アクチュアリーが統計検定「データサイエンス発展」を受けてみた


統計検定「データサイエンス発展」は、2021年に開始された資格で、「データサイエンス基礎」よりも一段深い知識が求められます。

具体的には、倫理・AI、数理、情報、統計に関する大学教養レベルの内容が問われ、さらにPythonによる実践的なデータ分析スキルも前提となります。理論だけでなく、「手を動かせること」が前提になっている試験です。CBT方式試験で、試験時間は60分。100点満点で、60点以上が合格ラインです。

アクチュアリーがこの試験を受けると、何を感じるのか。
今回はインタビュー形式で振り返ってみたいと思います。

ーなぜ受けようと思ったんですか?

アクチュアリーとデータサイエンティストの違いを、自分自身の体験として明らかにしたかったからです。

就職活動中の学生から、「アクチュアリーとデータサイエンティストは何が違うのですか?」と聞かれることがあります。これまでは概念的に説明していましたが、実際にデータサイエンス系の資格試験を受けた経験はありませんでした。

一度、同じ土俵に立ってみようと思ったのがきっかけです。

ー実際に受けてみて、どうでしたか?

数学的な難易度という意味では、アクチュアリー試験の方がはるかに難しいです。数理や確率統計については、理論の深さや問題の複雑さという点で、アクチュアリー試験の方が負荷は高いと感じました。

一方で、情報分野やアルゴリズムの理解、そして実装を前提とした問いに対しては、別の種類の難しさがありました。

アクチュアリー試験(一次試験)では、与えられた前提や状況のもとで正解にたどり着くためのスキルを積み上げていきます。また、その主な対象領域は保険や年金です。しかし本試験では、「どの手法を選択すべきか」「そのモデルをどう評価するか」といった、より実務的な判断力が問われます。対象領域は広く、研究開発分野・サービス分野・物流分野・販売分野等、多様な業務を想定したAI・データ活用が前提となっています。保険や年金といった特定領域に最適化された問題ではなく、「どの業界でも起こり得るデータ課題」を扱う点が特徴的でした。

ー勉強時間はどの程度でしたか?

受験を申し込んでから1か月程度です。
正確な時間は分かりませんが、20〜30時間程度だと思います。

確率統計の基礎は既にあるため、主に情報分野や機械学習アルゴリズムの整理、Pythonまわりの確認に時間を使いました。

数理的な負担よりも、「分野の広さ」に慣れることの方が重要だと感じました。

ーアクチュアリーにとって価値のある資格だと思いますか?

あると思います。

第一に、アクチュアリーとデータサイエンティストの違いが具体的に理解できます。
就職活動中の学生から違いを問われたときにも、体験に基づいて説明できるようになります。

第二に、自分の弱点が明確になります。
アクチュアリーは「データに強い」と思われがちですが、アルゴリズム理解やコードベースの思考は必ずしも専門ではありません。その点を冷静に認識できます。

第三に、AI時代における自分の立ち位置を考えるきっかけになります。
データサイエンス発展では、数理だけでなく情報分野やAI倫理も扱われます。技術そのものだけでなく、「どう使うか」「どのような責任を負うのか」という視点が問われます。これは、不確実性を扱う専門家であるアクチュアリーにとって、決して無関係ではありません。

この試験はアクチュアリーの延長線上にある資格というよりも、自分の専門性の外縁を確認するための資格だと感じました。だからこそ、一度受けてみる価値はあると思います。

ーAIの理解は深まりましたか?

はい。特に「AIをどう使うか」という視点が整理されました。

試験では倫理やAIの社会的影響も問われます。これはアクチュアリーの業務とも密接に関係します。仮に保険料やリスク評価にAIを使う場合、説明可能性や公平性の問題は避けて通れません。

また、生成AIがコードを書く時代においては、「コードが正しいかどうかを判断できる人材」の価値が高まります。その意味で、理論的背景を理解していることの重要性を再認識しました。

ー結論として、受験してよかったですか?

よかったです。

自分の専門性の輪郭がより明確になりました。
データサイエンスという言葉との距離感も整理されました。

そして何より、「アクチュアリーとは何を専門とする人間なのか」を改めて考える機会になりました。

データサイエンスが広がる時代だからこそ、自分の専門性を相対化する経験は価値があると感じています。

(ペンネーム:ceraverse)

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