合格点が取れるレベルとは(生保数理編)


アクチュアリー試験では、平成21年度から『合格基準点』および『最低ライン』が設定されましたが、特に、『合格基準点』は60点とされることが多いようです。

筆者は社内外でアクチュアリー試験の勉強会のお手伝いをさせていただいておりますが、多くの受講生から『合格基準点である60点が取れるレベルとは、どのようなレベルなのか?』という質問をこれまで沢山いただきました。

そこで、今回のコラムでは、アクチュアリー第1次試験(基礎科目)のうち『生保数理』において、この『60点が取れるレベル』とは、どんなレベルなのかを具体例を交えながら紹介いたしましょう。

なお、筆者には試験委員の経験がなく、今回ご紹介する事例は、あくまでも個人的推測に過ぎないという点を予めご容赦ください。

1.教科書のゴシック体を暗記し、自分の言葉で説明できる
手元にある生保数理の教科書は、『生命保険数学(’92改訂版)』(平成11年2月20日第4刷)ですが、教科書の本文および練習問題に、以下のゴシック体が登場します。(なお、資格試験要領に記載されている出題範囲以外のゴシック体が含まれていますのでご注意ください。)

通し番号 上巻/下巻 ページ番号 ゴシック体の用語
1 上巻 1 単利
2 上巻 1 終価
3 上巻 1 現価
4 上巻 2 複利
5 上巻 2 終価
6 上巻 2 現価
7 上巻 2 現価率
8 上巻 2 割引率
9 上巻 3 等価
10 上巻 4 転化回数
11 上巻 4 転化期間
12 上巻 4 転化
13 上巻 4 名称利率
14 上巻 4 実利率
15 上巻 5 名称割引率
16 上巻 5 実割引率
17 上巻 6 利力
18 上巻 11 支払平均期日
19 上巻 13 確定年金
20 上巻 13 生命年金
21 上巻 13 期始払
22 上巻 13 期末払
23 上巻 13 年金終価
24 上巻 14 据置年金
25 上巻 14 即時開始年金
26 上巻 15 永久年金
27 上巻 16 年金年額
28 上巻 20 変動年金
29 上巻 21 累加年金
30 上巻 22 金利計算表
31 上巻 27 債券の利回り
32 上巻 28 元利均等返済
33 上巻 28 均等返済金
34 上巻 30~31 減債基金
35 上巻 32 元金償還保険
36 上巻 32 保険金
37 上巻 32 保険料
38 上巻 34 責任準備金
39 上巻 36 年金積立保険
40 上巻 38 均等利回り評価
41 上巻 38 アモチゼーション
42 上巻 39 アドオン方式
43 上巻 41 生命表
44 上巻 41 死亡表
45 上巻 41 死亡生残表
46 上巻 42 生存率
47 上巻 42 死亡率
48 上巻 44 国民表
49 上巻 44 経験表
50 上巻 55 截断表
51 上巻 55 総合表
52 上巻 55 選択表
53 上巻 55 終局表
54 上巻 56 選択期間
55 上巻 59 生命関数
56 上巻 59 生存確率
57 上巻 59 死亡確率
58 上巻 59 生命確率
59 上巻 60 平均余命
60 上巻 60 完全平均余命
61 上巻 60 略算平均余命
62 上巻 60 平均寿命
63 上巻 63 定期平均余命
64 上巻 65 据置平均余命
65 上巻 70 閉集団
66 上巻 70 開集団
67 上巻 70 定常状態
68 上巻 71 レキシスの図示法
69 上巻 76 中央死亡率
70 上巻 77 補整
71 上巻 78 死亡法則
72 上巻 79 ゴムパーツの法則
73 上巻 80 メーカムの法則
74 上巻 80 メーカム定数
75 上巻 85 被保険者集団
76 上巻 85 閉集団
77 上巻 85 開集団
78 上巻 86 主集団
79 上巻 86 副集団
80 上巻 86 脱退残存表
81 上巻 87 多重脱退表
82 上巻 88 脱退率
83 上巻 88 絶対脱退率
84 上巻 91 脱退力
85 上巻 92 中央脱退率
86 上巻 95 絶対死亡率
87 上巻 95 経過契約
88 上巻 101 予定死亡率
89 上巻 101 予定利率
90 上巻 101 予定事業費率
91 上巻 101 計算の基礎
92 上巻 102 純保険料
93 上巻 102 付加保険料
94 上巻 102 営業保険料
95 上巻 102 単生命
96 上巻 102 一時払保険料
97 上巻 102 保険現価
98 上巻 102 生存保険
99 上巻 104 生命年金
100 上巻 104 年金現価
101 上巻 104 終身年金
102 上巻 104 期末払
103 上巻 104 期始払
104 上巻 105 有期生命年金
105 上巻 106 即時開始年金
106 上巻 106 据置年金
107 上巻 107 保証期間付生命年金
108 上巻 119 定期保険
109 上巻 119 死亡保険
110 上巻 120 終身保険
111 上巻 126 養老保険
112 上巻 126 生死混合保険
113 上巻 129 計算基数
114 上巻 135 変動年金
115 上巻 135 保険金変動保険
116 上巻 135 累加年金
117 上巻 136 累減年金
118 上巻 137 累加定期保険
119 上巻 138 累減定期保険
120 上巻 142 完全年金
121 上巻 150 平準保険料
122 上巻 150 全期払込
123 上巻 151 短期払込
124 上巻 153 自然保険料
125 上巻 154 信用生命保険
126 上巻 154 ユニバーサル保険
127 上巻 156 保険料変動保険
128 上巻 159 条件付保険
129 上巻 159 死亡指数
130 上巻 159 特別保険料
131 上巻 165 分割払保険料
132 上巻 165 分割賦払保険料
133 上巻 166 分割払真保険料
134 上巻 173 責任準備金
135 上巻 173 純保険料式責任準備金
136 上巻 174 過去法による責任準備金
137 上巻 174 将来法による責任準備金
138 上巻 194 責任準備金の再帰式
139 上巻 195 ファクラーの再帰式
140 上巻 195 ファクラーの累積因数
141 上巻 196 危険保険料
142 上巻 196 貯蓄保険料
143 上巻 196 危険保険金
144 上巻 196 保険料の分解式
145 上巻 202 Thieleの微分方程式
146 下巻 1 付加保険料
147 下巻 1 安全割増
148 下巻 1 確定配当
149 下巻 2 比例および定数法
150 下巻 3 予定事業費率
151 下巻 3 予定新契約費率
152 下巻 3 予定集金経費率
153 下巻 3 予定維持費率
154 下巻 6 高額割引
155 下巻 11 年金原資
156 下巻 14 チルメル割合
157 下巻 14 チルメル期間
158 下巻 15 チルメル式責任準備金
159 下巻 15 短期チルメル式
160 下巻 15 全期チルメル式
161 下巻 19 初年度定期式責任準備金
162 下巻 20 修正初年度定期式責任準備金
163 下巻 20 保険監督官式
164 下巻 20 イリノイ基準
165 下巻 21 充足保険料
166 下巻 22 充足保険料式責任準備金
167 下巻 23 調整純保険料
168 下巻 23 事業費責任準備金
169 下巻 24 調整純保険料式責任準備金
170 下巻 25 保険料積立金
171 下巻 25 未経過保険料
172 下巻 30 未収保険料
173 下巻 30 繰延保険料
174 下巻 33 解約返戻金
175 下巻 33 不没収給付
176 下巻 33 解約控除
177 下巻 34 減額
178 下巻 35 保険料振替貸付
179 下巻 35 契約貸付
180 下巻 35 失効
181 下巻 36 払済保険
182 下巻 37 延長保険
183 下巻 39 転換
184 下巻 45 貸借対照表
185 下巻 45 損益計算書
186 下巻 48 危険準備金
187 下巻 51 死差益
188 下巻 51 利差益
189 下巻 52 費差益
190 下巻 52 解約益
191 下巻 53 利源分析
192 下巻 57 利源分析表
193 下巻 68 配当繰延方式
194 下巻 68 半トンチン配当
195 下巻 68 トンチン配当
196 下巻 68 中間配当
197 下巻 68 累加配当
198 下巻 69 保険金増額
199 下巻 70 保険金均等増額方式
200 下巻 70 利源別配当
201 下巻 72 消滅時配当
202 下巻 73 アセット・シェア
203 下巻 75 変額保険
204 下巻 75 特別勘定
205 下巻 75 一般勘定
206 下巻 75 基本保険金額
207 下巻 75 積立金
208 下巻 75 変動保険金額
209 下巻 78 第2種の計算基礎
210 下巻 81 連合生命
211 下巻 81 連生
212 下巻 81 単生命
213 下巻 82 連生生命表
214 下巻 88 均等年齢
215 下巻 104 (広義の)連生保険
216 下巻 104 (広義の)連生年金
217 下巻 104 (狭義の)連生保険
218 下巻 104 (狭義の)連生年金
219 下巻 104 連生生存保険
220 下巻 105 連生有期年金
221 下巻 106 連生定期保険
222 下巻 106 連生養老保険
223 下巻 108 こども保険
224 下巻 108 計算基数
225 下巻 110 最終生存者連生保険
226 下巻 110 最終生存者連生年金
227 下巻 110 最終生存者生存保険
228 下巻 110 最終生存者連生有期年金
229 下巻 110 最終生存者連生定期保険
230 下巻 111 最終生存者連生養老保険
231 下巻 120 寡婦年金
232 下巻 120 遺児年金
233 下巻 120 遺族年金
234 下巻 126 条件付連生年金
235 下巻 135 条件付連生保険
236 下巻 136 計算基数
237 下巻 151 介護保険
238 下巻 152 死亡・就業不能脱退残存表
239 下巻 155 就業不能者生命表
240 下巻 161 計算基数
241 下巻 187 団体保険
242 下巻 187 団体定期保険
243 下巻 193 平均保険料率
244 下巻 201 従業員在職残存表
245 下巻 204 付随給付
246 下巻 207 年金原資
247 下巻 207 昇給テーブル
248 下巻 207 予定昇給率
249 下巻 207 昇給指数
250 下巻 211 発生年金額
251 下巻 213 掛金
252 下巻 213 定期掛金
253 下巻 216 財政方式
254 下巻 217 賦課方式
255 下巻 217 修正賦課方式
256 下巻 218 年金開始時積立方式
257 下巻 218 事前積立方式
258 下巻 219 掛金建制度
259 下巻 219 給付建制度
260 下巻 219 一時払積増方式
261 下巻 220 発生年金額基準方式
262 下巻 220 発生債務
263 下巻 221 年金積立金
264 下巻 221 未積立債務
265 下巻 222 過去勤務債務
266 下巻 222 過去勤務債務掛金
267 下巻 222 通常掛金
268 下巻 223 予定年金額基準方式
269 下巻 223 個人平準保険料方式
270 下巻 223 到達年齢方式
271 下巻 224 加入年齢方式
272 下巻 224 通常掛金
273 下巻 225 過去勤務債務
274 下巻 225 過去勤務債務掛金
275 下巻 226 再計算
276 下巻 226 後発過去勤務債務
277 下巻 226 初期過去勤務債務
278 下巻 226 先発過去勤務債務
279 下巻 227 総合保険料方式
280 下巻 227 閉鎖型
281 下巻 227 開放型
282 下巻 229 凍結初期債務方式
283 下巻 230 加入年齢型
284 下巻 230 到達年齢型
285 下巻 232 総合保険料方式(開放型)
286 下巻 233 開放基金方式

(図1)

それぞれの単語の意味を理解することはもちろんのこと、複数回登場する単語について、それぞれのページにおける意味の違いにも注意しながら理解されると尚良いでしょう。例えば、『責任準備金』という単語は、34ページおよび173ページに登場しますが、前半は第1章ですので金利のみを考えた場合(=死亡率がゼロ)であり、後半は第5章ですので金利に加えて死亡率も考えた場合の定義となります。

2.頻出公式を暗記し、その使い方を知っている
以下の公式は過去問でたびたび登場する、いわゆる『頻出公式』です。これらの公式を暗記することはもちろん、その使い方を知っていることが大切です。

例えば、上記の2つ目の公式で、左辺の『A』および右辺の『a』が分かっている場合、当該公式を用いて『d』を求めて、そこから予定利率を求める、といった使い方です。

3.教科書の各章の概要を暗記している
生保数理の出題範囲外を含めれば、教科書の章は全部で16個あります。
例えば、『第7章には何が書かれているか?』と聞かれ、瞬時に『(単生命における)営業保険料』と回答できるようなレベルです。

4.教科書を読む順序を理解している
3.と関連しますが、例えば、単生命における営業保険料について教科書を通読する場合、第1章⇒第2章⇒第4章⇒第7章という順序で読めば十分です。
逆に言えば、教科書の章立てに忠実になりすぎるあまり、第3章を初心者のうちから読み始めてしまうと『ドツボ』に嵌りかねません。

5.記号の意味を理解して、公式が表す内容を自分の言葉で説明できる
以下の公式は、教科書(下巻)第13章『就業不能保障保険』に関するものですが、教科書には明記されておらず、平成16年度などの過去問の解法で登場します。

左辺の記号は、『就業者が就業不能者となりt年後に生存する確率』を表しますが、これを別の表現を用いて『噛み砕いて』表現したものが右辺です。
実際、上記の確率をそれぞれの『場面』に分解すると、
1つ目の被積分関数:就業者が就業不能になる直前まで就業者のまま生存する確率
2つ目の被積分関数:就業者が就業不能になる確率
3つ目の被積分関数:就業者が就業不能者のまま生存する確率
という意味を表しますので、(左辺)=(右辺)となるわけです。

6.問題および公式解答を見ながら、他人に解答を説明できる
多くの受験生は、『解答を全く見ないで問題が解けるレベル=合格のレベル』という勘違いをされています。
そもそも、『解答を全く見ないで問題が解けるレベル』であれば、満点が取れるレベルですので、少なくとも合格するためにはそこまでのレベルは必要はありません。
問題および公式解答を見ながら、他人に解答を説明できるレベルが合格レベルです。

7.頻出論点について、どの年度に出題されたのかを大体記憶している
単純な記憶力は必須ではありませんが、ある程度、過去問を繰り返し解いてみると、類似の出題が目立つようになってきます。
例えば、Thieleの微分方程式を用いて一時払純保険料を求める問題であれば、平成14年度、平成21年度および平成26年度で出題されています。
さらに、平成24年度では、Thieleの微分方程式を用いる問題に見せかけた『ひっかけ』問題も出題されましたので、この点も押さえることができれば、合格レベルを遥かに超えたレベルと言えるでしょう。

いかがでしたか。今回ご紹介した内容は、多くの受験生にとって、どれも当たり前のことばかりかもしれません。
資格試験である以上、当たり前のことを当たり前のように行えば、必ず合格点が取れるはずですし、逆にそうでなければ資格試験とは言えないようにも思えます。
今回ご紹介した内容を吸収され、少しでも早くアクチュアリー試験を突破されることを祈念いたします。

(ペンネーム:活用算方)

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