気になるニュース(2022年3月)


2月に引き続き3月に気になったニュースを幾つかピックアップしたいと思います。
なお、内容はすべて単なる個人的な見解であり、特定の人物や団体等を誹謗・中傷する意図は全くないことを、念のため申し添えます。

1.DX戦略

アクチュアリー志望の学生さん達からよく聞かれる質問としては、『AIの進化でアクチュアリーの仕事が奪われるのか?』が有名ですが、『AIを現場に紹介すると仕事を奪われると勘違い。』というDX推進部長のお言葉は、現職アクチュアリーにとって心強いかもしれません。

なお、同部長は2021年4月入社のようで、適材適所にふさわしい人材がいなければ、社外からの採用も積極的に行い同社の姿勢は、激動する金融業界で当然の行動かもしれません。

特に、「人間は、明日の生活をより楽なものにするために苦労する、唯一の生き物です。トランスフォーメーションとはまさに、明日を楽にするために人間がやらなければならないことだと考えています。」というお言葉が深く胸に染みわたりました。
なお、本件記事は会員限定ですが、無料で会員登録ができます。
https://bizzine.jp/article/detail/7115

2.CXの向上

DXはデジタル・トランス・フォーメーションの略語ですが、CXはカスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)の略語です。

具体的には、顧客専用Webサイトにおいて、顧客の入力負荷を軽減するため、Webブラウザ画面上に操作ガイドを表示するSaaS型サービス「テックタッチ」が導入されました。コロナ禍で『非対面での手続き』が急速に進展していますが、このような顧客体験を向上させることで、利便性の高いWebサービスを構築し、結果的に保険契約の品質(例.保険継続率など)の向上に寄与すれば、まさに、win-win-win(お客さま-保険会社-メーカー)の関係が構築できますね。
https://it.impress.co.jp/articles/-/22771

3.営業職員制度改革

『給与安定化』と『既契約重視』がキーワードのようです。
筆者が学生時代、ファミレスでアルバイトをしていた90年代、店長が“これからは顧客ではなく固(定)客の時代だ!”と朝礼でお話されていたのが印象的ですが、30余年経過した今日、保険業界(=営業職員チャネル)にも“固(定)客の時代(=既契約重視)”が到来した感じかもしれません。

記事にあるとおり、筆者の記憶でも、明治安田生命が最も早く制度改革に動かれて、継続率重視の募集手数料体系へシフトされた記憶があります。(社長がアクチュアリーである点も非常に興味深いところですが)
いずれにせよ、『教育制度充実⇒営業実績向上⇒給与安定⇒離職率低下』という好循環をどこまで持続できるかが成功のカギと言えそうです。(個人的には、継続率データをもっと積極的に公開する保険会社が増えてほしいという気持ちもありますが)
https://diamond.jp/articles/-/297398

なお、他生保でも営業職員の給与水準を数%上昇することを目指している模様ですが、東京ディズニーランドのアルバイト時給も6年ぶりにアップされる模様ですので、アフターコロナ・ウィズコロナ下での経済成長を大いに期待したいですね。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC188600Y2A310C2000000/

4.公的保険制度解説のためのポータルサイト開設

保険大国と呼ばれて久しい日本では、民間保険はもちろん、公的保険も他国と比べて充実しているため、逆に、保険加入の際の選択を誤れば『重複加入』という事態に陥りやすいのも特徴です。
このため、公的保険の保障内容を理解したうえで、必要に応じた民間保険に加入することが重要との考えで上記のポータルサイト開設された模様です。
https://www.fsa.go.jp/news/r3/hoken/20220311.html

なお、詳細については、以下のリンク先からご覧ください。
https://www.fsa.go.jp/ordinary/insurance-portal.html

余談ですが、今年4月から成年年齢18歳に引き下げられるため、(被保険者としてではなく)保険契約者としても10代の方や高校生の方が増える可能性があります。このため、金融知識が十分ではないと思われる方々向けに分かり易い説明資料を主務官庁が自ら率先して公表されたという見方もできるかもしれません。(リンク先のサイト右上に『小学生のみなさんへ』というバナーが貼付されているのには驚きましたが。)

5.アプリで妊活・介護支援

コロナ禍による巣ごもり需要で、“妊娠を希望する人に自宅でできるホルモン検査を紹介”など、時代に沿った対応策を色々と検討される姿勢は、本当にありがたいですね。

単なる営業保険料の引き下げで勝負するのではなく、メガバンクなどの“フィービジネス”のような『収益源の多角化』は、保険業界以外でも将来的に重要な経営課題の1つになるでしょう。

それにしても、“生命保険は古くて重いシステムを抱え、データ活用で後手に回っていた”というご指摘は、全く頭の痛いところです。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB028OW0S2A200C2000000/?unlock=1

6.金融庁を”軽視”!?

免許事業者として、よほどの合理的理由がない限り、“主務官庁を軽視”することは絶対にあってはならないと思います。
一方、昨今のパブリックコメントにおける、主務官庁に対する言葉遣いの“乱れ”は、保険業界に長く身を置くものとして非常に憂慮すべき事態だと感じます。

欧米では、飲食店などへの入店に「ワクチンパスポート」が必要なケースがあるようですが、当該パスポートはスマホなどの画面表示で事足りるため、パスポートの「画像」が売買されていると聞いたことがあります。
新型コロナウイルス感染症による自主療養を保険金給付の対象とするかどうか、本当に悩ましい問題ですね。

個人的には、システム設計に元・金融庁長官が関わっているかの印象操作のような書きぶりには違和感を覚えますが、一方で、透明性の高い金融行政を行うのであれば、口頭レベルではなく、きちんと行政文書を発出して欲しいという損害保険業界の主張も十分に理解できるところです。
「新型コロナ」も「行政と業界の議論」も、ともに早く決着して欲しいですね。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/30066?utm_campaign=EDtkprem_2201&utm_content=538087&utm_medium=article&utm_source=edTKO#contd
7.ナスダック上場の無料保険

釈迦に説法ですが、念のため、保険業法を“おさらい”しておきます。
【保険業法第二条(定義)】
(前略)「保険業」とは(中略)保険金を支払うことを約し保険料を収受する保険、(中略)損害をてん補することを約し保険料を収受する保険その他の保険(以下略)をいう。
とあります。つまり、保険業に該当するかどうかは、保険料を収受するかどうかが判断材料の1つとなります。

個人情報を提供する見返りにスポンサーが無料で保証提供する仕組みのようですが、利用者にとってくれぐれも、“タダより高い物はない”という事態には陥らないようにして欲しいところです。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2203/15/news013.html#utm_term=share_sp

なお、ネット生保の立ち上げ時、“フリーランチは許さない”という信念で主務官庁から猶予期間の取り扱いについて見解を示されたことがありました。具体的には、猶予期間を利用して、申し込み月から猶予期間満了まで“保険料ゼロ円で”保障を3か月間受けるというものでした。

8.やりたいこと、なりたいもの

ケツメイシの名曲「トレイン」の歌詞には、“なりたいもの、やりたいこと”などを燃料にして「高速列車」が走るようですね。
「会社員」が第一位であることに、和田アキ子さんを始めとして著名人の方々が賛否両論を展開されておりますが、「会社員」の一人として悪い気はしません。

もっとも、アクチュアリーは専門職であり、たとえ、保険会社や信託銀行に勤務していても、一般的な「会社員」とは異なるのかもしれませんが。
https://www.dai-ichi-life.co.jp/company/news/pdf/2021_072.pdf

9.花粉症が、がんを撲滅?

がん保険の開発・改定などの従事された方々にとっては「常識」ですが、膵臓(すいぞう)がんの早期発見は困難であり、このため、致死率の高さで有名な「がん」です。

花粉症を発症していると、がんによる死亡率が約半分になるという研究結果は、保険会社にとっても大変興味深い結果ですね。
近い将来、告知項目に“花粉症ですか?”が加わり、該当者は「がん保険」の保険料が割安になる“花粉症向け優良体保険”が登場するかもしれません。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1054F0Q2A310C2000000/

10.保険金請求手続きがスマホ完結

対象は限定的(日本損害保険協会による認定)ですが、平均28日かかった支払期間が、13日程度に短縮できるのは、加入者にとってとてもありがたいですね。

インターネットによる保険販売が徐々に浸透しつつありますが、むしろ、支払場面でのインターネット活用が先行していくようにも思います。
https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/?DisplayType=1&n_m_code=123&ng=DGXZQOUB164XU0W1A111C2000000

いかがでしたか。それにしても、3月17日(木)23時36分に発生した地震には、びっくりしました。東日本大震災の計画停電は交通網維持の観点から東京23区内は対象外であったと記憶しておりますが、今回の地震では文京区など、一部の区域では停電になったようです。新型コロナウイルス感染症、ウクライナ情勢など、様々なニュースが目白押しではありますが、アクチュアリーの端くれとしては、引き続き、健全性と公平(衡平)性に配意しながら業務遂行に励んで参りたいと思います。

(ペンネーム:活用算方)

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