長期継続配当


長らく続いた低金利(含、マイナス金利)からの脱却を果たし、多くの生命保険会社で、逆ざやから順ざやに転じるようになりました。
一方、急激な金利上昇のために債券を中心とする『含み損』を抱える構図となり、機関投資家としての役割・機能を含めて悩ましい点が存置されています。

そこで、今回のコラムでは、幾つかの生命保険会社からニュースリリース(プレスリリース)が公開された『長期継続配当』を中心に、アクチュアリー試験(第2次試験)対策にも役立つような内容をご紹介できればと思います。

1.通常配当と特別配当

教科書的に言うと、『毎年配当タイプ(3年目から毎年、消滅時に2回分の配当)』および『5年ごと(利差)配当タイプ(6年目から5年ごとの配当)』などで定期的に支払われる配当が「通常配当」です。
一方、一定期間(例.17年目以降など)が経過して存続する契約または当該期間経過後に消滅する契約に対して「通常配当」に上乗せして支払われる配当が「特別配当」です。

2.特別配当の内訳(λ配当とμ配当)

教科書的に言うと、「特別配当」は「λ配当」と「μ配当」の2種類に分類されます。
「λ配当」は、上述の“一定期間経過時の存続契約”に対して、原則、その後に毎回(上乗せで)払われる「特別配当」です。
一方、「μ配当」は、上述の“一定期間経過時の消滅契約”に対して、消滅時にのみ(上乗せで)払われる「特別配当」です。

なお、両者ともその財源としては「通常配当」として還元しきれなかったもの(の一部)が充当されますが、例えば、内部留保(例.危険準備金、価格変動準備金など)の積立財源が契約消滅で不要になることの見返りとして「μ配当」の財源に充当するという考え方(=リボルビング・ファンド)もあります。
興味のある方は、是非、エンティティ・キャピタルモデルを含めて学習されると良いでしょう。

3.事例(その1)

ここからは、実際のニュースリリース(プレスリリース)などに沿って、会社ごとの状況をご紹介いたします。
まず、(当時としては)生保業界初となる、“長期間にわたり内部留保積立てに貢献した契約に対する配当”です。
なお、“対象契約:経過20年、以後10年ごとに支払う”とのことですので、「λ配当」に近い性質のように思われます。
https://www.shinnihon-ins.co.jp/industry-news/industry-news-20201202-7/

4.事例(その2)

こちらの資料は、「特別配当」を含めた配当体系を俯瞰的に分かりやすく説明していますので、アクチュアリー試験用の教材としても有用に思われます。
特に、“長期継続特別配当”という名称で、“自己資本充実度を踏まえて過去に配当還元しきれなかった部分を還元することで、長期継続契約により多く配当”という部分が一般消費者の方々にも非常に分かりやすく解説されています。
https://www.fukoku-life.co.jp/about/activity/policy_dividend/

なお、「マンガでわかる・・・」という資料も無償公開されていますが、その中で、“無配当保険は有配当保険に比べて少しだけ保険料を安くして”という部分に「軽い悪意」を感じてしまいました。何とも微笑ましい限りです。(記者注:傍点は筆者)
https://www.fukoku-life.co.jp/about/activity/policy_dividend/upload/mangahaitou_conceptbook.pdf

5.事例(その3)

リーディングカンパニーからも、「長期継続配当」が2026年4月以降に創設された模様です。
なお、当該配当の創設意図として、“自己資本積立への貢献が大きい長期継続契約に対して、これまでの収支に応じた配当を支払い。”という記述がありますので、上述の「3.事例(その1)」の内部留保を自己資本に置き換えれば、根底の考え方は類似しているかもしれません。

また、同社では従前から「お客様配当性向」が定められている模様でして、中期経営計画(2024~2026)では、「安定的に60%程度」への引き上げも想定されています。
お客さまにとっては、大変有意義な取組みであり、相互会社・株式会社を問わず、是非、他社にも追随して欲しいところですね。
https://www.nissay.co.jp/news/2025/pdf/20250523.pdf

6.事例(その4)

現時点では、恐らく最新のニュースリリース(プレスリリース)と思われますが、「長期総合配当」が創設されました。
「総合」という名称に込められた思いが、もちろんあるように思われますが、当該リリースを注意深く読むと、“既存配当(長期継続配当)の支払時期早期化”についても、一定の条件の下で導入される模様です。

つまり、上述の「1.」および「2.」にあるような伝統的な「特別配当」とは別に、「長期総合配当」が位置付けられるように思われます。
いずれにせよ、お客さまの視点からは、金銭的受益機会の拡大は大変歓迎されるようにも思われますので、少なくとも、総代会などでの「反対」は全くないように想定されますね。
https://www.sumitomolife.co.jp/news/detail/newsrelease_260525.html

7.アクチュアリー試験(第2次試験(専門科目))対策

上述のとおり、長らく続いた低金利からの脱却で、安定的な「順ざや」が拡大することで、増配への期待が高まることが想定されます。
このため、例えば、“「順ざや」が安定的に継続・拡大する確度が高い環境下において、契約者配当(社員配当)について、アクチュアリーとして留意すべき事項を列挙して所見を述べよ”という出題が大いに考えられるところですね。

ただし、2024年度(生保2)問題3(1)で類似問題が出題されていますので、今年の試験対策という観点からは、残念ながら、参考程度に公式解答をチェックすることが良いかもしれません。

いかがでしたか。金利上昇を背景として、当分の間、利差損益を中心に基礎利益が拡大することは大いに見込まれますが、その一方、通常配当の「増配」まで舵を切る保険会社は、まだまだ少ないように思われます。増配トレンドには違いないと考えられますので、経済価値ベースのソルベンシー規制と同様に、契約者配当(社員配当)においても、ますますアクチュアリーの責任が増大しているように思います。


(ペンネーム:活用算方)

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