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大谷幸宏
株取引に見る、会計士の重い責任

2013.11.29

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公認会計士は財務会計の専門家であり、企業のIR情報を読み取る専門知識を普通の人とは比べ物にならないほどに持っています。この知識は監査を行う際だけでなく、株式投資を行う際にも有用です。しかし、監査法人に勤める会計士の方とお話すると、株式投資を積極的に行う人が多くないということに気づかされます。
 
公認会計士法では、監査の独立性を担保するため、直接監査を担当する会社の株式を保有することが禁止されています。また、監査業務に限らず、公認会計士は会社の合併等の情報を事前に知る機会が多いため、そういった会社の株式を取引することで、インサイダー取引に問われることもあります。
 
加えて、2008年に起こった公認会計士によるインサイダー取引事件の影響もあり、各監査法人による社内の倫理規定の厳格化も実施されています。直接の監査担当ではなくても、所属する法人で監査を行っている会社の株式の保有を全面的に禁止している監査法人もあるようです。
 
公認会計士が株式投資を行うこと自体は違法ではありません。しかし、企業再編等により自分が株式を保有している会社の監査を、自分が所属する監査法人が担当することになった場合、社内規程に抵触する可能性があることを考慮し、自主的に一線を引いている会計士の方が多いようです。前出のインサイダー事件を機会に、きっぱりと株式取引を止め、外貨預金や公債での運用のみに切り替えたという方もいらっしゃいました。
 
また、もう1つ興味深い理由があります。それは、「現在の監査法人での収入面に不満がなく、投資によって財産を増やす必要性を感じない」というものです。
 
アメリカの犯罪学者、D.R.クレッシーは、あらゆる不正の要因として【1】機会、【2】動機、【3】正当化を挙げ、これを「不正のトライアングル」としてモデル化しました。最初から株式取引を行わない会計士は、【1】の「機会」を自らなくすことを目的にしていると言えます。
 
しかし、残念なことですが、金銭面の困難がある場合には【2】の「動機」、社内の待遇の悪さなどに不満を募らせている場合、【3】の「正当化」の契機になる、ということも考えられます。インサイダー取引の場合、自分で取引をしなくても親族や知人に代わりに購入してもらうという誘惑もあり、機会はゼロにはならないところもあります。
 
もちろん、そのような個人的な事情が、高い倫理性を求められる会計士による不正の言い訳にならないことはいうまでもありません。しかし、企業社会を根底で支える重い責任を担う会計士が、それに見合う正当な報酬を得ることの重要性もまた痛感します。
(文:VRPスタッフ)

大谷幸宏 プロフィール

大学卒業後、金融機関にて法人営業職を経験し、98年に管理部門に特化した株式会社日本MSセンター(現:MS-ジャパン)へ入社。東京本部の立ち上げを行うなど、現在の同社の基盤を作る。2004年に国内最大規模のヘッドハンティング会社、サーチファーム・ジャパン株式会社よりスカウトを受け、エグゼクティブサーチ業界へ。 同社入社後も数多くの結果を残し、入社2年でパートナーへ昇進。2007年11月に株式会社VRPパートナーズを設立、代表取締役に就任。18年間のキャリアにおいて、2万人以上の転職者との面談実績を持ち、入社後の定着率は95%以上とサーチ業界内においてもトップクラスの実績を誇る。2014年に日本アクチュアリー会の会員に。

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