車価格が200万円、卸価格が150万円の新車は、45万円程度の原材料費で製造されていると考えることができるようで、一般的に、工業製品の原材料費率はどんな製品でも30%程度に集約されるそうです。

したがって、新車価格200万円の場合、50万円がディーラーの利益(粗利)、45万円(=卸価格×原材料費率)が原材料費で、残りが105万円です。

保険料計算に、自動車の原価計算を当てはめるのは乱暴かもしれませんが、「販売費および一般管理費」の一部である「募集手数料(=営業職員、保険代理店など)」とディーラーの利益とを比較した場合、営業保険料の25%が同手数料というのはかなり高額な感じがします。

なお、ニュースの中で、『乗り出し価格』という用語が登場するのですが、初見の際、『売り出し価格』の誤植?かなと思いました。自動車業界関係者にとっては馴染みの用語のようです。

また、当該ニュースについては、別のコラム『原価とは』で詳しく扱ってみましたので、併せてご覧頂ければ幸いです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3c177c34f7fada5132522c45c7c91c61eeb2a612

2.モデル・リスクに関するレポート

モデル・リスク管理に対する金融庁の考え方を示し、金融業界におけるモデル・リスク管理実務のさらなる発展を促すことを目的として、「モデル・リスク管理に関する原則(案)」が金融庁から公表されました。
「モデル・リスク」とは、モデルの誤り又は不適切な使用に基づく意思決定によって悪影響が生じるリスクと定義されています。

また、資料中、内部監査などの社内体制(態勢)に関する記述もありますので、体制整備が上手く構築できないリスクも、モデル・リスクに含まれるのかもしれません。

なお、令和3年7月26日(月)17時まで、いわゆる、パブリックコメントが募集されているようですので、どのようなコメントが寄せられるのか非常に楽しみです。。
https://www.fsa.go.jp/news/r2/ginkou/20210625/20210625.html

3.保険負債の計算手法及びモデルに関する技術的検討、検証レポートに関する例示共有

2025年の経済価値ベースによるソルベンシー規制の本格導入に向けて、フィールドテストが実施されておりますが、2021年度からは(従来のアンケートベースではなく)保険業法第128条に基づく「報告徴求」の一環に格上げされる形(例.決算状況表などと同じレベル)で、同テストが引き続き実施される模様です。

なお、2019年度の同テスト仕様書で、「保険負債検証レポート」の提出が新設され、日本アクチュアリー会のソルベンシー検討WGにおいて、保険負債の妥当性検証の検討が行われている模様です。
金融庁から連携された様々な課題意識を踏まえて、「①保険負債の計算手法及びモデルに関する技術的検討」「②検証レポートに関する例示共有」に関する検討結果が、同WGから公表されました。

上述の「内部監査」の関与に加えて、個人的には、保険計理人がどのように関与していくのか、実務基準の改正要否など、検討事項はまだまだありそうです。
http://www.actuaries.jp/info/Z20210628.html

4.70倍の処理スピード

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一環として、現行システムを再構築して計算処理能力を大幅に向上された模様です。
アクチュアリーにとっても保険数理システムは非常に重要なシステムの1つですが、同システム自体がニュースリリース/プレスリリースに登場することは珍しいようにも思えます。

それにしても、3日間(72時間)かかっていた計算処理日数が僅か1時間程度に短縮されるのは、本当に素晴らしいですね。決算期間中など急を要する作業で大いに力を発揮することでしょう。
https://www.sbilife.co.jp/corporate/press/pdf/NR20210628_1.pdf

5.AIの活用(その1)
アクチュアリー試験「2020年度損保1問題3(2)」の公式解答によれば、(損害)保険業務へのIT技術の導入事例として、

・AI による事故画像診断・不正検知技術を活用した損害査定業務の高度化・迅速化

・機械学習によるチャットボットを利用した代理店・顧客対応、社内照会の効率化

・RPA(Robotic Process Automation)の活用による社内事務の効率化・迅速化

などの内容が挙げられています。
http://www.actuaries.jp/lib/collection/books/2020/2020I.pdf

上記の事例のうち、2つ目の「・」を具現化した顧客対応として、住友生命、メディケア生命、エクサウィザーズの3社が進めてきた共同開発サービスの第1段として「AIぴったり保険診断」がローンチされました。

なお、新聞報道によれば、お客さまの外形的な属性データ(例.年齢、性別など)に加えて、内面的な価値観把握からタイプ診断を実施した、業界初の取組みのようです。今後、第2段以降の展開が楽しみですね。
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP612578_W1A610C2000000/

6.AIの活用(その2)

三井住友海上あいおい生命が、受診相談サービス「AI受診相談ユビー」の提供を開始されました。なお、AIを用いた受診相談サービスの提供は、国内生保初のサービスのようです。
本件は、自動査定システムとの親和性、引受基準緩和型保険への展開、特定の医療機関との提携など、今後のビジネス拡大が期待できるようにも見えます。

なお、利用料は無料ですが、実質的に保険会社が負担するコストが生じたとしても、保険業法300条に定める『特別の利益の提供』には該当しないと思われます。
さらに、早期受診・早期発見により健康寿命の延伸効果も期待されますので、将来的な危険差益の増収効果で、当該コストも十分に回収できる算段かもしれません。
https://www.msa-life.co.jp/news/pdf/20210701_ubie.pdf

7.ポイント還元

ウェブによる給付金請求手続きで楽天ポイントが進呈されるサービスを楽天生命が開始されました。ウェブ上での給付金請求によるコスト削減効果等をお客さまに還元する意図があり、当該ポイントは「楽天市場」等で利用可能のようです。
https://www.rakuten-life.co.jp/about/news/210701.html

上述と同様に、給付金請求によるコスト削減効果に対する対価という趣旨からは、保険業法300条に定める『特別の利益の提供』には該当しないと思われます。

なお、商品審査事例集(https://www.fsa.go.jp/status/hoken_sinsajireishu/20200210/2002shinsajireishu.pdf)9ページに記載の通り、“基礎書類に基づいて行う場合は特別利益の提供禁止の適用除外”とありますので、例えば、事業方法書などで当該取り扱いを規定することが必要かもしれません。

また、従来の有配当保険であれば、一般的な事業費コスト削減効果は、費差配当として還元されていることが多いと思いますが、本件のように、給付金請求にウェブを利用される方を差別化するためには、費差配当の上乗せよりもポイント付与の方が管理しやすいという側面があるかもしれません。

8.第三者による保険料支払特約

生命保険契約においては、通常、保険料を払い込んで契約を継続させる権利は保険契約者が有していますが、第三者による保険料支払特約が第一生命で導入されるようです。

詳細は不明ですが、例えば、同特約を付加した場合、保険契約の解約権や解約返戻金受給権も当該第三者が有するかといった点が気になるところです。

なお、以前、同社の社長が交代される際、記念商品(?)として、契約者変更制度(バトンタッチプラン)を業界で初めて導入された記憶もあります。

既存の枠組みにとらわれず、自由な発想で新たなチャレンジを心がけるビジネススタイルは、リクルート活動などにおいても学生さん達からの評価は高いものと思われます。
https://www.dai-ichi-life.co.jp/company/news/pdf/2021_024.pdf

9.新人事制度

以前、某コンサルティング会社のヘッドをされていた方の肩書が「プリンシパル」だったと記憶しています。対象となる職種が、特定分野において高度な専門能力を有する社員のようで、高度専門人財を社内外から確保し、長期的にその専門能力を開発・発展させることが目的のようです。
アクチュアリーを含めて、優秀な専門人材が集まるきっかけとなれば良いですね。
https://www.himawari-life.co.jp/-/media/himawari/files/company/news/2021/a-01-2021-07-19.pdf?la=ja-JP

10.知名度抜群の保険外交員

大家族シリーズの代表的番組といっても過言ではない「ビッグダディシリーズ」に登場された女性が、現在は保険外務員をされているそうです。
所属保険会社は不明ですが、是非、知名度を活用してMDRT会員に就任され、ニュースリリース/プレスリリースなどに登場されることを楽しみにしております。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e27afeacccf715dddca2042b7fd5f3364e81e567?page=3

いかがでしたか。無事に東京オリンピックも開催され、新型コロナの暗いニュースを吹き飛ばしてもらえるような明るいニュースが続くことを祈念しております。

(ペンネーム:活用算方)

あわせて読みたい ―関連記事―