アクチュアリー試験のCBT移行


東日本大震災から丁度11年目の2022年3月11日に、日本アクチュアリー会から、『資格試験のCBT移行後の運営概要について』が公開されました。
当該サイトでは、『CBT移行後の資格試験の運営概要(予定)について』というPDFファイルのリンクも貼付されていますので、併せてチェックしたいですね。

そこで、今回のコラムでは、筆者自身のCBT受験経験(※)を踏まえ、アクチュアリー試験(特に、第2次試験(専門科目))を受験される方々への注意点などを幾つかご紹介いたします。

なお、内容はすべて単なる個人的な見解であり、CBT移行後の日本アクチュアリー会による運営内容と全く関係がないことを、念のため申し添えます。

※ マークシート方式による生命保険業界共通試験の受験経験であり、キーボードによる文字入力やマウスによる電卓操作は未経験です。

1.これまでの経緯

1月のコラム「2022年に起こること、起こりそうなこと」https://www.vrp-p.jp/acpedia/3310/でご紹介した通り、今年のアクチュアリー試験からCBT(Computer Based Testing:コンピューターを利用した試験)へ移行予定であることが、昨年7月に、日本アクチュアリー会から公表されました。

しかし、昨年7月時点では、

“CBT移行後の資格試験に関する情報については、今後、当会ホームページにて公表”

という記述に留まり、具体的な実施ルールなどは、別途案内される形になっていました。

2.誤変換

キーボードによる文字入力のおかげで、手首などへの負担が軽減されますが、手軽に入力できるが故に、文字が誤変換されるリスクは高まります。
例えば、「収支相等の原則→収支相当の原則」、「契約応当日→契約応答日」などは実務上でも頻出の誤変換事例ですので注意しましょう。

また、「価格(←価格変動準備金など)と価額(←契約者価額など)」、「規定と規程」、「適格と適確と的確」、「体制と態勢と耐性」などのように、同じ“よみかた”でも表記が異なるものもありますので、しっかりと使い分けしましょう。

なお、筆者が監査法人にいた頃、“体制はフレームワーク、態勢はオペレーション”という的確な説明をシニア・パートナーからいただき、深く感銘した記憶があります。

3.かな変換の活用

多くの方々は、キーボード入力時に『ローマ字入力』を利用されているものと思われますが、日本アクチュアリー会からのアナウンスによれば、『CBT 会場に用意されているもの』の中に、【標準的なキーボードの特徴】として、
・日本語入力の際に「ローマ字入力」「かな入力」のどちらも使用可能
・キートップにかな表記がある
との記述があります。

単純に考えれば、キーボードの押下回数が少ない“かな入力”の方が解答時間は早いようにも思えますが、普段の仕事などで慣れ親しんでいる“ローマ字入力”の方が入力ミスは少ないようにも思えます。

なお、いわゆる「IME(=Input Method Editorの略。入力方法編集プログラム)」の性質として、機械学習による効果があり、以前に使用・変換された文字を優先的に変換候補の上位に位置付ける機能が具備されているかもしれません。

この理解が正しい場合、例えば、試験2日目に「生保1」を受験し、そのままのキーボードで、試験3日目に「生保2」を受験した場合、「生保2」の方が(解答に使用する専門用語などが変換候補の上位にくるため)入力負荷が少なくて済むという効果も考えられます。考えすぎかもしれませんが、くれぐれも受験生の公平性などに影響が出ないことを期待するばかりです。

4.キーボード入力音に慣れる

試験会場内は静かな環境と思われますが、静かさ故に、キーボードの入力音が普段以上に気になるかもしれません。
後述の通り、耳栓の使用が認められない可能性がありますので、例えば、「キーボード入力音」を聞きながら、教科書を読んだり、キーボードで文字入力することで、雑音の中でも解答に集中できる態勢を身に着けることが効果的でしょう。

幸い、「キーボード入力音」をダウンロードできる便利なサイト(https://otologic.jp/free/se/pc-keyboard01.html)もありますので、是非、活用したいですね。

5.耳栓

上述のPDFファイル『CBT移行後の資格試験の運営概要(予定)について』に記載の“試験会場に持ち込んで良いもの”に耳栓がリストアップされていないため、耳栓が使用できるかどうかは、多くの受験生にとって関心が高い項目と考えられます。

なお、筆者が監査法人に勤務していた際、“公認会計士試験では耳栓の持ち込みOK”と聞いたことがありますので、是非、アクチュアリー試験でも耳栓の使用を認めていただきたいですね。

6.予行演習(例.生命保険協会)

筆者がCBT方式で受験した生命保険業界共通試験は、生命保険協会が主催するもので、幸い、同協会ホームページ(https://www20.prometric-jp.com/tutorial/index.html)にて、「CBTによる受験の仕方」および「CBT体験版」が活用できます。

なお、当該サイトのURLをみれば、恐らく、アクチュアリー試験と同じ「プロメトリック社」が実施するCBT方式であると思われます。
ただし、あくまでも生命保険業界共通試験用の仕様であり、アクチュアリー試験で実際に導入される内容や操作方法と同じ保証はない点にご注意ください。

7.電卓

CBT方式に移行しても、引き続き、電卓は持ち込みOKのようです。
上述の生命保険協会ホームページでの体験版にも電卓機能がありますが、正直、操作が難しいように感じました。

なお、筆者が研究会員の頃、たまたま“メモリー・キーが二つある電卓”を秋葉原で見つけて、繁分数計算なども下書き用紙を使わずに計算できたため、解答時間が大幅に省略できた記憶があります。

現在の使用可能な電卓機能に該当しないかもしれませんが、少なくとも、PC画面上でメモリーキーを操作することに比べると、“リアルな”電卓の方がはるかに操作しやすいと思われますので、受験生にとっては朗報といえるかもしれません。

8.消しゴム、ペットボトル不可

恐らく、キーボードの破損防止の観点から、消しゴム(のカス)、ペットボトル(をこぼす)が持ち込み不可になっているものと考えられます。

なお、第2次試験の論述問題の解答欄に入力している内容をコピー(カット)、ペーストすることが可能ですので、所見問題などでは予め多めに入力し、最後にまとめて推敲すれば、消しゴムがなくても解答に著しい支障を来す可能性は小さいように思えます。

9.水分補給

時期的に熱中症などは生じにくいと思われますが、マスクをつけたままであることや、室内の暖房具合などによっては、喉の渇きが気になりますね。

わざわざ水分補給のためにトイレに出向くのも時間がもったいないので、せめて、飴玉をなめたりガムをかんだりすることくらいは認めてもらえるとよいのですが。

10.フリクションペンの活用

“試験会場に持ち込んで良いもの”には、“フリクションペン等の摩擦熱で筆跡を消すことが可能なペン”がリストアップされています。
このため、例えば、メモ用紙が不足しそうな場合には、解き終わった問題で使用したメモ用紙のスペースをフリクションペンで消すことで、スペースの有効活用が図れるかもしれませんね。

11.参考ブログ

3月11日の日本アクチュアリー会からのアナウンスを踏まえて、同日にブログを更新された方がいらっしゃいました。詳しくは、以下のURLをご覧ください。
https://www.actuary0214.com/2022/03/11/598/

いかがでしたか。生命保険協会と同様に、アクチュアリー会ホームページでも、今後、CBT体験版について受験生向けの体験版が準備される模様です。引き続き、同会ホームページを定期的にチェックされるとよいでしょう。

(ペンネーム:活用算方)

あわせて読みたい ―関連記事―