1998年に初めて刊行された、生命保険協会の「生命保険会社のディスクロージャー~虎の巻」が、2026年6月に改訂されました。https://www.seiho.or.jp/data/publication/tora/
そこで、今回のコラムでは、前回版(2022年改訂)と比較しながら、主な改訂点をご紹介いたしましょう。
1.「はじめに」
資料上でページ番号は振られていませんが、表紙の次のページにある「はじめに」の部分で、『新ソルベンシー規制』が触れられています。
具体的には、“(中略)ソルベンシー規制の改正等に対応し、経済価値ベースのソルベンシー・マージン率(ESR)をはじめとする最新の開示内容を反映。”との記述が追加されています。
なお、後述の「3.」で当該規制について、より詳しく触れられています。
2.生命保険業界のディスクロージャーに関する取組み(3ページ)
保険業法の大幅な改正が行われた「平成8年」以降について、ディスクロージャーの充実に関する変遷が紹介されています。
今回の改訂では、「令和7年~経済価値ベースによるソルベンシー・マージン比率を開示」が追加されました。
なお、本件改訂の「2026年6月」時点では、当該比率の法定開示期限は未到来であり、内閣府令第71号の「附則第4条」で、令和8年3月31日を末日とする事業年度経過後7月以内に開示(公衆縦覧)することが規定されています。
3.リスク対応力はどうか―健全性の指標―(8~13ページ)
「ソルベンシー・マージン比率計算基準の変更点」という見出しで始まる段落が追加されました。
特に、当該段落の出だしに、“令和7年度決算から国際的な保険資本基準(ICS:Insurance Capital Standard)の枠組みに準拠した新たな国内資本規制(中略)が導入され”という記述がありますので、最早、一般消費者を念頭に置いたものではないようにも思われます。
なお、最も大きな変更点として、いわゆる“負債の時価評価”である『ロック・イン方式からロック・フリー方式への変更』についても触れられていますので、アクチュアリー試験対策としても有用な内容になっています。
また、8ページに記載の“将来的な逆ざやの発生懸念時において金利低下が純資産に与える影響”において、
⇒「従前の規制」:純資産が増加(リスクの認識が遅れる)
⇒「新規制」:純資産が増加(リスクを早期に認識)
という記述は極めて重要であり、今後のアクチュアリー試験(第2次試験(専門科目))対策としても有用であると思われます。
さらに、10ページでは、適格資本と所要資本についての説明があり、Tier1/2資本や、新規制におけるリスクの構成要素が分かりやすく図示されています。
4.知っておきたいキーワード(14ページ)
「機関投資家」「コーポレートガバナンス・コード」「顧客本位の業務運営」「再保険」「アセットオーナー・プリンシプル」が追加されています。
特に、「再保険」が改めて登場したのが印象的です。2025年7月の『保険モニタリングレポート』で登場した「「資産集約型再保険(Asset-Intensive Reinsurance, AIR)」を意識したものかもしれませんね。
5.生命保険会社の財政状態を見る(20ページ)
「連結財務諸表」が追加されました。グループベースのソルベンシー・マージン基準を意識したものかもしれません。
6.生命保険会社のリスクへの備えの状況を見る(31ページ)
「参考」部分にある「既契約条件の変更」で、
“なお、仮に加入している保険会社が予定利率を引下げる場合でも、政令により引下げの下限が3%に設定されていますので(令和4年7月現在)、引下げの対象となる契約は3%を超える予定利率の契約に限られ、それ以外の契約は引下げの対象となりません。”
が削除されています。
7.ディスクロージャー開示基準(32ページ)
「Ⅳ 業務の状況を示す指標等」1(3)個人保険および個人年金保険の年換算保険料で、「通貨別」が新設されています。
また、「Ⅴ 財産の状況」の「8 保険金等の支払能力の充実の状況(ソルベンシー・マージン比率)」において、以下の項目が追加されています。
・直近の二事業年度におけるソルベンシー・マージン比率並びに適格資本の額及び所要資本の額
・直近の二事業年度における適格資本の額の構成に関する事項
・直近の二事業年度における所要資本の額の構成に関する事項
・経済価値ベースのバランスシートに関する事項
・外国証券の種類別差異調整に関する事項
・保険負債の商品別差異調整に関する事項
・ソルベンシー・マージン比率、適格資本の額及び所要資本の額の感応度分析に関する事項
・適格資本の額及び所要資本の額の変動要因分析に関する事項
・ソルベンシー・マージン比率の計算に用いられた前提及び手法に関する事項
・ソルベンシー・マージン比率の算出及び検証に係る手続及び体制の概要
なお、「Ⅵ 業務の状況を示す指標等」の「1 主要な業務の状況を示す指標等」において、以下の項目が削除されています。
・年換算保険料
・保障機能別保有契約高
・個人保険及び個人年金保険契約種類別保有契約高
さらに、「Ⅵ 業務の状況を示す指標等」の「2 保険契約に関する指標等」において、以下の項目が削除されています。
・新契約平均保険金及び保有契約平均保険金(個人保険)
・新契約率(対年度始)
・個人保険新契約平均保険料(月払契約)
・特約発生率(個人保険)
・事業費率(対収入保険料)
加えて、「Ⅵ 業務の状況を示す指標等」の「3 経理に関する指標等」において、以下の項目が追加されています。
・個人保険(中略)の責任準備金の積立方式、積立率、残高((中略)通貨別)
また、「Ⅸ 保険会社及びその子会社等の状況」で「4 保険会社及びその子会社等のリスク管理の体制」が追加されています。
8.用語解説(40~41ページ)
「経済価値ベースのソルベンシー規制関連の用語」の欄が新設されています。
適格資本や所要資本はもちろん、告示等では分かりにくい「控除合算手法」「会社固有のストレス係数手法」「内部モデル手法」等も紹介されていますので、アクチュアリー2次試験対策にも大いに使えそうですね。
いかがでしたか。「生命保険会社のディスクロージャー~虎の巻」は、アクチュアリー試験(第2次試験(専門科目))のうち『生保2』等の受験生にとって格好の教材として有名ですが、経済価値ベースのソルベンシー規制導入で、今後も頻繁な改訂が十分想定されるところです。
今のうちに「2026年版」をダウンロードして、改訂版が出る都度、内容を比較しながら最新情報を学習されれば、試験合格の近道となるかもしれませんね。
(ペンネーム:活用算方)