大学3年から試験勉強を始め、社会人2年目で正会員に。


-アクチュアリーを目指したきっかけは何でしたか。

大学時代から統計学が好きで「これで生きていく道はないだろうか」と考えていました。大学では物流の最適化や工場の品質管理方法などを学んでいたので、メーカーの品質管理部に入るのが現実的な路線だったのですが、税理士だった祖父の影響から金融業界にも興味があって……。統計学を使い、金融業界で働ける仕事はないだろうかと調べていたとき「アクチュアリー」という職種を知ったんです。
「まさに自分が求めていた仕事だ」と考え、大学3年生から試験勉強をスタート。3年時に一次試験1科目に合格し、4年時で2科目に合格。社会人になってからは、1年目で一次試験の残りの2科目に合格し、準会員に。2年目で2次試験2科目を受けて無事、正会員になりました。

―社会人2年目にして正会員になる方はなかなかいません。合格の秘訣とは。

もともと数学が得意だったので、数学の比率が高い一次試験はやりやすかったんです。月1回開催されている、「アクチュアリー受験勉強会」に顔を出して、周りの社会人の先輩方に刺激をもらいながら、学業の合間を縫って勉強していました。大学3年生から勉強会に参加している人は少なかったからか、先輩方がとても可愛がってくださり、「教えてください」と聞けば、何でも答えてくれました。人や環境にはとても恵まれましたね。
社会人になると、早めに出勤して朝1時間ほど勉強し、土日はともに半日ほど勉強時間にあてました。
二次試験は、「こういった商品を作る場合、どういったリスクがあり、どう対応するか」といった実務試験が中心。社会人歴が短いと不利ですが、幸運なことに、1年目から任されていた仕事がちょうどリスク管理だったのです。日々の業務の中で、様々なリスクについて考え、レポートを書く機会も多かったので、試験内容と仕事が直結していたのはラッキーでしたね。

―金融業界の中でも「再保険会社」を選んだ理由は何ですか。

就職活動をする少し前に、再保険に関する著書を読み、保険のリスクを移転する手段としての“再保険”に興味を持ちました。必ず再保険に携われる会社に入りたいと、企業選びをしました。
実際に仕事を始めて思ったのは、再保険ビジネスは非常に自由な商品設計ができるということ。保険商品は、契約者保護が重要なため、金融庁の綿密なチェックを経て許可をもらえなければ販売できません。しかし、再保険は会社対会社の取り引きの世界なので、個別のやりとりは完全に自由。お客様ごとにオーダーメイドで作れる面白さがあります。

現在は、主に保有契約の将来予想に関する業務に従事しております。がんの統計や国民の死亡率の統計を集めて分析し、がん保険や死亡保険がどのように推移していくかの将来予想を立てるなど、統計学を実践的に使った仕事ができていますね。

―アクチュアリーになったから分かる、アクチュアリーに求められることとは。

社会人になって「理解することと説明することには大きな違いがある」という、当たり前のことに気づきました。学生時代は、自分が知っていることは教授も当然知っていて、多少下手な説明でも理解してもらえるという環境に身を置いていました。しかし、社会人になると、環境はまったく異なります。専門外の人に対して、いかにわかりやすく、かつ必要なことを簡潔に伝えるか。そのプレゼンテーション力、コミュニケーション力が非常に求められます。
今でも、お客様に向けた資料を作成し上司にチェックしてもらう際には「ノンアクチュアリーの新人が読んでも分かる資料になっているのか」を常に問われますね。上司に、資料を読む前から「長くて読む気にならない」と突き返されたことは苦い思い出です(笑)。

アクチュアリーを目指す学生の皆さんにお伝えしたいことは、難解な数学の問題を解けることは大して重要ではない、ということ。もちろん、理解していることは大切ですし試験勉強においては必須なのですが、その上で、文章や図、グラフに落とし込んで、数理の世界を知らない人にいかにわかりやすく伝えられるか、「伝える力」こそ磨いていくことが大事だと思います。

**プロフィール

鈴木理史さん
トーア再保険株式会社 生保企画部 リスク管理チーム。日本アクチュアリー会正会員。東京工業大学工学部経営システム工学科卒業。
(所属は、インタビュー時の2015年5月26日当時)

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