「令和7年(2025年)年金制度改正 徹底解説 ― アクチュアリー受験者のための論点整理」第1回 【序論】令和7年金制度改正の全体像と施行スケジュール


第1回 【序論】令和7年金制度改正の全体像と施行スケジュール

なぜ今、受験生が最優先で押さえるべきか

2025年6月13日に成立し、同年6月20日に公布された「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」(令和7年法律第74号。以下「令和7年改正法」)は、年金1・年金2の受験生にとって最重要テーマの一つです。

それは、公布からわずか数か月後の2025年度本試験で、改正内容がすでに出題されているからです。年金1では、在職老齢年金の支給停止調整額(2026年4月から62万円)、標準報酬月額上限の最終的な引上げ(2029年9月から75万円)、確定拠出年金のマッチング拠出・拠出限度額の改正、遺族厚生年金の見直し後の支給期間が問われました。年金2でも、令和6年財政検証のオプション試算(被用者保険の適用拡大、基礎年金と報酬比例部分のマクロ経済スライド調整期間の一致)や所得代替率の定義が出題されています。改正法は「成立・公布の年度に即、出題される」頻出論点だと考えてよいでしょう。

改正法の基本的な考え方

今回の改正は、働き方・暮らし方・家族構成の多様化に対応しつつ、現在の受給者と将来の受給者の双方にとって、老後の生活の安定と所得保障の機能を強化することを基本としています。公的年金(国民年金・厚生年金)と私的年金(確定拠出年金など)の双方にまたがる、近年でも大規模な改正です。

連載の全体像 ― 「公的年金」と「DC」を分けて整理

本連載では、改正項目を大きく2つに分けて解説します。前半(第2回~第9回)が公的年金パート、後半(第10回~第12回)が確定拠出年金(DC法改正)パートで、最終回(第13回)に総まとめを置きます。各回では必ず「現行制度」と「改正後」を対比し、何がどう変わるのかを明確にします。

公的年金パートの主な柱は、(1)社会保険の加入対象の拡大、(2)在職老齢年金の見直し、(3)遺族年金の見直し、(4)保険料・年金額の計算に用いる賃金(標準報酬月額)の上限引上げ、(5)子に係る加算の見直し、(6)将来の基礎年金の給付水準の底上げ、の6点です。このうち(6)は、衆議院での修正により法律に追加された論点で、基礎年金と厚生年金(報酬比例部分)のマクロ経済スライドを同時に終了させる措置です。

DCパートでは、iDeCoの加入可能年齢と拠出限度額の引上げ、企業型DCのマッチング拠出・拠出限度額・簡易型DCの統合、自動移換や中小事業主掛金納付制度などの事務手続きの見直しを扱います。

令和7年 年金制度改正の全体像(基本の考え方と6本の柱)。厚生労働省「年金制度の改正(令和7年改正法)に関する説明資料」をもとに作成。

施行スケジュール(主なもの)

改正項目は施行時期が大きく異なり、2026年から2035年にかけて段階的に施行される点に注意が必要です。

施行時期主な改正内容
2026年4月在職老齢年金の支給停止基準額を50万円→62万円へ/企業型DCのマッチング拠出の加入者掛金制限の撤廃・簡易型DCの統合・自動移換の説明時期の見直し・中小事業主掛金納付制度の届出簡素化
2026年10月新たな加入拡大対象となる短時間労働者への支援措置の開始
2026年12月iDeCoの加入可能年齢の引上げ(第5号加入者の新設)・iDeCo等の拠出限度額の引上げ
2027年9月標準報酬月額の上限を65万円→68万円へ
2027年10月社会保険の企業規模要件を従業員36人以上の企業へ拡大
2028年4月遺族厚生年金の男女差解消(20年かけて段階実施)・遺族基礎年金の子の受給範囲拡大・子に係る加算の拡充
2028年9月標準報酬月額の上限を68万円→71万円へ
2029年9月標準報酬月額の上限を71万円→75万円へ
2029年10月企業規模要件を21人以上へ拡大・常時5人以上の個人事業所を全業種へ拡大
2032年10月企業規模要件を11人以上へ拡大
2035年10月企業規模要件を10人以下(実質的に撤廃)へ
公布から3年以内短時間労働者の賃金要件(月額8.8万円以上)の撤廃

(注)脱退一時金制度の見直しは公布から4年以内の政令で定める日に施行予定。(6)の基礎年金底上げ措置は、次回財政検証(2029年予定)の結果を踏まえて発動の是非を判断し、報酬比例部分のマクロ経済スライドは2030年度まで継続されます。

試験での問われ方

年金1では、問題1・問題2で公的年金の数値・年金額改定の仕組み・適用拡大が穴埋めや短答で繰り返し問われています。改正後の具体的な数値(62万円、75万円、各種拠出限度額など)と施行日(2026年4月、2029年9月など)は、そのまま得点源になります。

年金2では、財政検証・所得代替率・賦課方式・マクロ経済スライドが論述で頻出です。(6)の基礎年金底上げは「基礎年金と報酬比例部分の調整期間の一致」という形で財政検証の枠組みと直結するため、数値の暗記にとどまらず、「なぜその改正を行うのか」という趣旨まで説明できるようにしておくことが、論述対策として有効です。

出典・参照元

  • 「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」(令和7年法律第74号)
  • 厚生労働省「年金制度の改正(令和7年改正法)に関する説明資料」
    https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001653903.pdf
  • 厚生労働省「確定拠出年金制度 2025年の制度改正」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2025kaisei.html
  • 公益社団法人 日本アクチュアリー会「資格試験過去問題集(2023~2025年度 年金1・年金2)」
    https://www.actuaries.jp/lib/collection/

※本記事中の「施行スケジュール」の表は、上記の厚生労働省資料をもとに作成しています(出典:厚生労働省ホームページ)。

あわせて読みたい ―関連記事―