気になるニュース(2022年11月)


10月に引き続き11月に気になったニュースを幾つかピックアップしたいと思います。
なお、内容はすべて単なる個人的な見解であり、特定の人物や団体等を誹謗・中傷する意図は全くないことを、念のため申し添えます。

1.第7波で1700億円弱

2022年9月3日付けの当コラム『気になるニュース(2022年8月)でご紹介しましたが、新型コロナによる入院給付金支払いの勢いが止まらない模様です。
実際、“支払件数も8月の2倍近い約190万件と過去最高を更新”とありますので、以前として高水準の支払いが継続している可能性が高いものと思われます。
https://www.nikkei.com/nkd/company/article/?DisplayType=1&ng=DGKKZO66046670W2A111C2EE9000&scode=8750

なお、9月26日以降には、支払範囲の縮小が行われましたので、徐々に、支払水準は落ち着くものと思われますが、一方で、“3年間の時効完成猶予”があるため、最長で、3年先までを見据えた支払予測が必要となるかもしれません。
また、期初業績予想における入院給付金等の支払水準を3倍に見直した会社もあるようです。具体的には、
https://www.dai-ichi-life-hd.com/investor/library/kessan/2022/pdf/2022_half_phone.pdf
の8ページをご覧ください。

2.新型コロナ飲み薬の使用承認

依然として衰えをみせない、新型コロナウイルス感染症ですが、ついに、国内の製薬メーカーから飲み薬が登場した模様です。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221122/k10013900061000.html
是非、インフルエンザにおけるタミフルのような位置づけになることを大いに期待したいところですが、一方で
https://hokuto.app/post/usHqfuYtSZRVH4LloSNB
のような否定的見解もありますので、予断を許さない状況にありそうですね。

3.在宅勤務の弊害を解消

新型コロナによる在宅勤務(リモートワーク)の推進で、業務効率化(例.通勤時間の省略など)が期待される反面、直接顔を合わせることができないことによる、コミュニケーション不足が悩ましいところですね。
このような課題を解決するために、画期的な取り組みをされている保険会社が、紹介されています。
https://biz-journal.jp/2022/11/post_327228.html

特に、社長ご自身を座長とする全社プロジェクトを通じて、多様な人材の多彩な活躍を推進されることは、とても素晴らしい取り組みだと思います。流石、創業130年以上の歴史を有する会社ならではですね。なお、「コミュニケーション4」については、
https://www.nissay.co.jp/kaisha/csr/jugyoin/pdf/diversity_book2021.pdf
の5ページの右下図などをご覧ください。

4.オンライン面談導入サポート

新型コロナの影響で、生命保険を含めた金融商品の販売形態も大きく様変わりしましたが、“年間約4万件(全体の8割程度)のオンライン面談”によって、コンサルタント1人あたりの生産性を1.2倍に、また、交通費を約50%削減できた模様です。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000049.000059559.html

なお、生命保険文化センターの『2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査』188ページでは、「加入意向のあるチャネル(世帯主年齢別)」として、“インターネットを通じて”という項目が「60~64歳」までの年齢区分で比較的高い割合(約20%)を示すため、“インターネット=若者”という図式は、もはや過去のもののように思います。

5.少短に対する行政処分&新規参入

“業務改善計画終期においても保険金等の支払遅延が解消されない”事象のために、再度、行政処分がなされた事案です。
https://www.fsa.go.jp/news/r4/hoken/20220810.html
残念ながら、その後も、長期間にわたり恒常的に発生している保険金支払いの遅延について、自力解消が困難であり、今後も継続して保険金等支払遅延が発生する可能性が高いため、弁護士および公認会計士を保険管理人とする業務及び財産の管理に関する計画の作成が命じられました。
https://www.fsa.go.jp/news/r4/hoken/20220901.html

一方、タイミングよく、ペット保険事業に参入される保険会社が登場しましたので、
https://www.aflac.co.jp/news_pdf/20221111.pdf
無事にスポンサー会社が登場された模様です。
https://www.fsa.go.jp/news/r4/hoken/20221122.html
ただし、「週刊ダイヤモンド・オンライン」記事によれば、ペット保険業界自体は、決して安定した高収益のビジネスモデルではない可能性があります。
https://diamond.jp/articles/-/312634

また、同じく「週刊ダイヤモンド・オンライン」記事によれば、いよいよ、GAFAMによる金融再編も始まりそうですので、今後の動向が大いに注目されますね。
https://diamond.jp/articles/-/312992

6.生保加入率の国際比較

ニッセイ基礎研究所のレポート『世界の消費者はどの位の割合で生命保険に加入しているのか』によれば、“【図表1】生命保険加入率各国比較(2020年、2022年)”の通り、台湾、香港、タイおよびシンガポールを中心に、生保加入率が上昇トレンドのようです。
ひと昔前は、日本が米国に次いで保険大国と言われていましたが、アジア圏においても、残念ながら、成長国の違いがより鮮明になりつつありますね。

【図表1】※URL内


https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=73046?site=nli

7.国内生損保で6300人削減

Amazon, Twitter社などのリストラの動きは、世界的なニュースになっていますが、日本においても、大幅なリストラの動きがあるようです。
ただし、“サイバー保険など新種保険の開発に向け、データサイエンティストなどフィンテックに精通した人材は増やす方針”とのことですので、結局、何時の時代でも、時代に沿った“手に職のある専門人材”が重宝されるということですね。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2239W0S2A121C2000000/

8.世界初・早期すい臓がん検査登場

がん(悪性新生物)の部位別予後データで、最も悪い結果となる「すい臓がん」ですが、これは、早期発見の難しさが原因と言われています。
今回、世界初となる「早期すい臓がん検査」が登場したことで、同がんについても、早期発見・早期治療が推進すれば、健康寿命の延伸が大いに期待されますね。

ただし、PCR検査を受け続けて一攫千金を狙った医療保険(入院給付金)と同様に、早期のがんを発見できる技術が進歩するほど、がん保険、がん保障付き団体信用生命保険などにおける危険差益の悪化も懸念されるところです。
そのうち、“終身がん保障”がなくなる日が、そう遠くないかもしれません。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000090131.html

9.国内InsurTech市場

生命保険領域における国内InsurTech市場に関する調査が公表されました。
具体的には、2024年度における「国内InsurTech市場規模推移・予測」として、3,180億円規模になる見通しで、2017年度の約5倍の規模に達する見込みです。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3112

新型コロナによる非対面募集など、InsurTech市場にとっては“追い風”の側面も期待できますが、一方、“保険加入のために新しいこと(例.歩数計測など)に取り組む”ことへの負担感をいかに軽減するかが、成功のカギといえるかもしれません。

いかがでしたか。毎年11月は日本アクチュアリー会の年次大会が行われますが、新型コロナの影響で、一昨年および昨年と同様、1日(今年は11月4日(金))のみの開催となりました。

今年は特に、将棋の羽生善治氏による基調講演がとても印象的でしたが、1983年の広中平祐氏の特別講演「数学とわたし」を思い出しました。実は、「数学とわたし」というタイトルは元上司が命名されたようですので、論文以上に(失礼!)、基調講演を毎年楽しみにしています。

 

(ペンネーム:活用算方)

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