社内勉強会や研修機会の多さが、学びの機会につながっている
プロフィール
伊藤 卓也(いとう たくや)さん
有限責任 あずさ監査法人
金融統括事業部 金融アドバイザリー事業部
シニアアソシエイト
日本アクチュアリー会 正会員
―アクチュアリーを目指したきっかけを教えてください。
アクチュアリーという仕事の存在を知ったのは、高専に在学していたときでした。高校ではなく高専と呼ばれる工学系の学校に通っていたため、卒業後は工学系の電力会社やメーカーに就職する友人が多くいました。でも私は数学が好きで、研究者になりたいと考えていました。「大学に進学して数学科に行きたい」と進路担当の先生に話すと、数学科を卒業したあとにどんなキャリアの可能性があるかを調べてみたら?と言われたんです。そこで、数学を生かした仕事として「アクチュアリー」のことを知り、研究者になれなかったらこんな選択肢もあるんだなとおぼろげに思っていました。
大学では、研究者か就職の道に進むかで悩みながら、生命保険会社を中心にアクチュアリーのインターンシップに参加していました。アクチュアリーとは、「数学で学んできたことを応用させて社会に貢献できる仕事」なのだと実感し、より興味を持つようになりました。民間企業に就職しても、アクチュアリーには年次大会等での論文発表の機会があり、社会人でありながら研究的な活動もできます。研究職にも惹かれていた私にとっては、そんな特徴も魅力の一つでした。
―これまでのキャリアと、あずさ監査法人への転職を決めた理由とは?
大学卒業後は大手生命保険会社に入社し、年金関連の業務を約3年担当しました。クライアント企業の退職金制度が財政上健全に運営されているのかを検証するほか、退職給付債務の計算業務などを行っていました。
あずさ監査法人に入社したのは2023年です。希望していた保険領域への転向と同時に、自身のキャリアアップを図るため、転職を決めました。
転職先選びで大事にしていたのは、少数制で働ける環境であること。大企業では一つひとつの業務が分断されてしまい、全体像を掴みにくいと思っていました。その点、あずさ監査法人のアクチュアリーチームはちょうどよい規模であり、月1回のチーム内研修会が行われるなど、情報交換のしやすい社風があると感じました。それぞれが得意とするテーマを発信・共有する自主勉強会も開催されており、成長機会の多そうな環境も魅力でした。
また、あずさ監査法人は保険会社の監査クライアントの数が多く、なかでも生命保険会社に関しては、大手4社のうち3社の監査を行っています。転職時はコンサルティングファームや保険会社とも迷いましたが、業界横断で複数の会社を細かく見ることができる点は、監査法人ならではの面白さだと思いました。
―現在の仕事内容を教えてください。
主に、監査業務と非監査業務(アドバイザリー業務)の2種類があります。
監査業務では、生命保険会社と損害保険会社のそれぞれに対して監査を行っています。担当している主要な業務の一つに、日本基準の責任準備金に関する監査手続きがあります。企業の財務諸表の全体像を見た上で、重要度の高い項目に対する監査手続きを策定し、それを実行するところまで一気通貫で行えるのは、監査法人ならではの働き方でしょう。特に、IFRS®会計基準の監査や、今後導入される経済価値ベースのソルベンシー規制(ESR規制)における経済価値バランスシートの監査では、会社のデータや経験・知識に基づいて作成されるベストエスティメイトの計算前提や計算モデルを、外部の立場から検証します。このような経験を通じて、監査法人のアクチュアリーは業界横断的な知識を蓄積していくことになりますし、それが求められている役割ともいえます。これも監査の面白さだなと感じています。
非監査業務(アドバイザリー業務)では、お客様の様々な要望や課題を解決することが我々の役割となりますので、当然ながら業務範囲は多岐にわたります。例えば、少額短期保険業者のお客様などは、社内にアクチュアリーを抱えていないため、保険計理人業務を監査法人やコンサルティングファームのような外部機関に委託するケースがあります。一方で、保険会社に対するご支援としては、直近ではESRに係る態勢整備に関してご相談いただくことが多いです。ESRに係る態勢整備のご支援では、お客様からのご要望に応じてESR規制導入のために必要な計画策定・検討・構築・文書化など幅広くご支援させていただいています。
―アクチュアリーとしてあずさ監査法人で働く魅力、面白さとは?
メンバーの多くが中途入社なので、一人ひとりバックグラウンドが異なるという多様さがあります。前職で生保や損保の商品開発に携わっていたメンバーもいれば、法定決算をやってきた人、経済価値関連の業務を担ってきた人、私のように年金領域から未経験で入ってきた人など、強みもさまざまです。監査という共通の目的に向かって、多様な経験・知識をもったメンバーが議論を交わすことで、チーム全体が底上げされていると感じます。
通常業務以外での成長機会という観点では、監査法人ならではの内部統制などのテーマ別研修や、コンサルタントの基本スキルであるPMOなどに関する研修はもちろん、短期留学も含む語学研修のサポートも充実しています。最近では、アクチュアリー会の海外研修や海外のセミナーへの参加機会もあります。
―業務と勉強との両立の工夫や、働き方についてお聞かせください。
私はあずさ監査法人に入社後に、準会員から正会員になりました。それまでは年金領域を担当していたので、二次試験に出てくる保険の用語が全然わからず初回は落ちてしまったのですが、2回目の試験では転職後の業務経験を通じて理解が進み合格できました。特に、ESR規制などの最新トピックに触れる機会が多い職場なので、仕事が試験対策に直結していると感じます。試験前は1週間休みをもらい勉強に集中できる時間を作ることができ、会社側のサポート体制もありがたかったです。
働き方については、もちろん関与しているプロジェクト次第ではありますが、基本的には柔軟で、在宅勤務も可能です。監査法人ゆえに繁忙期はあり、期末決算時期は残業時間がどうしても多くなってしまいますが、あらかじめ分かっているので年間でスケジュール調整をするなど工夫はできるかなと思っています。
また、男性の育児休暇取得も進んでおり、ライフスタイルに応じた柔軟な働き方を実現することをチーム一丸となって目指している空気がありますね。
―あずさ監査法人で活躍しているアクチュアリーに共通する要素は何ですか。また、これからどんな方と一緒に働きたいですか。
アクチュアリーとしての専門性に加えて、お客様が何を求めているかを引き出すコミュニケーション力が重要だと感じています。例えばアドバイザリー業務では、直接数理的なスキルを生かす以外に、お客様が何に困っているのか、それに対してどんな提案ができるのかを対話を通して具体化させていくことが欠かせません。相手によって、専門用語を交えて説明したほうがわかりやすいのか、より一般的な表現を使ったほうが伝わりやすいのかはケースバイケースであり、臨機応変な対応力はアクチュアリーとしてのパフォーマンスの高さに直結すると考えています。
また、自分が持っている能力、ノウハウ、スキルを積極的に発信し共有していこうという意欲の高いメンバーが集まっていると感じます。監査やアドバイザリー業務の性質から当然ではあるのですが、「誰かがやってくれるから大丈夫だろう」「最終的にはどうにかなるだろう」などと他力に依存している人は一人もいません。そんな中で、自分が与えられた領域に加えて、さらにプラスアルファのところで積極的に貢献しようと動ける人が、成長できるのではないかと思っています。
―これからご入社される方へのメッセージをお願いします。
専門家としての業務経験はもちろん大切なのですが、監査に携わるようになって感じているのは、専門家に求められていることは「前年までこうだった」「前職ではこのやり方で進めていた」といった経験の押し付けではなく、常にあるべきは何かという原則に立ち戻り、そこから思考を掘り下げていく姿勢にあるということです。
コンサルタントとしての側面も同様で、目の前のお客様がおかれた状況を見ずに、経験を押し付けるようなことをしていては活躍することは難しい仕事なのではないかと思っています。現状とあるべきとのギャップをどのように理解し、解消に向かっていただくのか、お客様によって説明や伝え方を変えていけるようなコミュニケーション力が求められます。
一言でまとめてしまえば柔軟さだと思うのですが、そういった価値観を共有しつつ、アクチュアリーとしてともに専門性を高められる方とぜひ一緒に働きたいと思っています。