アクチュアリー試験勉強の始め方


“一年の計は元旦にあり”という諺のとおり、年末年始は1年を振り返り、将来の計画を立てる絶好の機会ですね。

そこで、今回のコラムでは、アクチュアリー試験を初めて受験される方や受験経験が浅い方を中心に、どのように勉強を始めればよいか悩んでいる方に向けて、幾つかアドバイスしたいと思います。

なお、これまで、アクチュアリー試験対策に関するコラムを何度かアップさせていただいておりますので、余力があれば、過去のコラムを並行してお読みいただけますと幸いです。また、筆者の知識や経験が限られているため、過去のコラムと内容が(一部)重複する面があることも何卒ご容赦ください。

1.受験理由の明確化

“カンバン”で有名なトヨタ自動車は、“カイゼン”でも有名です。問題が生じた場合、常に、“5つのwhy(ナゼ)”の精神で分析する(https://hp.athuman.com/costdown/column/316/ )というものですが、アクチュアリー試験にチャレンジする場合も、“何故、自分はアクチュアリーになりたいのか?”について、最低限5つの理由を明確にしておく必要があります。

ちなみに、勤務先の後輩が、某アクチュアリー試験対策講座を受講した際、講師から、“モテたい理由でアクチュアリーを目指すのもアリだ”という言葉をいただいたようで、ニコニコしながら出社してきたのがとても懐かしいです。
もっとも、異性からモテモテなアクチュアリーは(自分自身を含めて)極めて稀だと感じますが。。。

2.勉強時間の確保

LEC司法試験講師で有名な柴田先生によれば、社会人が仕事をしながら1週間に確保できる時間は30時間が限界だそうです。新型コロナウイルス感染症による在宅勤務で通勤時間が勉強時間に充てられますので、最近は、もう少し多めに学習時間が確保できるかもしれませんね。
いずれにせよ、まず、Excelファイルなどで自分の週間スケジュールを記録して、どのくらいの時間が確保できるのかを知ることからスタートしましょう。

なお、柴田先生のガイダンス動画が無料で閲覧できます。(https://www.youtube.com/watch?v=27EVbEzdf1w
“暗記は最小限”、“科目の壁を横断して理解”など、アクチュアリー試験対策に通じる内容もありますので、カリスマ講師の話し方も含めて、余力があれば御覧ください。

3.受験科目の特定

初めてアクチュアリー試験を受験される方は、「数学と損保数理」、「生保数理と年金数理」といった具合に、相性の良い科目、つまり、学習内容に重複が多く効率的に学習できる科目をペアにして受験されるとよいでしょう。

なお、第2次試験(専門科目)では、3つのコース(生保、損保、年金)に分かれますので、第1次試験(基礎科目)を受験する段階から、将来どのコースで受験するのかを明確にしておくのも重要です。
例えば、将来、生命保険コースを受験される方は、最近の生保数理で出題範囲外となっている、教科書(下巻)第10章~第11章(剰余の分析・還元)と、生保1の『第3章 アセット・シェア』や生保2の『第3章 契約者配当』を比較しながら、研究会員の段階から、利源分析や社員・契約者配当に関する知識をもってアクチュアリー実務に励めば、先輩アクチュアリーから一目置かれるかもしれませんね。

4.教科書の購入

言うまでもなく、「資格試験要領」に掲載されている教科書は必ず買いましょう。
なお、例年7月1日頃に同要領が日本アクチュアリー会ホームページで公開されますが、今すぐ学習開始するのであれば、昨年の同要領に記載の教科書を準備するとよいでしょう。

また、勤務先などで先輩アクチュアリーから合格済の教科書を譲ってもらうのも悪くありませんが、できれば、自分専用の教科書を常に手元に置くようにすれば、徐々に愛着も湧いてくると思います。
なお、教科書に改訂がある場合、例年2月頃には案内されますので、1月下旬くらいから同会ホームページを細目にチェックする習慣をつけるのもよいでしょう。

5.参考書の購入

アクチュアリー試験のうち第1次試験(基礎科目)については、資格試験要領に『「第2次試験を受けるに相当な基礎的知識を有するかを判定」という趣旨から、出題範囲は教科書に限定』とありますので、無理して参考書を買う必要はないでしょう。

一方、第1次試験(基礎科目)については、資格試験要領に『「実務上必要な専門的知識および問題解決能力を有するかを判定」という趣旨から、専門的知識は教科書・参考書を中心とし、問題解決能力はアクチュアリーの役割および時事問題も出題範囲に含める』とありますので、必ず参考書を買いましょう。

なお、第1次試験(基礎科目)については、数学を中心にして、市販の書籍が幾つか刊行されていますが、あまり深追いし過ぎず、教科書や過去問に出ない演習問題などを探す程度に留めておくのが無難でしょう。

6.情報源の確保

SNSを中心とするネットワークがかなり構築されていますので、少なくとも、アクチュアリー試験に関して情報源に困ることはないでしょう。
ただし、第2次試験(専門科目)を受験される場合は、日本アクチュアリー会ホームページはもちろんのこと、金融庁(例.保険商品審査事例集など)や生命保険協会などの関係団体のホームページも随時チェックしておくことが必須と思われます。

なお、個人的には、“アクチュアリーの練習帳”で有名な、坂本嘉輝氏から教えていただいた、“第2次試験(専門科目)のうち、生命保険コースの時事問題対策は、『インシュアランス生命保険統計号(保険研究所)』の「主要概況」を数年分読んで、生命保険業界の動きをつかむのが効果的”というお言葉が、いまだに心に残っております!

7.勉強計画を立てる

2.でも記しましたが、自分の週間スケジュールを記録して、どのくらいの時間が確保できるのかを知ることができれば、いよいよ、具体的な勉強計画を立てることになります。例えば、生保数理の教科書にある練習問題のうち、出題範囲になっている「章」の問題は280問くらいありますので、仮に、毎日1問ずつ取り組んでも軽く1年程度かかります。
また、計画作りで意外と重宝するのが、“日割り勉強”、つまり、教科書のページ数を単純に勉強予定日数で割って、一日当たりの学習量を決定するというものです。

なお、年間計画を立てる場合は、祝日の取扱いに注意しましょう。例えば、休息日、スケジュール遅延の場合の予備日、逆にスケジュール通りに進んだ場合のご褒美日等々としておけば、心理的な負担も軽減されると思われます。
もちろん、計画自体を適宜見直して、“ムリ・ムダ・ムラ”のない計画に微修正することも大切ですね。
いずれにせよ、まずは大雑把な計画からで構いませんので、計画を立てて1日も早く学習をスタートさせることが合格への近道といえるでしょう。

8.勉強仲間を募る

アクチュアリー試験に限らず、同じ目標や趣味を持った仲間を探すことは、ついつい単調になりがちな学習過程における一種の“アクセント”となりますので、上手く利用すれば勉強が捗る好要因になります。
例えば、ツイッターやアクチュアリー受験研究会(https://pre-actuaries.com/)を活用するのも有効な手段です。

ただし、大学受験の某予備校カリスマ講師がテレビ番組で、“他人に教えることで自分の知識が定着する効果は期待できるものの、他人に勉強を教えすぎると自分のペースが崩れることに注意。要領よく学習することが受験勉強において大切だ。”とのコメントがありました。他人よりもまずは自分のことに注力し、無事に正会員になってから様々なボランティア活動に精進されるとよいでしょう。

9.通学・通信講座の利用

検索サイトで、“アクチュアリー試験”、“対策講座”、“おすすめ”などをキーワードにして検索してみると、様々な講座がヒットします。
特に、以下の講座は比較的有名なようですので、興味があれば、ホームページだけでもご覧になるとよいでしょう。(表示は五十音順で人気度などの順番ではありません)
アガルートアカデミー:https://www.agaroot.jp/actuary/
アクチュアリー・ゼミナール:https://actuary-semi.com/
シグマベイスキャピタル:https://www.sigmabase.co.jp/qualify/index.html
東京国際アクチュアリーアカデミー:http://yoshidaand.co.jp/?page_id=19

なお、株式会社セミナーインフォでも、アクチュアリー試験対策講座がありましたが、残念ながら、2022年以降の開講及びアーカイブ動画・資料の販売等の予定はなくなった模様です。https://www.seminar-info.jp/entry/pages/actuary

10.無料ガイダンスの利用

9.で紹介しましたアクチュアリー試験対策講座では、年に数回、無料参加のガイダンスや質問会などを開催している模様です。特に、受講生以外でも参加できる場合があるようですので、時間に余裕があれば是非、参加されることをお勧めします。
詳細は、各講座の主催者ホームページをご覧ください。

いかがでしたか。今年のアクチュアリー試験は、“CBT方式”の導入が大きな目玉ですね。IT技術を駆使した効率的な試験運営の拡大は、主催者側だけでなく、受験生にとっても大きなメリットがあるでしょう。このコラムをご覧いただいた方々の試験勉強が少しでも捗ることを祈念しております。

(ペンネーム:活用算方)

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