今昔物語(ソルベンシー・マージン基準編)


ソルベンシー・マージン基準は、保険業界に定着していますが、その歴史を振り返ると、要所要所で様々な改定がなされてきました。

一方、アクチュアリー2次試験の教科書である「保険2(生命保険)第6章 ソルベンシー(平成23年6月作成)」は、古びた感が否めず、例えば、6-58ページにある様式は、各種項目は最新ではなく、そもそも、リスク量の計算式の誤りなど、正直、テキスト委員会としては、もう少し正確な教科書を執筆して欲しいと切に願うばかりです。

そこで、今回のコラムでは、ソルベンシー・マージン基準について、導入当初と最新の規定を比較しながら、アクチュアリー試験勉強にも役に立つ内容をご紹介いたします。

1.生命保険必携(財経詳報社)
私が初めて保険会社に就職した際、人事部門から『生命保険必携(財経詳報社)』という書籍が配布されました。当時は、まだ、保険業法がカタカナ表記でしたので、「随分と古い資料だなあ。」と漠然と感じていたのですが、これが最新版ということを教わり、大変驚いた記憶があります。
出版元の財経詳報社は、保険実務に関する書籍を数多く刊行されており、同社刊行の『図説 日本の生命保険』では、営業保険料の分解や、3種類の予定事業費枠など、アクチュアリー試験勉強にも役立つ内容となっています。
残念ながら、『生命保険必携』は1996が、また、『図説 日本の生命保険』は平成9年版がそれぞれ、最終版となっています。
古書店などで見かけた場合には、是非購入して手元に置いておきたい書籍ですね。

2.生命保険関連法規集(生命保険法規研究会)
生命保険必携の姉妹品として刊行された感じですが、出版元は『生命保険法規研究会』となっていて、財経詳報社ではないようです。
生命保険に関係する法令等はもちろん含まれていますが、決算状況表の様式など、実務担当者にとって非常に役立つ内容となっていまして、生命保険必携より分厚い体裁になっています。

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3.保険業法の比較
ソルベンシー・マージン基準の導入当初の保険業法と最新の保険業法を比較すると、下表のようになります。

導入当初 最新
保険業法第130条 (健全性維持のための措置)
大蔵大臣は、保険会社の資本、基金、準備金その他の大蔵省令で定めるものの額の合計額、引き受けている保険に係る保険事故の発生その他の理由により発生し得る危険であって通常の予測を超えるものに相当する額として大蔵省令で定めるところにより計算した額その他当該保険会社の財産の状況等を勘案し、適切な改善措置を講じなければ経営の健全性を損ない保険契約等の保護にかけることとなるおそれがあると認めるときは、当該保険会社に対し、措置を講ずべき事項及び期限を示して、経営の健全性を確保するための改善計画の提出を求めることができる。
2 大蔵大臣は、前項の規定により提出された同項の改善計画の内容が不十分であると認めるときは、当該保険会社に対し、期限を示して、当該改善計画の変更を命ずることができる。
(健全性の基準)
内閣総理大臣は、保険会社又は保険会社及びその子会社等に係る次に掲げる額を用いて、保険会社の経営の健全性を判断するための基準として保険金等の支払能力の充実の状況が適当であるかどうかの基準を定めることができる。
一 資本金、基金、準備金その他の内閣府令で定めるものの額の合計額
二 引き受けている保険に係る保険事故の発生その他の理由により発生し得る危険であって通常の予測を超えるものに対応する額として内閣府令で定めるところにより計算した額

 

なお、導入当初は、マージンとリスクの比率をとって「ソルベンシー・マージン比率」としての概念はなく、単に、マージンとリスクを計算して提出するという枠組みでした。
さらに、ソルベンシー・マージン比率自体が開示されたのは、導入から1年後の平成9年度決算からですが、これは、平成9年4月の日産生命に対する業務停止命令が発動されたことが開示の一要因になっている模様です。

4.保険業法施行規則の比較
上述と同様に、保険業法施行規則についても、導入当初と最新の条文を比較すると、下表のようになります。

導入当初 最新
保険業法施行規則第86条 (健全性維持のための措置に用いる資本、基金、準備金等)
法第百三十条第一号に規定する保険会社の資本金、基金、準備金その他の大蔵省令で定めるものの額は、次に掲げる額とする。
一 資本の部の合計額から利益又は剰余金の処分として支出する金額(相互会社にあっては、翌事業年度に社員に対する剰余金の分配として支出する額を含む。)を控除した額
二 法第百十五条第一項の価格変動準備金の額
三 第六十九条第一項第三号の危険準備金又は第七十条第一項第二号の 異常危険準備金(中略)の額
四 貸倒引当金(債権償却特別勘定及び特定海外債権引当勘定を除く。)の額
五 保険会社が有する取引所の相場のある株式については、時価と帳簿価額の差額に大蔵大臣が定める率を乗じた額
六 保険会社が有する土地については、時価と帳簿価額の差額に大蔵大臣が定める率を乗じた額
七 その他前各号に準ずるものとして大蔵大臣が定めるものの額
(健全性の基準に用いる単体の資本金、基金、準備金等)
法第百三十条第一号に規定する資本金、基金、準備金その他の内閣府令で定めるものの額(中略)は、次に掲げる額から繰延税金資産(中略)の不算入額として金融庁長官が定めるところにより算出した額を控除した額とする。
一 資本金又は基金等の額(貸借対照表の純資産の部の合計額から剰余金の処分として支出する金額(保険会社である相互会社にあっては、社員配当準備金に積み立てる金額を含む。)、貸借対照表の評価・換算差額等(中略)の科目に計上した金額、法第百十三条前段の規定により貸借対照表の資産の部に計上した金額及び繰延資産として貸借対照表の資産の部に計上した金額を控除した額をいう。)
二 法第百十五条第一項の価格変動準備金の額
三 第六十九条第一項第三号又は第七十条第一項第二号の二の危険準備金の額
三の二 第七十条第一項第二号の異常危険準備金(中略)の額
四 一般貸倒引当金の額
五 保険会社が有するその他有価証券については、貸借対照表に計上した次に掲げる額であって税効果会計適用前のものの合計額に金融庁長官が定める率を乗じた額
イ その他有価証券評価差額金の科目に計上した額
ロ 繰延ヘッジ損益の科目に計上した額(以下略)
六 保険会社が有する土地(海外の土地を含む。)については、時価と帳簿価額の差額に金融庁長官が定める率を乗じた額
七 その他前各号に準ずるものとして金融庁長官が定めるものの額
2 前項第六号中「時価」とは、保険金等の支払能力の充実の状況を示す比率の算出を行う日の適正な評価価格に基づき算出した価額をいう。

 

いかがでしたか。
言うまでもなく、ソルベンシー・マージン基準はアクチュアリー試験 (特に、生保2)の重要な論点ですが、一方で、最新版の情報に基づく解答作成も必要となります。

その昔、主務官庁(の関連団体)が冊子を刊行して免許事業者に購入させるとは「ケシカラン」と、某新聞社が記事にした記憶があります。

しかし、実務担当者としては、たとえ有料であっても、法令等がコンパクトにまとまっている冊子は、スムーズに業務遂行するためにとても有用です。是非とも、令和版の『生命保険必携』の復刊を強く望みます。

(ペンネーム:活用算方)

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