システムエンジニアからアクチュアリーに転向。IFRS導入をはじめ、新たな分野への挑戦を続ける


プロフィール

松原孝太(まつばら・こうた)さん

ライフネット生命保険株式会社

数理部部長 日本アクチュアリー会 正会員

 

【What‘s ライフネット生命保険株式会社】

営業職員をなくした直販のネット生命保険として “お客さま視点の新しい保険会社”を目指し2008年5月に開業。「正直に わかりやすく、安くて、便利に。」という経営理念を掲げ、日本初めて、生命保険の手数料部分「付加保険料」と原価部分「純保険料」の比率を全面開示した。(※2018年4月時点 ライフネット生命調べ)

 

―松原さまがアクチュアリーを目指したきっかけから教えてください。

 

社会人のファーストキャリアはシステムエンジニアでした。大学は商学部で文系出身でしたが、もともと算数も数学も好きでしたし、SEとしてシステム導入に向けて試算する仕事が好きでした。「いつか数学的な考えを使う職業に就いてみたい」と思っていました。

 

そこで、日本アクチュアリー会が主催していた、学生向けのセミナーに参加してみたところ、思っていた以上に“数学を使う仕事”であることに、強く興味を引かれました。まずは資格取得を目指して勉強を始めよう、資格がとれたら向いているということなのでは…と考え、早速、動き出すことに。SEの仕事を続けながら1年間、平日・土日かかわらず必死で勉強を続けました。

すると、初めての試験で、生保数理を含む2科目で合格できたんです。高校3年の数学Ⅲ・Cからのスタートだったので、なかなか遠い道のりでしたが、少し自信が生まれました。

勉強しながらも「本当に算式を組み替えたりしながら保険料を計算するんだ…」と、直接的に数学と仕事が結びついていることを実感し、やりたかった仕事だと思えましたね。

そこから、アクチュアリー職を目指して保険会社に転職しました。

 

―ライフネット生命保険を選んだ理由とは?

 

2社の保険会社を経て、2013年にライフネット生命保険に入りました。

ライフネット生命保険のことは以前から知っていて、わかりやすく、安くて便利な商品・サービスを提供するという経営理念に共感していました。いつか働けたらいいなと思っていたら、ちょうどアクチュアリーの募集があり、タイミングに恵まれ入社に至りました。

実際に、「家族や友人におすすめできる保険を届けよう」という想いが社内に浸透していて、プロダクトを信頼できるところがライフネット生命の良さだなと思っています。

 

―現在の仕事内容を教えてください。

 

数理部の部長として、数理に関する業務を担当しています。

商品数理(商品開発のための保険料の算出)から、保険業法による会計決算、責任準備金の計算、EV(エンベディッド・バリュー)の算出、保険リスクの測定として経済価値ベースのソルベンシー規制の対応もしています。

さらに、当社では2023年度からIFRS(国際財務報告基準:International Financial Reporting Standards)の任意適用を考えています。新たな会計基準に沿った業務システムを導入し、会計を遂行できるようにしていくのがIFRSプロジェクト。全体を取りまとめるプロジェクトマネージャーとして経理部や経営企画部など他部署のメンバーとの連携も多く、経営戦略に携われる面白さがあります。

 

―現在の仕事を通じて、やりがいを感じるときとは?

 

まさに今進めているIFRSプロジェクトでは、「こんなに素晴らしい案件に携われてよかった」と日々思っています。

 

そもそも、現行の日本基準の会計だけでは当社の実態を適切に表すことが難しいという側面があります。例えば広告費用等の投資をして契約を多く獲得しても、お客さまからいただける保険料は長期にわたります。すると、先行投資分だけ、会計上は赤字になってしまう。本当はきちんと収益を得て成長しているのに、会社の実態を伝えづらいもどかしさがあります。

IFRSは、そうした実態に沿った収益を提示できる会計制度になっており、IFRS導入によって、これまでの課題が解決できると考えています。会社にとって価値あるプロジェクトをリードできるのはうれしいことだなと思います。

 

―ライフネット生命保険でアクチュアリーとして働く面白さとは?

 

2023年度には団信事業に参入し、IFRSを導入する予定です。その先には、2025年度導入予定の経済価値ベースのソルベンシー規制導入もあります。新たな分野の仕事にも、手を挙げれば任せてくれる風土がありチャレンジできるところが、当社の魅力でしょう。人数も少ないので、会社全体の経営方針や戦略にかかわる機会も多いです。

 

社内には明るいメンバーが多く、コミュニケーションが活発なところも、働きやすさにつながっています。業務外で部活もあり、私はテニス部に所属中。他部署のメンバーとの接点が生まれ、社内の雑談も増えているなと感じます。

―ライフネット生命保険で活躍しているアクチュアリーの特徴とは? どんな方と一緒に働きたいですか。

 

独立系上場企業としてステークホルダーが多様なので、相手の立場に応じて「伝える力」は重要です。社内の経営陣や外部の投資家などに決算数値の説明をする際に、アクチュアリー同士で通じる難しい用語だけでは伝わりづらいこともあります。複雑な保険決算の内容をどう分かりやすく話すべきか。それを考えることが、当社のアクチュアリーに必要な力だと思います。

 

また、当社はまだまだ規模の小さいベンチャーなので、自分で仕事を見つけて解決していく姿勢がとくに求められるでしょう。一人に与えられる裁量が大きく、スキルを身に着けていかないと仕事は回ってきません。正会員に向けての試験勉強はもちろん、IFRSなど必要な会計基準についてコツコツ勉強できる方が向いていると思います。

 

―今後のキャリアで目指したいこと、実現したいことはありますか。

 

IFRSも新たな経済価値ベースについても勉強を続け、海外動向もインプットしていきたい。知識の幅を広げ、携われる仕事の分野をさらに広げていきたいです。

また、数理に関することだけでなく会社全体の会計・財務に精通した人材になりたいと考えています。

また、保険料は安ければお客さまにとって喜ばしいことではありますが、やはり会社の健全性を確保は必要でありこのバランスは簡単ではありません。しかし、「正直に わかりやすく、安くて、便利に。」という当社のマニフェストのとおり、会社をさらに成長させ、健全性を確保した上で保険料を安くしてより多くの方に保障をお届けできるようにしていきたいという思いは持ち続けています。

 

―最後に、アクチュアリーやアクチュアリーを目指す方に向けて、メッセージをいただけますか。

 

アクチュアリーは、勉強したことがダイレクトに仕事に結びつく職業だなと感じています。理論的な知識が日々の仕事に役立つので、勉強すること、学ぶことが好きな人には最適な仕事なのでは、と思います。

 

当社の数理部にはアクチュアリーが5人いますが、うち3人は文系出身で、私のようにほかの職種からジョブチェンジした人もいます。数学一筋で勉強してこなかったとしても、アクチュアリーにチャレンジすることは十分できます。今から目指そうと思っている方も、可能性を信じて頑張ってください!

 

 

 

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