決算数字の裏に市場の動きを読み取る。旺盛な好奇心と情報分析力が求められる仕事。


―アクチュアリーを目指したきっかけを教えてください。

アクチュアリーという職種は、就職活動で保険業界について調べていたときに知りました。もともと数学が好きで大学は数学科に進んだのですが、研究者になれるほどの力もなく、就職しなくては…と活動していたんです。アクチュアリーは、数学の知識が生かせ、かつ人が一生の中で必ずかかわる「保険」に携われる仕事。親近感があり、この道を目指そうと思いました。

―アクチュアリーの勉強はどのように進めたのですか。

初めて試験を受けたのは大学4年生のときでしたが、勉強が足りず不合格。そこから正会員になるまで9年かかりました。
入社するとシステム部に配属され、保険契約を管理するシステムの保守開発を担当しました。ビジネスマナーからシステムの基礎、ITスキルの習得など、学ぶべきことがたくさんあり、アクチュアリーの勉強まで手が回りませんでした。1科目目に合格したのは、入社4年目。そのタイミングでシステム部から数理部に異動になり、本格的にアクチュアリーの勉強を始めなくてはと本腰を入れるようになりました。土日にまとめて勉強時間を確保したり、通勤のスキマ時間に教材を読んだり、常に重い教科書を持ち歩き、ちょっと空いた時間も無駄にしないように、と意識が変わりましたね。

―数理部に異動してから経験した、印象的な仕事について教えてください。

決算業務から商品開発まで、アクチュアリー系の業務には一通り携わってきました。中でも、数理部に異動して2年目のとき、当時の上司に「責任準備金の計算を一手に引き受けてくれ」と任された経験は大きかったですね。
責任準備金は、会社の財務諸表内の重要な要素。ミスは許されないというプレッシャーとともに、責任ある仕事を任せてもらったことが嬉しくて、上司や先輩に一つひとつプロセスを確認しながら、正確に仕事を進めていきました。

現在はチームリーダーとして22人のメンバーを束ねていますが、過去に自分がそうしてもらったように、メンバーには色々な仕事を経験してもらいたいので、できるだけ責任あるポジションを任せるようにしています。個人の強みや得意分野を見極めながら、キャリアのターニングポイントとなるような機会を与えられたらいいなと思っています。

―アクチュアリーの面白さと難しさとは。

現在の業務では、決算内容を経営陣に対して説明する機会が多くあります。資料に並んでいる数字にはどういう背景があるのか、こちらの分析結果を伝え、理解してもらったときには達成感がありますね。
決算資料には、会社の方針や業務の成果が数字になって明確に現れます。アクチュアリーはその数字をただ伝えるのではなく、背景にある、企業行動やその影響・結果を分析して、数字の根拠を示せなければなりません。その為には、社内外で起こっている市場動向に常にアンテナを張り、知識として蓄えておくことが必要。「計算をしている人」というイメージを持たれがちなアクチュアリーですが、実際は、社内外の事情に精通する高い情報収集力や知的好奇心、コミュニケーション力など、多岐にわたる能力が求められる仕事です。そういった意味で、この仕事の面白さと難しさは表裏一体だと思います。

―アクチュアリーに必要とされる要素は何だと思いますか。

「色々な分野に興味・関心を持つこと」と「納得するまで調べる飽くなき探究心」でしょうか。
決算に出てくる数字の背景として、どのような仮説が考えられるのか。あくまでも仮説なので外れることもありますが、考えうる可能性をとことんまで調べた上で行う(経営陣への)プレゼンテーションは、やはり説得力が違います。
確かに、アクチュアリーは数学に興味がなければハードルの高い職種かもしれません。
でも、文系の方にもぜひこの仕事を知ってもらい、目指してきてほしい。アクチュアリー業務に必要な分析やリサーチには、幅広い知識が必要なので、理系・文系に限らず活躍できるフィールドは必ずあると思っています。
また、これは我々の会社の文化でもあるのですが、さまざまな可能性を否定せずに、むしろこれまでとは全然違う発想を進んで取り入れていこうとする姿勢が、アクチュアリーとして活躍する上でも、とても大切だと考えます。

プロフィール

加藤 聡志さん
ジブラルタ生命保険株式会社 数理チーム チームリーダー。日本アクチュアリー会正会員。
システム開発を経て、数理課に異動。決算やリスク管理、商品開発などさまざまなプロジェクトに携わる。現在は、チームリーダーとして22人のメンバーを束ねる。

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