改訂箇所(保険商品開発の理論)


以前のコラム「2024年1月19日(金)改訂箇所(ソルベンシー規制の国際動向)」の最後で、“残念ながら当該書籍の“改訂前”のものが手元にないため、入手できた暁には、当コラム同様、改訂箇所をご紹介できる日が来ることを期待しています。”と記しましたが、幸い、Amazonで“改訂前”のものを、また、保険毎日新聞社ホームページで“改訂後”のものを、それぞれ入手することができました。

そこで、今回のコラムでは、今年1月に改訂版が刊行された、早稲田大学商学部准教授の星野明雄氏による『保険商品開発の理論〔改訂版〕(保険毎日新聞社)』(以下、「本書改訂版」という。)について、改訂箇所を中心にご紹介いたしましょう。

1.発行年月日

『保険商品開発の理論(保険毎日新聞社)』(以下、「本書初版」という。)は、2022年1月20日が発行年月日ですが、本書改訂版は2024年1月22日が発行年月日であり、2年ぶりの改訂となります。
なお、本書改訂版で触れられている通り、2つに分類された商品開発の仕事(「アイデア発案」、「技術的設計」)のうち後者は本書初版では記載がなかったため、本書改訂版で後者が補充されたことから、商品開発の仕事が十分に網羅されたといえるかもしれません。

このため、本書初版および本書改訂版を同時並行でお読みいただければ、新設された「技術的設計」はもちろん、「アイデア発案」についても改訂前後を比較することで、理解が進むように思います。

2.総ページ数

本書初版が205ページであったのに対して、本書改訂版は311ページになっています。
後述の通り、本書改訂版では第6、8、9、11章が新設され、コラムが5つ追加(←厳密には6つ追加、1つ削除)されました。なお、新設された章の総ページ数はちょうど100ページですので、追加されたコラムのページ数を考慮すれば、本書初版から存在した章のページ数は、ほぼ同数と言えるでしょう。

3.価格

税抜き価格について、本書初版が2,400円、本書改訂版は3,400円です。本書改訂版が約100ページ増えていますので、1ページ当たり10円とも考えられますね。
なお、以前のコラム「2024年1月19日(金)改訂箇所(ソルベンシー規制の国際動向)」でご紹介した書籍も、ほぼ同様の“単価”ですので、ひょっとすると、保険毎日新聞社の慣行として、“1ページ当たり10円(程度)”が、1つのメルクマールなのかもしれません。

4.索引の新設

本書初版にはなかった“索引”が本書改訂版では2ページにわたって掲載されています。大学時代、指導教官から、“専門書を買う場合、索引のないものは買うな!”と厳しく指導された記憶がありますが、“索引”があれば“目次”と組み合わせることで“飛ばし読み”等のテクニックが使いやすくなり、読み手としては大変重宝します。
なお、310ページに“面倒くささ”という語句が4か所登場することが索引で示されていますので、ユニークな書籍と言えるかもしれませんね。

5.著者紹介

本書初版に続いて本書改訂版でも“著者紹介”が掲載されていますが、時系列に再編成されたため、本書改訂版の方が比較的読みやすい配置になっています。
なお、これも本書初版から掲載されている情報ではありますが、雑誌記事の連載等で使用している“筆名(ペンネーム)”も披露されています。匿名執筆としての役割を果たしていないようにも思われますが、それだけ執筆内容に自信があることの現れかもしれません。

ちなみに、当コラムの“筆名”は“活用算方”ですが、本名は。。。また別の機会に披露することといたしましょう。

6.Column(コラム)

本書の内容を理解しやすくするために様々な図表が織り込まれていますが、さらに理解を深めるためにColumnも適宜挿入されています。
このColumnも、21個から26個に増えておりますが、本書初版に掲載されていたもののうち1つだけ本書改訂版で削除されたものもあります。したがって、実質的に6個増えたようです。(←個人的には削除された“ブランド関係”のColumnも存置いただきたかったところですが、ひょっとすると、新設された“章”に盛り込まれているのかもしれません。)

久々に、“スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学スピーチ”を再聴したい気分です。

7.章立て

本書改訂版は、本書初版に「第6、8、9、11章」を追加した全12章で構成されています。なお、保険毎日新聞社のホームページでも各章のタイトル(含む、Columnの数)が閲覧できます。以下、追加された各章の概要を簡単にご紹介いたしましょう。

8.第6章 会社戦略と商品戦略

3つのセクションから構成されますが、その1つに会社および商品ブランドに関するものがあります。このため、上述の“ブランド関係のColumn”が当該セクションに包含された可能性が高いように思います。
なお、“「やらない」という選択”という部分は、商品開発の実務経験者の一人としては大変心惹かれます。(←大手社になるほど“欲張りな”経営陣が増えることに辟易とさせられました。お気持ちは分からなくもないのですが、ヒト・モノ・カネ・ジカンは無尽蔵ではありませんね。)

9.第8章 基礎書類の基礎知識

保険業法から監督指針に至るまで懇切丁寧な解説がありますので、特に、これからアクチュアリー試験を学習される方や初めて商品開発部門に配属される方には、ご一読を強くお勧めいたします。
欲を言えば、第三分野保険(ただし、更新型の保険期間1年以内を除く)にかかる保険計理人意見書(例.保険業法施行規則第6条、第243条など)にも触れられると、尚良いように思います。ひょっとすると、著者は保険計理人のご経験がないかもしれません。

10.第9章 第一、第二、第三分野の主要戦略

生命保険会社に勤務するアクチュアリーにとっては馴染み深い“第一および第三分野”に加えて、“第二分野”についても、商品開発の方向性が示されています。
このため、例えば、“生損保セット商品(例.レジャー愛好家向けに「携行品損害保険+災害保障保険」のセットなど)”を開発検討する場合、大いに参考となるかもしれませんね。

11.第11章 大数の法則と保険数理

アクチュアリーにとって“大数の法則”は、改めて説明する必要はないと思われますが、本書では、“中心極限定理”についても、この章で詳しく記載されている点が大きな特長です。
特に、当該法則および定理が適用できない場合の問題点について、著者ご自身の鋭い視点から整理されている箇所は、アクチュアリー以外の保険業界関係者にも、是非理解していただきたい重要論点と考えられます。

12.参考文献

“改訂にあたって”で早稲田大学商学学術院教授の中出哲先生への謝辞が記載されており、同氏の御書籍も参考文献に追加されています。

いかがでしたか。生命保険会社の商品開発業務は、決算業務やリスク管理業務と並んでアクチュアリーの主要業務ですが、商品開発に関する実務者向け書籍としては、アクチュアリー試験の教科書以外に、なかなかお目にかかれないのが実情です。

一方、今回ご紹介した書籍の著者は、生損保の商品開発等に従事されたご経験を踏まえ、保険会社で商品開発業務に従事される実務家にとって大変役立つ内容を網羅的に披露されており、あと数年で定年を迎える後輩アクチュアリーとして、私自身も大いに見習うべき存在と敬服しております。

日本アクチュアリー会第2次試験(専門科目)の1つである「生保1」の教科書『第4章 生命保険の商品開発』8ページに「5つのプロセス」が紹介されていますので、先述の2つの「仕事」との対比を考えてみることも、同試験対策としては有効かもしれません。

 

(ペンネーム:活用算方)

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