商品毎収益検証のExcelファイル


例年、アクチュアリー試験の資格試験要領が7月初めに日本アクチュアリー会から公開されますので、そろそろ本格的に試験勉強をスタートする受験生も少なくないかもしれません。

そこで、今回のコラムでは、第2次試験(専門科目)の生命保険(生保1)の教科書『第10章 商品毎収益検証』に登場する「付録1 表6 保険年度単位のモデルのキャッシュフロー」について、各項目を計算する上でのポイントをご紹介いたしましょう。

1.PMなど
PM(プロフィットマージン)、BEY(投資回収年度)およびIRR(内部収益率)は、代表的な収益指標ですが、試験対策としては、具体的に計算できるようにしておくことも重要なスキルとなります。
また、Excelファイルでは、PMおよびIRRについては、定義通りに計算式を組んだり、専用の関数を用いれば比較的簡単に計算ができます。

一方、見た目は単純に判定できるのですが、Excelファイル上で意外と難しいのは、BEYかもしれません。
教科書50ページに記載の通り、“利益の終価がプラスに転じ、その後もプラスであり続ける場合の、そのプラスに転じる最初の年度”が定義ですが、具体的にExcelファイルで計算する場合、“利益の終価”の符号が最初に変わる年度を特定する仕組みが必要となります。

2.キャッシュフロー_保険年度単位
以下の3.以降に登場する各項目の計算結果を集計してキャッシュフローを計算する必要がありますが、各項目の計算自体がうまくいけば、キャッシュフロー自体の計算はそれほど難しくないでしょう。
ただし、アセットシェアの計算については、教科書の計算式を正確に再現(例.利息を付与するタイミングなど)することに注意しましょう。

3.保険料収入
教科書102ページに予定利率別の保険料(純保険料、営業保険料)が記載されておりますので、計算基数を含めた営業保険料の計算式の妥当性をチェックすることからスタートしましょう。
なお、教科書101ページに記載のとおり、“年払保険料=月払保険料×12”となっている点も注意しましょう。
また、継続率(残存率)に応じて、保険料収入は経過とともに減少しますが、その際、継続率は解約失効率に加えて(選択効果反映後の)死亡率も加味する必要がある点にも注意しましょう。

4.運用収益
教科書から直接読み解くことは容易ではないかもしれませんが、運用収益が3つの要素から構成されることをまず理解する必要があります。
具体的には、純保険料、責任準備金および死亡保険金です。
なお、死亡保険金については、年央支払することによる当該金額の半年分の利息が稼げないという点で、マイナスの効果をもたらします。

5.死亡給付
死亡保険金額に死亡率を乗じたものが死亡給付となります。
継続率(残存率)に応じて、死亡保険金額は経過とともに減少することと、死亡率は予定死亡率に選択効果を乗じたものであることに注意しましょう。

6.解約返戻金
計算基礎率が(責任準備金ではなく)保険料計算基礎率であることと、解約控除が経過とともに減少することがポイントになります。
なお、教科書101ページの解約返戻金率の計算式にあるとおり、将来の収入現価の計算上、純保険料は(営業保険料と同様に月払基準の12倍ではなく)年払基準で計算されることにも注意しましょう。

7.事業費
教科書101ページにある新契約費などの事業費を素直に反映すればそれほど難しくないでしょう。
ただし、保険料比例の事業費(維持費の一部)については、経過とともに保険料が減少するため、当該事業費も減少する点に注意しましょう。

8.責任準備金
計算基礎率が(保険料ではなく)責任準備金計算基礎率であることと、保険料払込が有期払込であることがポイントになります。
なお、解約返戻金率と同様に、教科書101ページの計算式にあるとおり、将来の収入現価の計算上、純保険料は(営業保険料と同様に月払基準の12倍ではなく)年払基準で計算されることにも注意しましょう。

いかがでしたか。
今回のコラム作成にあたっては、初の試みとして、VRPパートナーズの大谷様のご好意により、実際に計算結果を再現したExcelファイルもダウンロードできるようにしておりますので、是非、ご活用いただければ幸いです。cash flow※ここをクリック下さい。

なお、当該ファイルのご利用は、あくまでも自己責任で使用いただき、計算内容および利用結果などにより生じた如何なる損害も補償されない点を何卒ご了承ください。
また、BEYの計算で、教科書の定義では“利益の終価”の符号を使用していますが、当該ファイルでは便宜上、“利益の現価”を使用している点もご容赦ください。

(ペンネーム:活用算方)

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