固定給の生保営業職は成立するか?


生命保険会社に関するニュースとして、平成の最後は『法人向け節税商品』、そして、令和の最初は『不適切募集』かもしれません。

今回、『不適切募集』を指摘された生命保険会社の特徴としては、
・ 製販分離(商品開発と保険販売が別法人)
・ 固定給割合が高い募集人給与体系
・ 主力保険が貯蓄性商品
といった点が挙げられます。(一部、筆者の推測を含みます。)

そこで、今回のコラムでは、『固定給の生保営業職は成立するか?』という観点から、思うところを記してみましょう。

1.固定給 vs フルコミッション
最近のニュースでは、新入職員に対する報酬として、くら寿司がNECが1,000万円を、また、NTTが1億円を募ったりと、何とも景気の良い話が聞こえてきますが、当然、高額報酬に対するプレッシャーはあるだろうと思われます。
見方を変えれば、潤沢な報酬のおかげで、寝食を忘れて仕事に没頭できる側面もありますし、『まず隗より始めよ』のように、高額報酬に釣られて、より優秀な人材が集まってくるという効果も期待できるでしょう。もちろん、企業にとってはCM効果もあります。
生命保険の営業職については、(高額の)固定給を導入するようなものであり、殆どの経営者から見れば、『無謀な』方策と言えるのかもしれません。
しかし、安定した報酬を得るからこそ、目先のノルマに束縛されず、真にお客様にとってメリットのある提案ができる余地があるでしょうし、対極にある『フルコミッション』は、やはり、ノルマ重視の営業スタイルにならざるを得ないと思います。

2.超低金利下での養老保険
日銀のマイナス金利政策で、一番割を食らっているのが、養老保険を中心とする生命保険会社でしょう。払込保険料総額と満期保険金額の関係でみれば、110万円を支払って100万円をもらうような感じで、いわゆる、“元本割れ”の保険を売ろうとするものです。
もっとも、全期前納の仕組みを用いて、実質的な利回りがプラスになるように販売場面では色々と工夫されているのかもしれませんが、ネット生保など、純粋な掛け捨て保険の保険料で低廉なものが登場する時代においては、保険加入は保障に特化した方が得策かもしれません。
加入限度額という縛りがある中では、“限度額”を食ってしまうような保障性の強い商品はなかなか販売しにくいのかもしれませんが、逆ざやを誘発させない観点からも、保障性商品の販売に注力した方が良いでしょう。

3.保険の売り方
ネットニュースをみて、唖然としたのですが、販売員の苦情として、

“「相続話法」も常とう手段で、相続税や贈与税などの話をして節税目的の加入を促す。だが、社員は(中略)の資産しか把握していない場合が多く、銀行預金や土地などを含めた資産全体での節税には意味がないという。”

“この保険に入ると相続のときに有利になりますよ”

という声があるようです。

しかし、相続人が死亡保険金を受け取る場合には、死亡保険金に対する非課税枠(=500万円×法定相続人数)がありますし、法人向けという意味では、養老保険を用いたハーフタックスプランもあります。
したがって、節税話法で先輩たちが営業するのがケシカランというのは、不勉強も甚だしいところです。
過度なノルマはもちろん許されるものではないのかもしれませんが、税金の知識など、保険周辺の知識もしっかりと身に着けて営業して欲しいと願うばかりです。

いかがでしたか。一罰百戒という言葉の通り、41の保険会社を少数精鋭の主務官庁メンバーが効率的に監督するためには、今回の事案がお手本になるのかもしれません。しかし、昨年4月24日(火)のNHK『クローズアップ現代』で放送された内容(https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4121/index.html)が、何故この時期に焦点が当たるのか?という素朴な疑問は、残念ながら残ったままです。参議院選挙との関係を取り立たす一部報道もあるようですが、真相は闇の中です。

(ペンネーム:活用算方)

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