気になるニュース(2021年2月)


2021年1月に気になったニュースを幾つかピックアップしてみます。

なお、これまでと同様に、すべて単なる個人的見解であり、特定の人物および団体等を誹謗・中傷する意図は全くないことを、念のため申し添えておきます。

1.業界トップ同士の提携

NTTドコモと三菱UFJ銀行が金融事業で包括提携し、ドコモユーザーを優遇する専用口座を設けて、共同で住宅ローン等を手がける模様です。
90年代の終わり頃、某スポーツ紙で、『日本生命と東京海上の提携?』という記事を見た記憶がありますが、偶々、主務官庁にいらっしゃった方とお話しする機会があり、“う~ん。トップ同士が提携しちゃうと、つぶれる会社が出ちゃうんだよね。。。”とため息交じりにコメントされていらっしゃったのがとても印象的でした。

マイナス金利に加えて、新型コロナウイルスの影響もあり、大手社といえども、経営体力の維持・向上に“シノギを削る”構図は、当分、続きそうですね。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20210108-OYT1T50243/

2.日本生命が少額短期保険に参入

はなさく生命を立ち上げて、乗合代理店対応を果たされた日本生命が、今度は、専門子会社を立ち上げて、少額短期保険業に参入する模様です。
家財保険を中心とした損保商品が少額短期保険には多い印象がありますが、大手生保の参入で生保商品の占率が増えて、お客様の選択肢が増えることを期待したいところです。

営業職員チャネル、(乗合)代理店チャネルに加えて、少額短期保険業が第3のチャネルとしてどのように進展するのかが、大いに注目されます。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021010600831&g=eco

3.国内主要生保とは

“国内主要生保初(*)となるインターネットによる非対面手続きを実現”という文面に戸惑ったのですが、よく見ると、

“(*)国内漢字生命保険会社9社の営業職員チャネルにおいて(中略)完結できるのは当社のみです(2020年12月8日時点において当社調べ)。”

との注記がありました。

大きなお世話ですが、最初から、“国内漢字生保初”と表示してもよかったのかなと思いました。なお、12月8日という調査日が宣戦布告日と偶然重なったのも興味深いです。もちろん、宣戦布告の意図はないでしょうが。。。
https://www.taiyo-seimei.co.jp/company/notice/download/press_article/2020/20210106.pdf

4.保険種類別のリスクリミット

令和元年12月18日に廃止された、『保険検査マニュアル(保険会社に係る検査マニュアル)』のうち、“保険引受リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト”のⅡ.2.②(ⅱ)で、

“保険引受リスク管理部門は、保有契約の保障内容毎のポートフォリオを管理(保険契約種類毎の保有契約限度額設定等)すること等によりリスクの分散状況を把握しているか。”

という規定があり、保険種類毎に保有契約限度額を設定することが推奨されています。

ジャストインケース代表の畑加寿也さんが、『従業員50人未満の企業(または個人事業)の役員と従業員対象に1年間無償提供するプロジェクトを行っています。加入者数には上限があります。』とコメントされておりますが、リスク管理の観点から、引き受け保有限度額を設定する事例の1つになりそうですね。

なお、元の記事では、
“コロナにも対応している生命保険は、現在、ジャストインケースの「コロナ助け合い保険」と太陽生命の「感染症プラス入院一時金保険」の2つ。”
と言い切っている点が気になります。

今のところ、通常の生命保険でも新型コロナウイルス感染症による死亡や入院等には対応していますので、もう少し、正確に表現された方がよいように思えます。
https://news.yahoo.co.jp/articles/5012b6ad4e73e03e88612883d7a091c73d2445b2

5.火山噴火で保険が使える?

少なくとも、生命保険の場合、地震・噴火・津波は、いわゆる免責事項として普通保険約款に列挙されることが多いと思います。このため、これらを原因として保険事故は発生した場合は、原則として、保険金等は支払われません。
ただし、当該保険事故による保険金等の支払対象となる被保険者の数の増加が保険料設定時の想定内であれば、保険金を全額または削減して支払うことがある、というのが、一般的な規定になっていると思われます。
したがって、この記事にある通り、

“次に生命保険の区分です。こちらの場合は生命保険、医療保険とさらに分けられますが、どちらも被害を特定して保障しない仕組みとはなっておりませんので、万が一噴火により死亡した場合、死亡保険金が支払われます。”
  
と言い切ってしまうのは、ややミスリードだと思います。
もちろん、兵庫県南部地震や東日本大震災等でも、保険金等は満額支払われてきたという歴史はありますが。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d8339c498c039c981f155da6be15c3d4bfa3fb49?page=1

6.新型コロナウイルス感染者情報

みどり生命で新型コロナウイルス感染者が出た模様です。
直近のディスクロージャー資料によれば、従業員数は114名ですので、同ウイルスの感染力の強さがうかがえます。
感染された方の一日も早い回復をお祈り申し上げます。
https://midori-life.com/information/view?page=1

7.新型コロナ下での営業活動

営業職員チャネルを維持しつつ、蜜を避けるためにオンライン申込みを強化する動きが続いています。
非対面と対面を柔軟に組み合わせた、With/Afterコロナに適合する新たなスタイルの営業モデルの構築が。今後の業界スタンダートになる可能性は高いですね。
https://www.asahi-life.co.jp/company/newsrelease/20210106.pdf
https://www2.axa.co.jp/info/news/2021/pdf/210121.pdf

8.優良体と新型コロナウイルス

基礎疾患の有無で重症化リスクが変わると言われている新型コロナウイルス感染症ですが、「170センチ、70キロの男性はリスク3倍」だそうです。
この体形をBMIに換算すると、24.2(≒70÷1.7÷1.7)程度になりますが、BMIが18~27の間であれば、生命保険の優良体の基準に適合するようですので、たとえ優良隊であっても重症化リスクは決して低くない、ということでしょうか。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ffdd5921096d03fa8405271ad845d1adc84a7ea8
https://hoken-room.jp/seimei/333

9.認知症予防に関する共同研究

太陽生命の子会社である太陽生命少子高齢社会研究所と株式会社MCBIが、医療データや血液バイオマーカーを生命保険事業に活用した、業界初となる共同研究を開始する模様です。

具体的には、今後3年間で既往症とMCI(軽度認知障害)の発症リスクとの相関を推測するなどの認知症・生活習慣病の予防に関する知見を獲得し、新たな保険商品・サービス開発への活用を目指すものです。
就業不能保障と並んで認知症も今後、マーケットが拡大することが見込まれますので、各社の創意工夫でよりよい商品・サービスが提供されることを期待したいですね。
https://www.taiyo-seimei.co.jp/company/notice/download/press_article/2020/20210112.pdf

10.契約者貸付の金利引き下げ

『予定利率+1%』が主流であった、契約者貸付利率が引き下げとなり、予定利率と同水準になる模様です。
なお、『令和2年度 専門課程テキスト(61ページ)』によれば、当該利率は年2回見直すようですが、貸付を受けやすい環境下で契約が長く続くことは、保険会社だけでなく、お客様にも役立つものとなりますので、是非、契約を大切に有効活用していただきたいですね。
https://www.daido-life.co.jp/company/news/2021/pdf/210107_news.pdf

11.こころやからだの健康状態をスコアリング

SOMPOひまわり生命が、スイスのデジタルヘルスエンゲージメント企業であるdacadoo社とともに、可視化されたヘルススコアを用いて健康活動を応援するアプリを契約者・被保険者に提供開始する模様です。

歩数やトレーニングジムなど、これまで、『健康=からだ』という概念が多かったように思えますが、「こころ」や「ライフスタイル」も「健康」の範疇に含めて、自分でコントロールできる健康要素として、「瞑想」が目標の1つに含まれている点が注目されます。
まさに、心身ともに健康になることが理想的ですね。
https://www.himawari-life.co.jp/-/media/himawari/files/company/news/2020/a-01-2021-01-14.pdf?la=ja-JP

いかがでしたか。依然として、新型コロナウイルスの脅威は収まる気配をみせませんが、商品・サービスのみならず、保険営業スタイルにも様々な変化が起きているようです。特に、アクチュアリーとしては、正確なデータ捕捉に注力しながら会社の健全性に配慮しつつ、お客様にとってよりよい商品・サービスを産み出す使命感をもって、業務に臨んでいただきたいと思います。

(ペンネーム:活用算方)

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