経済価値ベースのソルベンシー規制(以下「新制度」)がスタートしますが、それに呼応して、『保険会社の保険計理人の実務基準(および同解説書)』も改正され、2025年度決算より適用されます。
そこで、当該改正のうち主要論点を列挙して、アクチュアリー実務はもちろんのこと、アクチュアリー試験対策(生保2等)にも役立つような内容をご紹介いたしましょう。
1.「財産の状況」⇒「事業継続基準」
保険業法施行規則第79条の2第1号において「財産の状況」という文言がなくなったことによる修正です。
具体的には、「3号収支分析」および「ソルベンシー・マージン比率の確認」が保険計理人の確認業務とされていましたが、後者が当該業務から関与業務に移行されたことに起因するものです。
2.「3号の2収支分析」⇒(削除)
いわゆる「解約控除」のうち、どの程度が「マージンとして算入できるか?」を特定するための将来収支分析でした。
上述の通り、「ソルベンシー・マージン比率の確認」が保険計理人の関与業務に移行されて、保険計理人意見書から削除されたことに起因するものです。
3.「特定負債性資本調達手段に係る経過措置」←新設
新制度移行時に残存する特定負債性資本調達手段について、3号収支分析において自己資本への算入制限の対象外とする経過措置を設定するものです。
なお、「特定負債性資本調達手段」とは、負債性資本調達手段のうち、利払の義務が非累積型(延期された利払を行う必要がないもの)又は累積型(延期された利払が累積し、翌期以降において当該利払を行う必要のあるもの)のものであって利払の義務の延期に制限がないものです。(←大蔵省告示第50号第1条第6項)
4.「1号収支分析(1-2)」、「1号収支分析(2-2)」⇒(削除)
長期収支分析が廃止されることに伴うものです。
なお、改正後の「1号収支分析」の分析期間は、「将来10年間」から「少なくとも将来10年間」に改正されました。
5.「ソルベンシー・マージン基準維持」⇒「健全性維持」
新制度の導入で、従来の「ソルベンシー・マージン基準」が廃止されたことによるものです。
なお、「健全性維持」の具体的な計算方法等は、解説書を含めて明記されておらず、保険計理人の判断に委ねられています。
6.「健全性の確認方法の選択肢として、ESRを用いた方法」←新設
従前の実務基準では、公正・衡平な配当の確認において、『翌期配当所要額≦配当可能財源-健全性維持に必要な額』という大小関係が求められています。
上記のうち、『健全性維持に必要な額』について、新制度のソルベンシー・マージン比率を用いた確認ができることが追加されています。
ただし、この場合は、その旨を附属報告書に記載する必要があります。
7.「ソルベンシー・マージン基準の確認」⇒(削除)
上述の通り、「ソルベンシー・マージン比率の確認」が保険計理人の関与業務に移行されて、保険計理人意見書から削除されたことに起因するものです。
8.「規則第87条第3号に定める額」⇒「保険計理人が定める資産運用リスク相当額」
上述の通り、「ソルベンシー・マージン比率の確認」が保険計理人の関与業務に移行されて、保険計理人意見書から削除されたことに起因するものです。
具体的には、「資産運用リスク相当額」について、「保険計理人が定める額」へ変更するものです。
なお、当該額については、解説書で「価格変動準備金積立限度」等を使用できる旨が記載されています。
9.「ソルベンシー・マージン総額」⇒「適格資本」
保険業法施行規則の改正(例.第86条等)に伴い、「適格資本」という用語が新設されたことに伴うものです。
なお、「適格資本」は、Tier1およびTier2から構成されますが、Tier1とTier2の区別の考え方は、それぞれ以下の通りです。
特に、アクチュアリー試験(生保2)問題2あたりで出題可能性が高いように思います。
・Tier1適格資本:ゴーイング・コンサーン・ベース及び清算時の双方において損失を吸収する資本調達手段並びに資本調達手段以外の資本要素等
・Tier2適格資本:清算時にのみ損失を吸収する資本調達手段及び資本調達手段以外の資本要素等
余力があれば、以下の資料も参照されると良いでしょう。
「経済価値ベースのソルベンシー規制の概要(2024年10月31日)」
https://www.fsa.go.jp/news/r6/hoken/20241031/00.pdf 4ページ
「保険会社向けの総合的な監督指針」
https://www.fsa.go.jp/news/r7/hoken/20250723/17.pdf 30~32ページ
いかがでしたか。1996年に導入された「ソルベンシー・マージン基準」は幾度にわたって改正されてきました。当該改正の集大成と言うべき『経済価値ベースのソルベンシー規制』の導入で、保険会社の健全性およびアクチュアリーの存在意義が益々向上することを祈念いたします。
(ペンネーム:活用算方)