『令和8年8月8日』が過ぎ去りましたが、長年、保険業界にいる身として、この“8年8月8日”には大変深い思い入れがあります。
そこで、今回のコラムでは、古き良き(?)“平成8年8月8日”に思いを馳せながら、当時のエピソードを交えつつ記憶を辿ってみましょう。
1.生損保子会社から30年
1996年4月1日に約50年ぶりとなる改正保険業法が施行されましたが、その際、“子会社方式による生損保の相互参入制度”が導入されました。
実際、同年10月1日に損保系生保および生保系損保が相次いで設立・市場参入し、生命保険業界では一気に10社程度の新会社の設立にいたりました。
今年は、ちょうど30年の節目を迎えますが、奇しくも“元号”でみた場合にも、平成8年から令和8年となり、まさに、節目に相応しいといっても過言ではないくらいに覚えやすい年数となりました。
ちなみに、数字の『8』は漢字で書くと“末広がり”という大変縁起の良い文字でして、さらに、『平成8年8月8日』は六曜の『大安』となったこともあり、多くの保険子会社の設立日が同日になっていたのも非常に印象的です。
なお、『昭和8年8月8日』は六曜の『仏滅』、『令和8年8月8日』は六曜の『先勝』です。
2.生保系損保の縮小
生損保の子会社設立後、“損保系生保が(大)成功”し、“生保系損保はそれほどでもない”ような結果に感じています(失礼!)。
なぜそのような結果に至ったのかは、より詳細な分析が必要かもしれませんが、5年ごと利差配当や予定解約率導入など、伝統的な生命保険会社の提供商品に比べて、魅力的な商品ラインナップが“損保系生保”の躍進のきっかけとなった面は否めないかもしれませんね。
3.ひらがな生保 ← 千代田火災エビス生命!
当日の新聞・雑誌などで、しばしば“漢字系生保”、“カタカナ生保”および“ひらがな生保”という『区分け』がなされていた記憶があります。
これらのうち、“ひらがな生保”が損保系生保で、例えば(当時の)東京海上あんしん生命といった感じで社名に“ひらがな”が入る会社が多かったことが一因のように思われます。
その後、日経文庫から書籍を改訂する際、担当記者の方に、「千代田火災エビス生命」は、(損保系生保だが)“カタカナ生保”では?と何気なくコメントしてしまい、先方が大変不機嫌になってしまった苦い記憶があります。
4.長割り終身
損保系生保参入の2年後となる、1998年10月に(当時の)東京海上あんしん生命から『長割り終身』が発売されました。
恐らく、日本の保険商品のうち、予定解約率を用いた初の商品だったと思われますが、発売当初は猛烈に(?)反発していた(当時の)大手生保も、最終的には同様の商品を投入する結果となったことが非常に印象的です。
ちなみに、筆者は当時、大阪で勤務していたのですが、いわゆる関西系生保の集まりがあった際、某大手生保のアクチュアリーの大先輩から、“反対ばかりせずに、試しに(傘下にある)生命保険子会社に「長割り終身」の類似商品を販売させてみたらどうか?”と、まさに、“敵に塩を送る”ような温かいコメントを頂戴したことも強く印象に残っています。
紫のスーツにパンチパーマという、独特の風貌もさることながら、頭のキレに大いに感動しました。
5.生命保険協会の変遷図
生命保険協会ホームページに、これまでの生命保険会社の変遷(例.合併、社名変更など)がPDFファイルで公開されています。
https://www.seiho.or.jp/member/chart/pdf/chart_01.pdf
かなり文字が小さいのですが、明治時代以降の貴重な史料として大いなる価値がありますので、是非、ダウンロードされることをお勧めします。
ちなみに、個人的には“昭20.10新日本生命保険に改称”という部分に大変惹かれます(笑)
6.インシュアランス統計号 ← 赤字でも契約者配当繰入れ 団体保険?
損保系生保の開業が「10月」だったため、開業初年度の決算処理(例.保険料等収入は半年間だが、年度末の危険準備金は1年分繰り入れる?など)について、相当の時間が経過してから調べる機会がありました。
幸い、「インシュアランス生命保険統計号(保険研究所)」を遡り、平成9年度版(平成8年決算)で損保系生保の開業初年度の決算数値を拝見できました。
その際、損益計算書上では「赤字」でしたが、契約者配当準備金繰入が数億円発生しており、最初は不思議に思っていたのですが、よくよく調べてみると、団体定期保険を発売しており、2年目配当であったため、開業初年度から(赤字でも)当該繰入が行われたことを知り、大変勉強になった記憶があります。
当時の保険計理人意見書では、恐らく第26条の「特別な事情」を適用したものと思われますが、30年近く経過して筆者自身が保険計理人意見書で当該条文を用いることになろうとは、夢にも思いませんでしたが。
7.保険会社の破綻
“平成8年8月8日”から1年も経たないうちに、日本初の保険会社破綻(厳密には業務停止命令)が発生したことも記憶に新しいところです。
何をもって“破綻”とするかは、アクチュアリー第2次試験の教科書にも様々な角度から論評されていますが、(団体保険契約に対する契約者配当を実行する点について)会計監査人から合意が(4月中に)得られなかったということを先輩アクチュアリーから伺った記憶もあります。
損保系生保の登場で個人保険は5年ごと(利差)配当が主流となり、一方で、団体保険の2年目配当は(共同引受などのために)引き継がれるのも、不思議な感じですね。
8.保険業法改正
経済価値ベースのソルベンシー規制が“令和8年度”(厳密には令和7年度末)から導入されましたが、奇しくも、平成8年度の保険業法(大)改正と重なります。
もちろん偶然の産物ではありますが、平成と令和という元号が保険業法を通じて深く関連している点も、業界関係者の一人として大変興味深いところです。
いかがでしたか。令和8年熊本地震など、不安定な社会が続いていますが、“すえひろがり”の縁起を担いで少しでも良い世の中にしたいものだと切に願うばかりです。
(ペンネーム:活用算方)